町をぶらぶらするのが楽しい世代になってくると「出かける前の知っておけばよかった」と思うことがよくあります。そんな「大人の町のお約束」を東京の町から拾い集めて行きましょう。第一回目は【原宿のお約束】

50年前から若者の町と言われる原宿ですが、大人の視点で「原宿」のお約束といえば…“散歩”です。原宿は曲がりくねった道や細り路地が張り巡らされた迷路のようなエリア。

近くに年末のアメ横のように混雑する竹下通りがあるとは思えないほど、静かな散策を楽しめます。そのルーツが「穏田」という地名。

穏田は「服部半蔵の一族」が甲賀忍者の攻撃から逃れるために住んでいた「隠れの里」。それが「隠田(かくしだ)」に転じて「穏田(おんでん)」と呼ばれるになったそうです。そんな歴史をイメージして歩けば「なるほど!忍者の隠れ里だから散歩が楽しいのか!」と妙に納得できるはず。

そんな原宿のもう一つのお約束といえば…「浮世絵」。

葛飾北斎が『富嶽三十六景 穏田の水車』で原宿を描いたご縁かなのか?原宿には浮世絵専門の太田美術館があります。現在、【特別展「江戸の悪 PARTⅡ(6月2日~7月29日)」】を開催中!

さっそく入館。受付を済ませて順路を進むと…いきなり有名な浮世絵がズラリと並び壮観です。江戸の悪党が勢ぞろいした浮世絵の中に「雲霧仁左衛門」の名を発見。池波正太郎の小説の主人公でもある大物盗賊ですが、どれが仁左衛門なのかわからないので学芸員さんに質問。

すると「おそらくこの青い着物を着た男だと思われます」と教えてくれました。浮世絵の知識は専門家の方にお任せするといて、ここで!鑑賞に役立つお約束を3つほど。(1)ペースを乱す人は先に行かせる。(2)説明書きは先に読まない。(3)学芸員さんに臆せず質問する。

(1)→後ろから「早く先に進めよ」という空気を醸し出す人がけっこういますが、そんな時はスッと後方に回り、ストレスなく鑑賞するのが一番です。(2)→説明を先に読むと、書いてあった内容を絵で確認したくなりますが、先に絵を観て気になった事があれば説明書きで確認する方が純粋に楽しめます。(3)→学芸員さんは知識の宝庫。もし即答できなくても調べたことを教えてくれるので、臆せず聞いてみましょう。

ちなみに【特別展「江戸の悪 PARTⅡ】では期間中チケットの半券を提示すると2回目は200円引きになるそうです。

最後のお約束は…「喫茶店」

細い小路を抜け、暗渠になった川の上を歩き、味わい深い喫茶店へたどり着く。

これも原宿ならではの楽しみ方。界隈には数十年続く喫茶店が数多く点在しています。この日、立ち寄ったのは…小路の脇に佇む1979年創業の「Voleur de Fleur 花泥棒」。

レトロな店内は浮世絵鑑賞の余韻を楽しむのにもってこいの空間です。

ちなみに…入口にはナゼか亀がいます。亀と言えば、歌川広重の「名所江戸百景 深川萬年橋」の富士と吊るし亀。

亀が見つめる橋の対岸は現在の首都高速の箱崎ジャンクションあたりだそうです。これも何かのご縁、次は中央区日本橋箱崎町で大人の町のお約束を探しましょうか…。

 

【太田美術館】

東京都渋谷区神宮前1-10-10

TEL:03-3403-0880

【Voleur de Fleur 花泥棒】

東京都渋谷区神宮前1-10-23

TEL:03-3404-6949

 

東京ウォーカー 2018年7月号 (2018年06月20日発売)
Fujisan.co.jpより

 

情報提供元: マガジンサミット
記事名:「 【今さら聞けない大人の町のお約束】 ~原宿・忍者の町で浮世絵を~