声優・三ツ矢雄二(62)が19日、東京・スペースFS汐留で『アマデウス 日本語吹替音声追加収録版ブルーレイ発売記念 特別試写会』に登場した。
1984年にアメリカで、翌85年に日本で公開された、大作曲家のヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの謎の多い生涯を宮廷音楽家アントニオ・サリエリとの対決を通して描き切った作品。その時代背景や、モーツァルトの栄光と凋落、サリエリの苦悩などが描かれ84年度のアカデミー賞では作品・監督・主演男優賞など8部門で賞に輝いた傑作として知られている。本作の吹き替えでモーツァルト(トム・ハルス)を三ツ矢が声を当てているが、今回、ディレクターズカットを収録したBlu-rayを発売するに当たり、三ツ矢らが追加で収録するという貴重な作品となっている。
約30年という時を経て新たにリリースされることへ、三ツ矢は「きのう誕生日で62歳になったんです。62歳になって、1つすごく悔しく思っていたことがあるんですよ。このアマデウスって僕の若いときの代表作だと思っているんですけど、日本語吹き替え版が自分の声でリリースされていないということに非常に不満があって、それだけが心残りだったんです。それが、何ヶ月か前に日本語吹き替え版が出ると言われて、カットされた部分が追加されて、62歳になった私がやらせて頂けると聞いて、それが一番の喜びだったんです」と、悔恨の念があったそう。
その念願がかなって、「これで本当に心残りはないなって(笑)。それくらい嬉しかったですし、この日本語吹き替え版が出るのを日本で一番待ち望んでいたのは僕かもしれません」と、茶目っけたっぷりにコメントを寄せた。
当時、日本語吹き替え版の演出を務めた佐藤敏夫氏も会場に姿を見せるなか、本作の30年前のアフレコに佐藤氏が持参したという台本が公開。それを見て三ツ矢は「すごい細かい書き込みで、僕を演出するのにすごく苦労されたんだろうなって。アマデウスをやるといったときに、作品を観ていたので、有名人を使ってやるのかなって思っていたら佐藤さんから声がかかって。でも、この書き込みを見て佐藤さんの苦労をしのんで、さっき涙が出ました」と、しみじみ。
そのときのオーディションでは、モーツァルトがたびたび発するさまざまな感情がこもった笑い声が審査対象にもなったそうで、「マンションに1階に住んでいたんですけど、笑い声を練習して。いまでも笑えるんですよ」と、三ツ矢は実際に3種類のどれも違った笑い声を実演し、観客たちをうならせた。
本作には日下武史、納谷悟朗、納谷六朗、羽佐間道夫らそうそうたるキャスト陣が声を当てており、「台本を見たら、いまや声優界のレジェンドと呼ばれている方がずら~っと並んでいて、僕なんかひよっこで、いまでも覚えているのが最初の一声が緊張のあまり出なかったんですよ。『おまえどういう芝居をするんだ?』と見られてるような感じで」と、相当なプレッシャーを感じていたそうだ。
30年ぶりのモーツァルトを演じてみて、「声が30年老けてるよと言われたら嫌だなと思っていたら、演出は割とスムーズにいって、30年の間に俺、成長してる?って思って、そんな喜びもあって(笑)。今度はエンジョイして演じることができたので、どれが追加で録った声かなというのを気にしながら観るのもいいかも」と、見どころも。
話は尽きず作品へ、「天才であるということがどういうことかというのがまず自分の中にあって、天才であるということと傍若無人であるということと、自信があるということと、へりくだるということと、いろんなものがモーツァルトの中にあるんです。その心情になるにはどうしたらいいかと思った時に、画面の中で演じているのが自分だという気持ちになって、何度も何度も作品の中に入っている自分だというのが自分なんだって。その中の流れをつかむのが大変でしたし、前半より後半の病んでいくのが大変で、へりくだり、自分をちょっと卑下してみたりするシーンは本当に難しいし、声の出し方1つでも難しいし、トム・ハルスもその辺を微妙に演じているので、その微妙さみたいなものを出すのが大変でした」と、振り返ってもいた。
「何度観ても面白い作品で、いろいろ見方を変えると違った魅力があります。僕はこれを観てオペラを垣間見ました。何度も観て発見するところの多い作品ですが、尺が長いのでそうしょっちゅう観れないと思います(苦笑)。英語版でご覧になった方も、吹き替え版の方が情報量が多く与えられているので、ぜひ日本語版で聴いて頂けると演じた側は嬉しいです」と、呼びかけていた。
『【初回限定生産】アマデウス 日本語吹替音声追加収録版 ブルーレイ』(ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント)は19日より発売中!