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夏、多感なティーンズたちが最も青い経験を迎える時期だ。そんな季節を迎える前に、ちょっと知って欲しい情報がある、それが【キス病】と呼ばれる病気だ。
正式には伝染性単核球症(でんせんせいたんかくきゅうしょう)という急性感染症のひとつ。一ヶ月ほどの潜伏期間があって、発熱、喉の痛み、リンパ節の腫れが出る。38℃以上の高熱が1~2週間続くこともあり、脾臓や肝臓が腫れて重傷になることもあるという。
調べてみると、そもそも日本人は人種的にかからない病気だったそうだが、近年になって発症が認められるようになり、今は毎年増加傾向にあるとのこと。これには原因があると報告されているので、今回はそのポイントを紹介したい。
医学の専門用語など難しい単語を使って説明しても理解しにくいと思うので、誰にでもわかるようにざっくりと砕いて解説する。ものすごく詳しく知りたい人は「キス病」で検索するとヒットするので調べて欲しい。
キス病は人の唾液を介して感染する。例えば、食べ物の口移し、飲み物の回し飲み、などでも感染してしまう場合はある。とりわけ、アメリカで20代の若者によるディープキスでの感染が多いため「キス病」という別名が付いたものと考えられる。
キス病は、人の唾液にあるEVB(エプシュタイン・バーム・ウイルス)というウイルスに初感染すると発症する病気。口移しで感染と聞いて「赤ちゃんは大丈夫?」と誰もが思うだろうが、10歳くらいまでの幼少期に多くの人が感染するのだ。
でもその時期は感染しても重い病気の症状は出にくく、これで免疫ができる。だから80%くらいの人はキス病にかかりにくいそうだ。裏を返せば、幼少期にEVBの免疫ができなかった人がキス病になってしまうのである。
ある学者の研究では、お母さんから直箸・直スプーンなどによる食べさせ、つまり間接キスが極端に減ったからではないか? としている。例えば、昔はお母さんが哺乳瓶にミルクを入れて、自分で吸って温度を確かめてからそのままあげたりした。魚を食べさせる際は、自分の口で骨を取って子供に身を食べさせてあげたりした。これで母親との唾液感染をすることになる。
それが近頃は、手間がかからない市販品の離乳食品も多く、お母さんがわざわざ直箸で食べさせることも減った。また、唾液は汚いという概念が強いことも影響しているという。親と子が間接キスするケースが少なくなったわけだ。
また、20年ほど前に、「幼少期に、親が子供と間接キスしなければ虫歯菌が入らないので一生虫歯にならない」という情報が話題になり、これをきっかけに赤ちゃんにキスしたり、直箸などで食べさせる行為を徹底的に禁じる親が増えた。
このような傾向からEVAの免疫のない子が減り、多感な10~20代に初めてキスを経験し、キス病を発症させてしまう者が増えたのだろうと考えられているそうだ。また、キスだけでなく、ペットボトル飲料の飲み回しによる感染例も増えているとのこと。感染ケースは多岐に及ぶ。
中学生くらいになって、自分は今まで生きてきて一本も虫歯になったことがないという子がいたら、もしかしたらEVAの免疫を持っていないかもしれない。親に意図的に間接キスをしなかったか聞いてみてほしい。
ただ、すごく歯磨きが上手だから虫歯がないだけかもしれないし、親からじゃなくても、人と話していて飛んだ唾が口に入っただけでも、EVAの免疫ができている可能性もある。
心当たりがある人は、もしかしたらキスを経験した後、一ヶ月後くらいに急な発熱などがあるかもしれない、そしたらそれはキス病の可能性があるってことを覚えておくと良いと思う。もしも体に不調が出て疑わしいと感じたなら病院へ行き、医師にキス病の件を話すと良い、というのも単なる風邪と誤診されるケースが多いそうなのだ。高熱が続き、脾臓が破裂するかもしれない恐ろしい病気だから、気にとめておいて損はない。
アメリカでは年間で人口10万人あたり50人のキス病患者が出ている。日本は発症に関して届け出義務がないので正確な患者発生数は把握できていないが、確実に増加していることは間違いないそうだ。