「映画版クレヨンしんちゃん」新作に漂うホンモノのインドテイスト
カスカベ(埼玉県春日部)を舞台にドメスティックな匂いの強い「クレヨンしんちゃん」で、メキシコ(第23作)オーストラリア(第27作)と海外ものを得意としてきた橋本昌和監督が今回はインドを選んだ。
「映画版クレヨンしんちゃん 超華麗! 灼熱のカスカベダンサーズ」(8月8日公開)である。インド映画テイストの歌と踊りで魅せながら、笑いと涙にさりげなく教訓を盛り込んだいつものスタイルは、大人が見ても十分に楽しめる。
地元キッズフェスのダンス大会で優勝したしんのすけたちは、姉妹都市「ハガシミール州ムシバイ」のフェスに招かれる。市内観光中に骨董(こっとう)店で見つけたあるモノが仲間のボーちゃんに取り憑き、彼は脅威のパワーを持つ「暴君」に変身してしまう。
インドの美人インフルエンサーや大富豪、「怪奇事件特捜部」の刑事らが絡む中、しんのすけたちはボーちゃんの呪いを解くことができるのか…。
インド映画をほうふつとさせるモブシーンのキレのいいダンスに止まらず、骨董店のほこり臭い薄暗がり、その中に陳列された厳かな品々、フィーチャーされるチャパティ…10年ほど前に1度だけ行ったインド旅行で目にしたさまざまな光景を思い出す。確かに主食はナンよりチャパティの方がメジャーだった。スタッフの入念なロケハンの跡がうかがえる。
そして、いつもボーッとしているボーちゃんが胸に秘めた思いや、いい子ぶったインフルエンサーの真意に、親しい仲だからこその配慮や本当の優しさを考えさせられる。
ゲスト声優では、賀来賢人が敵役となる大富豪の薄っぺらい感じをうまく出している、そして、バイきんぐの2人が文字通りの笑いのアクセントになっている。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)