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今まで吉川英治の小説『宮本武蔵』やそれを映画化した内田吐夢監督の「宮本武蔵」5部作、市川海老蔵(当時は)のNHK大河ドラマ「宮本武蔵」、さらには漫画『バガボンド』など様々なメディアで語り倒されて来た宮本武蔵伝説。
そんな中、本作では冒頭から「史実に基づいたオリジナルストーリーである」というテロップ。"史実"と"オリジナルストーリー"という単語に違和感。本作を観賞してみて、そのテロップに納得。
テンポの早い津軽三味線で景気良くスタート。ジャブ程度に父からの殺人教育を受ける子供時代を描き、オープニング後は青年期へ。
怒濤の展開で、京都の名門=吉岡流へ道場破り。吉岡兄弟&吉岡一門との決闘。この経緯がとにかく細かい。
弟の伝七郎、兄の吉岡清十郎をどのように倒し、どんな経緯で吉岡の門弟たち数十名と一乗寺下がり松で壮絶な戦いに発展したのか。登場人物たちの会話から、吉岡一門の政治的判断。時間経過と共に各ポジションの同時進行。「プロジェクトX」ばりの事件の裏話感。
刀を交える殺陣のシーンも小賢しいカット割りはナシ!!引き画で“どのように刀を抜き、どのように切ったか”が一発でバッチシ解るような演出なんです。毎回、剣術を変え、特徴的なライバルたちに挑んでいくんですが、“なぜ、その剣術をチョイスしたのか?”という事もセリフでさり気なく補足。
その後、佐々木小次郎のエピソードも本筋にオプション追加。小次郎が細川家の剣術指南役へ就くまでも細かく描き、その間に武蔵は“鎖鎌の宍戸”や“槍の道栄”と戦う羽目に。本作は、まさにアカデミックな検証版「宮本武蔵」伝説だったんです!!しつこいようですが、ここまでボリューミーな内容で2時間ですからね!!
かと言って、劇映画的に楽しめないかと言うと、決してそんな事はありません。
やはり、武蔵を中心に各方面の方々を描いているので、ドラマ要素も濃厚。特に数々の過去作品では薄味だった女性たちのドラマも濃いめ。男たちが闘いに目の色を変えている中、どんな想いがあったのかも本作の注目所。
また、最初は殺気ムンムンの殺人マシーンだった武蔵。雄叫びを上げながら、二刀流で吉岡一門を斬り殺していくシーンは圧倒的な迫力。と同時に、人を殺す事に戸惑ったり、テンパったりする描写もリアル仕様。セピアギリ手前の淡い色合いの色彩処理も雰囲気たっぷり。あとリアルと言えば、室内での会話シーンで、よく見ると白い息が出てるんですよ。当たり前ですけど、暖房もない時代。室内と言えど白い息が出る訳ですよ。またセットでなくロケ撮影だからこそのリアリティとも言えます。実は一瞬しか映らない小道具や美術にも実際の物を多様。本物志向を貫いた一本でもあるんです。
映画『武蔵 ―むさし―』は5月25日公開です。
(C)2019 三上康雄事務所
監督:三上康雄
脚本:三上康雄
製作:三上康雄
撮影:江部公美
照明:山口晴弘
配給 アークエンタテインメント
上映時間 120分
細田善彦:新免武蔵
松平健:佐々木小次郎
目黒祐樹:沢村大学
水野真紀:ユキ
若林豪太:木慧道