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2017年、プロ野球で名球会入りした選手は4人。荒木雅博(中日)、阿部慎之助(巨人)、鳥谷敬(阪神)、青木宣親(メッツなど)。いずれも野手として2000安打を達成した。これで打者48人、投手16人、会員は合計64人になった。ちなみに、名球会に入るかどうかは任意なので、落合博満(日本ハムなど)など、辞退している人もいる。
御存知の通り、プロ野球名球会は、野手は2000安打以上、投手は200勝以上、または250セーブ以上を記録した選手が入会できる野球界の名誉だ。
そんな中、よく聞くのが「打者とくらべて投手が少ない」ということ。
打者は、1試合で通常4打席は回ってくる。例えばシーズン130安打を15年連続すれば2000安打に達する計算だ。ずいぶん昔はシーズン130試合だったが、今年は143試合と増えたことで打席数も大きく増える。野手は、試合に勝っても負けてもヒット数は増えていくわけだ。
一方、投手はチームが勝たなければ数字が増えない。故に1勝も1セーブも積み重ねるのが難しい。しかも昔と今では野球が変わった。昭和40年代までは“昨日先発、今日抑え”といった具合に、日を空けず、投げる場所も決めずに登板していた。だから毎年20勝投手はザラにいて、30勝投手も時々出た。稲尾和久(西鉄)が‘61年に記録したシーズン最多勝利記録は42勝だ。
しかし、登板過多で故障する投手も多く問題になってきた。昭和50年代になると、先発、中継ぎ、抑えといった具合に、投手は分業性が主流に変化して行き20勝投手は一気に減少した。
今年10勝以上した日本人投手は日米合わせ19人いるが、現役投手の勝利数上位は…
岩隈久志(マリナーズ) 170勝 (昭和56年生 36才)
松坂大輔(ソフトバンク)164勝 (昭和55年生 37才)
石川雅規(ヤクルト)156勝 (昭和55年生 37才)
田中将大(ヤンキース)151勝 (昭和63年生 28才)
ダルビッシュ有(ドジャース)149勝(昭和61年 31才)
30代後半の3人は200勝を挙げるのは容易ではないと思う。そう考えると、驚異的な早さの田中将大、ダルビッシュ有は順調に2桁以上の星をあげると4、5年後には200勝到達になる。しかし、ひとたび故障で手術となると少なくとも1年は投げられない。大概の投手は、何年かに一度は大きなケガをして長期離脱する。
そんな中、ネット上で「投手180勝にしてはどうか?」という意見が、ずい分前から沢山見られる。名球会の方々も耳にしていると思うし、入会資格のラインも見直す声は出ているはず。現に、250セーブ以上という資格は2003年に加えられたものだ。
ただ、現代に合わせて、資格を投手180勝以上に変更すると、往年のプレイヤー10名が名球会入りになる。すでに亡くなった方もいるし、昔と今の野球の違いで記録した成績なんだから見直すのも違う気がする。
そこでふと思ったのが、名球会はそもそも「昭和名球会」という名称だったこと。現在は「日本プロ野球名球会」となっており、平成生まれでも入会できるようになっている。しかし、平成生まれだと特に投手は200勝のハードルが高くなる。今やホールドというタイトルもあるくらい分業が更に細かく、重要なポストにもなっている。勝利投手になれなくても、セーブが付かなくても、勝利の貢献度が高い投手は沢山いる。
ちなみに、平成生まれの投手で最多勝利数順位は
唐川侑己(ロッテ)65勝
菅野智之(巨人)61勝
野村祐輔(広島)58勝
仮にシーズン12勝を続けたとして、今後11年以上かかる。年齢は38、39才だ。今や2ケタ勝利を5年続けるのも難しいので、なかなか簡単な数字ではないのがわかる。というよりも、中継ぎを任される選手はハナから名球会など眼中にないだろう。
また、野手で最多安打は中田翔(日本ハム)968本。早ければあと8年前後で2000安打に到達する。
どこかで何か変えなければ資格が現代野球にそぐわない。そこで気の早い話だが、平成生まれの選手で区切りをつけ、「平成名球会」を新設し、違う入会資格を設けてはどうだろうか?
資格は
◯平成生まれ(1989年~)であること
◯野手2000安打
◯投手180勝、または300セーブ、300ホールド
更に、例えば、
◯40歳以上で現役を続けている(過去10年一試合は一軍出場している事、とか条件付き)
という年齢の資格など、特例の名球会資格も加えたらどうかと思う。数字の縛りだけじゃなくレアケースも考えるのだ。じゃないと、どうしても投手が厳しいから。
新案を出しておきながら、実は、平成生まれから名球会はなくしても良いのでは? とさえ思う。名球会に入ると何か利点あるのか? というと特に賞金が出るわけでもないので「名誉」が大きな恩恵といえる。
これは推測だが、名球会を創設したのは、“凄い記録を達成したことを世間に知ってもらうため”という意味もあったと思う。発足した1978年(昭和53年)当時、2000安打も200勝もどれだけ凄い数字か理解している野球ファンは少なかったはず。でも今は、その認知度は高いし、しかも選手も知らないような記録までマスコミが出してくる時代になった。
現在の名球会も良し悪しの声がある
成績不振、ケガ、年齢からくる衰え、などにもめげず“名球会の数字をクリアするまで現役を続けよう”というモチベーションにつながる。ノンタイトルで地味な職人タイプにようやく与えられる名誉、とか、利点はもちろん大きい。
ただ、裏を返せば名球会の数字が足かせになっている場合も否定できない。力は衰え、故障もだましだましで続けつつ、あと数勝、あと数十本のヒットを打つために頑張る。それはわかるが、逆に若手の芽を摘んでいるとも限らない。シビアな世界とはいえ首脳陣も気も使う。そんな選手は、あがかず引退して次の生き方を早く見つけるのも大切・・・という声もある(厳しい)。
また、名球会入りできたら偉くて、できないと下に見られる線引き感もある。記録に残る選手、記憶に残る選手、という言葉が使われたりするが、おそらく二刀流の大谷翔平は名球会の数字をクリアするのはかなり難しいだろう。そして、今やメジャー志向が高く、毎年のように米国に渡る選手がいる。日米通算という記録を見るが、レベルが違うので並列にして良いものか、とも思う。
ここまで、決して名球会に文句をつけているわけではない。貯金のように積み立てた記録を讃え迎え入れてくれる嬉しい団体は、他のスポーツにはなかなか存在しない、メジャーリーグにもない(殿堂とは違う)。ただ、今はまだ良いとしても、記録に対する、様々な受け取り方、考え方から、名球会を不条理に思う声が上がってくるのではなかろうか、となると存在意義が問われそうなので、やがて内容を考え直す時期がくる… ということを案じたのである。余計な詮索と言われればそれまでだが。
なんだか、名球会ありきのプロ野球という話になった感があるけれど、本来は逆。「平成名球会を新設するか撤廃するか」あまりにも先走った内容だったけど、数年後、話題に出るかもしれないので・・・