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「電車のつり革に触りたくない……」「裸足でカーペットに上がってほしくない……」
ちょっとした潔癖症やキレイ好きの人であれば“あるあるネタ”として笑い話にできるかもしれませんが、より深刻な症状の「強迫性障害」になってしまうと、日々の生活にも悪影響が出るなど、厄介な事態になってしまいます。
「強迫性障害(OCD:Obsessive Compulsive Disorder)」とは、「強い不安や恐怖に駆り立てられ、ある種の考えや行動がやめられなくなる精神疾患」のこと。自分の意思とは関係なくふと突発的に激しい不安にかられてしまう「強迫観念」と、その不安を取り除くために何度も同じ行動をしてしまう「強迫行動」があり、強迫観念と強迫行動をセットにして「強迫性障害」といいます。
人によって不安を抱く対象はさまざまで、わかりやすいのは「不潔恐怖」かもしれません。
たとえば、夏の暑い日、汗をかくとカラダはすぐにベトベトの状態になります。このとき強迫性障害の人の場合、つい「カラダが汚れている」と気になってしまうと、何度もシャワーを浴びたり、手足がふやけるほど何時間も入浴してしまったり、と日常生活に支障が出るようなことになってしまうのです。
また、強迫性障害で厄介なのが、「巻き込み」と呼ばれる回避行動です。
不安を少しでも解消したいため、家族や友人などの身近な人にしつこく確認や強要をしてしまうのです。さきの不潔恐怖であれば、「これって汚れてるかな」などと確認したり、「ちゃんと手を洗ってよ!」などと強要したりします。症状への理解がない場合、しばしば衝突の原因になってしまいます。
強迫性障害は不潔恐怖以外にも、「加害恐怖」(誰かに危害を加えたかもしれないという不安から確認行動を繰り返す)、「確認行為」(玄関のカギや窓の閉め忘れなどを何度も確認してしまう)、「儀式行為」(自分の中の決められた手順や回数で物事を行おうとする)などがあり、いずれの場合も巻き込みの可能性があるのです。
ここで一つ疑問が浮かんでくるのが、神経質な人と強迫性障害の人の違いです。
キレイ好きの人と行為自体、大きく変わらないのでは?と思ってしまいますが、じつは強迫性障害の人は精神的な苦痛を伴っています。
つまり、自分自身、その行為自体が不毛で、無意味だとわかっているのですが、その行為を止めてしまうと、強い不安や恐怖に襲われてしまうため、行為を止められず、その都度、イヤな気分に陥っているのです。そのため症状が長くなると、自分に自信が持てなくなったり、悲観的になったり、生活範囲が狭まることで引きこもりがちになるなど、どんどん悪循環に陥ってしまいます。
では、事態を悪化させないためにはどうすればいいのか。
これはやはり、まず心療内科などを受診することです。強迫性障害の発症率は10~20代が多く、一般的には「セロトニン」という脳の神経伝達物質に何かしらの問題があると考えられています。そのため治療では、セロトニンの量を調整する「薬物療法」だったり、「行動療法」でアプローチします。
夏であれば、キレイ好きの人が汗や臭いなどに敏感になりますが、周りの人から見てもちょっと奇妙に映ってしまうほどのキレイ好きは、ひょっとすると強迫性障害の可能性もあります。自分ではなかなか自覚しにくい病気でもあるので、病気を正しく理解して、何かあったら力になってあげるという姿勢が問われてくるかもしれません。