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ヴェネツィア、ベルリン、カンヌ、アカデミー賞と世界各国で賞荒しをしてきた巨匠ロマン・ポランスキー。デビューから55年。85歳にしてメガホンを取った作品が現在公開中の『告白小説、その結末』。
『反撥』や『ローズマリーの赤ちゃん』などの情緒不安定で不安を煽りまくってきた初期作品への原点回帰的な一級のサスペンス仕様。全てのカットから巨匠の本気度が伝わってきます。
主人公の作家は、心の病いで自殺した母親の話を私小説として発表。ベストセラーに。ただ、自分の人生を切り売りした執筆スタイルに、心は満身創痍で、絶賛スランプ中。
そんな主人公を演じるのは、ポランスキーの奥さんでもある名女優のエマニュエル・セニエ。相手を惑わす役の多い彼女は今回、逆の立場へ回り、新鮮。
開始早々、主人公の前に「エル」と名乗る謎の女が登場。フランス語で"Elle"とは、"彼女"の三人称代名詞の意味なんです。ネーミングだけでなく、見た目もバッチリ怪しいエル。『シン・シティ 復讐の女神』で殺戮女帝を演じたエヴァ・グリーンが演じてますから、安定の不信感です。
エルは登場するなり、急速にマネージャーの如き働きを発揮。部屋の掃除からメール整理、挙げ句、執筆の代筆まで。この距離の詰め方が単純に怖いです。
本作の本題はここから。主人公の家にエルが転がり込んで来てから数々の怪事件が発生。いよいよ感が濃厚になり、サスペンスフルな展開に。主人公を避難する差出人不明の脅迫状
Facebookの成りすましアカウントによる炎上事件。ただでさえ情緒不安定気味だった主人公をどんどん追い詰めていきます。
そこら辺の展開をエルが犯人なのか、本気で主人公を心配しているのか……。意味ありげなカットを積み重ねミスリード。巨匠熟練の手練手管が冴えわたります。
「空想の友達と遊んでいた孤独な子供時代」や「元旦那との破天荒すぎる出会いと別れ」など、ポロっと洩らしたパンチの効いてるエルの半生。次回作のモデルをエルにするアイディアを思いついた主人公。執筆活動の為と、田舎の別荘に誘い込むのですが、そこからスリリングな心理戦に発展。予測不能のクライマックスは、解釈が分かれるであろうラストへ一直線。女優2人のどこまで知ってて、どこまでが妄想なのか解らない駆け引き演技から目が離せなくなっていきます。
いやぁ〜な雰囲気のサスペンスを味わいたい方にはオススメの一本です。
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