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自分たちが大きく関わるからこそ、その使用方法について議論されやすい。
今回は、必要な輸血、不必要な輸血の使い方について述べる。
まずは、医学的に輸血が必要な状態を解説する。
一言で言えば、血液が不足しており、命に関わる可能性がある場合だ。
手術や怪我などで大量出血している時や、吐血・下血・痔などで貧血が進行している場合、がんの影響で貧血になっているケースなどが当てはまる。
血液検査で、血に関する値がこの程度まで下がっていたら、輸血を検討するというおおまかな基準はある。
あまりにも貧血が進んでいれば、血液で運ばれる酸素や栄養素が全身に送れなくなる。
そのような状態では、脳や心臓などに影響が出始めて命を落とす場合があるのだ。
ここで、不要な輸血についての意見をまとめる。
よく言われるのは、高齢者に対する輸血だ。
歳を重ねるにつれて、血液を作る能力が落ちるとともに栄養もとれなくなれば、貧血になってしまう。
ほぼ寝たきり状態の方が、貧血になりやすい。
いわゆる老衰状態だ。
このような方に対して、輸血を行わなければ死期を早めてしまう可能性もある。
純粋に医学的なことだけを考えると、輸血が必要な状態であることも多い。
この時、輸血をするかどうか本人と家族に医師は相談するが、たいていの場合は輸血を希望する。
その一方で、老衰ならば無理に輸血する必要はないという意見もある。
医療者でさえ不要だと考えている場合もあり、一般的にもそう思う人も多い。
輸血は、ボランティアから採取された限りある医療資源だ。
そのため、無駄には使えない。
しかし、無駄とはなんだろうか。
例えば老衰に輸血はいらないと意見をしている人も自分の身や大切な人に置き換え、それでも輸血は不要だと自信を持って言えるだろうか。
これは、人間の命に関わる議論であり正解はない。
しかし、答えが出なくても考えていくことが大切だ。
執筆者:あやたい
医療制度や医療職・医療現場が抱えるさまざまな問題について考える医師。
日々変わっていく医療現場から生の声や、日常に役立つ医療知識を発信したいという思いで執筆。