元ニッポン放送アナウンサー栗村智さん

ニッポン放送でプロ野球、競馬などの実況中継を担当し、多くの人に親しまれたアナウンサーの栗村智さんが8月2日に亡くなりました。71歳でした。栗村さんの現役アナ時代には面識がありませでしたが、2年半前に非常勤で通い始めた日本芸術文化振興会で隣の席になりました。柔らかな語り口、どんな人の心もとろかせる笑顔で、短い期間でしたが、本当に楽しい時間をすごすことができました。

栗村さんは高校2年の時、本気で落語家になりたいと思い、アルバイトでお金を貯めて広島から上京。末広亭の楽屋で5代目柳家小さんに弟子入りを直訴したそうです。その時は小さんに「あんちゃん、ちゃんと学校だけは行きな」と諭され、落語家はあきらめたものの、進学した中央大学では落語研究会に所属。「あたり屋大穴」の高座名を名乗って、都内の大学の落研仲間の間では有名人だったそうです。

10日午前に行われた葬儀に参列しましたが、栗村さんの半生をしのぶコーナーに、小さんが高校1年だった栗村さん宛てに書いた手紙は公開されていました。高校で落研を起こすにあたってのアドバイスを求めたところ、小さんは律儀にも、落語の基本などをこと細かく説明し、高座名も「甘栗亭金とん」がいいでしょう、などと達筆な字で書かれていました。こんな手紙を地方の高校生がもらったら、舞い上がって、落語愛が高まるのも無理はないでしょう。

落語家にはならず、アナウンサーになった栗村さんですが、その親しみのある語り口は、落語が原点だったのでしょう。栗村さんは7年前から「栗好みの会」と題する落語会をプロデュースし、6月30日に開催された「柳亭市馬・柳家喬太郎二人会」が最後の公演になりました。数えて、40回目。落語を愛し、そして多くの落語家から愛された人でした。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)

情報提供元: 日刊スポーツ_芸能
記事名:「 元ニッポン放送アナ栗村智さん、柔らかで親しみある語り口の原点は高2で志望した落語