松村雄基、舞台「祖国への挽歌」主演「『スクール☆ウォーズ』があったから、今がある」/連載4
俳優松村雄基(61)が、26~31日に東京・日本橋の三越劇場で舞台「祖国への挽歌~日系人マフィア モンタナジョーの生涯」に主演する。実在した日系アメリカマフィア、モンタナ・ジョーを演じる。日系2世としてカリフォルニアに生まれ、第2次世界大戦中は強制収容所に入れられ、日系人の442部隊に所属してヨーロッパ戦線で活躍した。19年、23年に次ぐ2年ぶり3度目の上演に臨む、松村に聞いてみた。【取材・構成=小谷野俊哉】
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1984年10月から翌85年4月にかけて、TBS系で放送された大映ドラマ「スクール☆ウォーズ」。松村は“川浜一のワル”と言われた不良だったが、川浜高校ラグビー部に入り更生する大木大助を演じた。
「あの作品があったから今があるんだなと思ってます。やはり、大映テレビの作品。その前に『不良少女と呼ばれて』で、いとうまい子さんや伊藤かずえさんの相手をやっていて、ちょっと認識された。その後に『スクール☆ウォーズ』で、作品自体が世間から受け入れられた時に、自分の思っている以上に演じることが世間に影響を及ぼすんだと認識したんです。自分の仕事とは、役者とこういうことなのかと思ったのが『スクール☆ウォーズ』なんですね」
80年代のドラマ史を語る時には欠かせない作品だ。
「84年の放送開始でしたからね。41年もたっているのに、いまだに『見てました』っていう方がいらっしゃる。この間、ミュージカルで全国15カ所をずっと回ったんですけど、主催したのが地元のスーパーの方とハウス食品さん。そこの取締役とか経営者が、だいたい50代、60代。そうすると皆さんいつも堅い話をされていたんですけど、僕と会った瞬間に、少年のような目になって『見てたんです』って。50代、60代の方々が『スクール☆ウォーズ』の話を、ミュージカルを見た感想よりも先におっしゃって来てくれて、こんなに影響力があったんだなと。その方々にとっては青春だったんだなと」
今年11月には62歳になる。還暦を過ぎて来し方を振り返る。
「こんなはずじゃなかったなと思いました。僕の知っている60代の方というのは、しっかりしてて、どっしりと貫禄があって落ち着いている。泰然自若としているイメージがあったんです。『スクール☆ウォーズ』をやっている時に出ていた、梅宮辰夫さんは40代なんですよ、あの雰囲気で。その奥さん役の和田アキ子さんなんて、30代ですよ。みなさん、大御所でした。40代とは、こういうものなんだと思っていました。そこから見たら中条静男さんとか名古屋章さん、50代で60歳になろうという方は、もう本当に大御所じゃないですか。もう押しも押されもしないと思っていたのが、自分がなってみたらフラフラで、押しも押されもする。こんなんでいいのかな、というおぼつかなさにびっくりしています」
梅宮は川浜高校前の中華「新楽」のマスター役。ラグビー部員たちを励まし、支えていた。
「梅宮さんは40代ですよ。時代が違うって言ったら、それまでなんですけどね。まあ、それはそれはチャーミングでね、ロケの時もいつもツヤツヤしてらしゃいました。和田さんも、もう本当におおらかで、30代半ばでしたからね。だから、あの時から思うとですね、自分なんかまだまだなんだなぁ、まだ差は縮まらないんだなと。自分もその歳になったら、もうちょっとしっかりしてると思ってたんですけど、全然してませんでした。まだ、子供だなと思います」
自分の来し方、そして先人たちの奇跡をたどって思いを巡らせている。
「あの時の人たちは、今の僕より若かったわけですね。ベテラン感が、すごかったですね。だけど本当に、そのベテラン感が自分に全くないですもん。経験値が違うんですね、戦争を経験している方と僕らでは。あの世代っていうのは戦争を経験している方々ですからね。食えない時代に生きてきたんで、なんだって、大した苦労じゃないでしょうね」
(続く)
◆松村雄基(まつむら・ゆうき)1963年(昭38)11月17日、東京都生まれ。80年テレビ朝日「生徒諸君!」で俳優デビュー。84~85年TBS「スクール☆ウォーズ」。88年映画「恋子の毎日」。94年(平6)NHK連続テレビ小説「ぴあの」。99年舞台「ミュージカル 南太平洋」。18年映画「聖域 組長の最も長い一日」主演。178センチ。B型。