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先日のStreet League Skateboarding(以下SLS)2連覇により、今や世界中のスケートボーダーが知る存在になった堀米雄斗(19)。今まさに過渡期にある日本のスケートシーンの象徴的な存在となった堀米雄斗がアメリカで活躍する影にはどんな物語があったのか?
その影に光を当てるべく、彼を身近で見てきた人物の一人、HIBRID Skateboards(堀米雄斗は現在のBlind Skateboardsに所属する前はHIBRID Skateboardsに所属していた)の早川大輔さんに映像では見ることの出来ない堀米雄斗と日本のシーンの移り変わりについてインタビューを行った。
彼がいかにしてストリートリーグ優勝の階段を登って行ったのか、その根源に迫る。
※SLS L.A大会にて堀米雄斗が2連覇を果たした際の写真
_彼がHIBRIDのライダーだった頃、ここまでのスケーターになると予想してましたか?
「してました(即答)。というか“なる”って思ってたからそこは全然ブレてないし、予想外ではない。最初にHIBRIDのライダーにするっていう話しをユウトとユウトの父ちゃんとした時に、アメリカ行きたい、アメリカでプロになりたい。じゃあアメリカでプロになって向こうで本当にプール付きパーク付きの家買って向こうで住んでやろうなって言ってHIBRIDに入れたから。
本当にそうしてやろうと思ったし、そうなって欲しいからその為だけの事しかやってきてないです。だからもっと先があってまだ全然途中なんですよ。やっとスタートラインに立ったってところ」
「あと、これは完全に俺個人が思ってる事で日本のシーンをディスってる訳じゃないっていう前提で聞いて欲しいんだけど、日本のスケートシーンには少し前に5年くらいのアンダーグラウンドな期間があって、俺らが代々受け継いできたような日本のシーンの流れなんかはそこで一度方向が変わってる。
例えばAJSAがプロ資格を無くしたりとか、代理店やブランドが減ったりとかそういう時代があって…。インターネット時代に移り変わった時に、下地が無いところから出てきたのがユウト達の世代だから。ユウト達は次世代じゃなくて“新世代”なんですよ。
俺は自分が経験した嫌な事は押し付けたくなかったから一切やってない。日本のシーンで受け継がれてきた事で、良いことは教えてあげるけど、余分なことは本当に教えない方が良いと思ったから、見せないように関わらないようにしてた。
スポンサー選びもそうだし、コンテストに対してもそうだし。だから“日本にいる必要は全くない、1日も早くアメリカに行け”っていう感じでずっとやってきました。
日本で俺が教えれられるのは一緒にスポット連れて行って、ビデオ撮るっていう緊張感とか、撮影に対してのアプローチやモチベーションの保ち方だったり、今後プロになっても続くであろう下地の部分と、スケーターを食い物にするズルい奴らに騙されるなっていう事。それは準備運動としてやってあげたいなと思ってた」
※早川さんらと共に堀米雄斗も設営に携わり、通っていた8times corner storeのミニランプ
_“こいつはビッグになる”と思ったエピソードはありますか?
「もう撮影してる時は毎回思ったね。新世代特有の“パークでしこたま練習して120パーセントできる状態でスポット行く”から着いて5分で“はい終了”ばっかりだった。
今まで俺らがやってきたスポットの潰し方と言えば、行ってやられてリベンジしにもう一回行ってとか、本当に2回3回、ヘタしたら1か月くらいかかって1カット撮ってたけど、あいつらはスポット着いて“あ、行けます”って行ったら本当にそれで終わりだから。
“あぁもう全然違うわ”って思った。撮影をこなしながらコンテストでも成績残していくから、頼もしいよね」
_堀米雄斗が他とは違っていたところは
「ちゃんと“持ってた”ところ。撮影に行くと、周りの状況だけ判断してあげるとか集中できる環境に持っていったりとか、そういう事くらいしか俺はやることがなくて、板に乗り出したらユウトのリズムですぐ終わっちゃう。
そこは今いる若い子たちの中でも別格にすごいところかもしれないな。スポット行く前から“今日こういうの撮ろう”とメイクするシーンが出来てて、その通り動いてるだけな感じ。スケーターとしてめちゃくちゃ頭いいから、やっぱりそれもセンスかな」
_早川さんから見た堀米雄斗はどんな人間ですか
「超努力家の負けず嫌いで…賢いよね。天才というのがなんなのか俺はわからないけど、普通の人から見たらあぁいうのが天才なんだろうね。ちょっと違うかもしれないけど、イチローとか中田英寿とか、スポーツの世界で別格に扱われるような雰囲気を感じるなぁと思う」
—早川さんが堀米雄斗から教わったことはありますか?
「ユウトと接するようになってから考え方がすごく変わったと思う。それが自分のスケートボードにも活かされているし、自分のスケート人生でいろいろ起きてきた事が全部良い方向に活かされる様になったし、活かす事が出来る様になれた。
それまでは断片的なものだったのが、ズバって一本筋が通って、何かの為にグッと動けるパワーになる。ユウトの為の行動が結局は自分の為にもなっている。それと…ユウトに教わった事でもっと深い事はいっぱいあるんだけど…言葉に出来ないな。難しいな〜!(笑)」
_彼は家族みたいな存在ですか?
「そうだと思う。あいつは思ってないけどね(笑)でもそういう感覚だと思う」
スケートボードに対して忠実に動いてきたという事実が早川大輔という人間を堀米雄斗という人間に引き合わせ、堀米雄斗は世界で活躍し、早川大輔は日本のスケート界でなくてはならない存在となった。
大げさかもしれないが堀米雄斗は早川さんを含め、彼の周りにいる人間のスケートボードに対する愛が生んだ結晶なのかもしれないと思った。早川大輔のような人間がいる限り、こういった結晶たちが日本からどんどん生まれてきてくれるだろう。
※SLSでの写真は早川大輔氏からの提供
写真・文 小嶋 勝美
スケートボードを趣味としており、ライターとしてスケートボード関連の記事を執筆。
約10年間芸人として活動後、現在は放送作家としても活動中。