映画「野火」4K初上映後トークイベントにリモートで参加した塚本晋也監督(撮影・村上幸将)

塚本晋也監督(65)が9日、東京・角川シネマ有楽町で終戦80年企画として上映された、1959年(昭34)の映画「野火」(市川崑監督)4K初上映後トークイベントにリモートで参加した。当初は登壇予定だったが、腰痛で「腰が全く立たなくなった」と説明した。

「野火」は作家・大岡昇平が51年に発表した戦争文学を映画化した作品で、第2次大戦のフィリピン戦線を舞台に日本軍の死闘を描いた。塚本監督も、高校生の時に鑑賞し「市川崑監督の、白と黒の独特のライティングに影響を受けた。8ミリで映画を撮っていて、ライティングも知らなかったんですけど、モノマネと言って良いほどの映画を作った出会い」と影響を受けた。

その後、原作も読み、映画化を熱望。15年には父の遺産もつぎ込んで、自主製作映画として製作し、自ら主演。劇中には、戦場の最前線で究極の状況に追い込まれた兵士が、人肉を食べるくだりが出てくる。市川版では描かれなかったが、塚本監督は、自作ではその部分の表現にも踏み込んで描いた。

そのことについて「戦う以前におなかがすいて亡くなった人が、圧倒的に多い愚かしさ」と当時の状況を説明。その上で「実際に証言してくださる人に聞いても、自分が食べたんだとは言いたくないし、聞かなくても良い。でも、いろいろ調べ、状況を聞いていると食べる方が普通。動物として当たり前のこと」と取材して得た実感を語った。

その上で「食べることは、動物の世界では当たり前。そんな自然のこと、状態になった。人間は、そういう世界じゃないものを作ってきたのに、作ってしまった。絶対に良くないこと」と訴えていた。

情報提供元: 日刊スポーツ_芸能
記事名:「 塚本晋也監督、市川崑監督版「野火」トークで〝禁断のシーン〟取材して踏み込んだと明かす