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6月28日にHills House AZABUDAIにて、今年で11回目を迎えるイベント「ELLE ACTIVE! FESTIVAL 2025」が開催されました。俳優の橋本愛さんらが登場した、5つのトークセミナーのリポートをお届けします。
今年の同イベントは「Switch ON!」をテーマに、5つのトークセミナーと5つのワークショップを実施。トークセミナーは、各ジャンルの第一線で活躍するゲストを招いて行われました。
<登壇ゲスト>:三宅香帆(文芸評論家)、金原ひとみ(作家)
最初のトークイベントは、作家の金原ひとみさんと文芸評論家の三宅香帆さんが登壇し。「今、読むべき一冊と出合う』というタイトルでトークセッションが始まりました。「あらためて⽴ち返りたい読書の魅力」に迫り、トークを展開している中、金原さんの新著『YABUNONAKA―ヤブノナカ―』について、三宅さんが「とても素晴らしかったです。今回この小説は、たくさんの登場人物の内面を描いているというのがびっくりでした。私の知り合いの男性がこの作品を読んで、“中年への応援歌だ!”という話もしていました」と本作を読んだ感想と質問を投げかけました。
それに対して、金原さんは「どこかで希望を持てる作品を描きたいと思っていたので良かったです。性加害をテーマとしているので“なんでこのような状態になってしまったのか”を被害者の側だけでなくて、加害者の側の気持ちも含め、いろいろな角度から語らなければ感じていました。私自身、当初は加害者の気持ちは絶対に理解できないだろうなと思っていたのですが、小説を描く中で理解できる部分もあり、加害性というのは誰しもが持っているものだなとも感じました。多方面の視点を書ききれたと感じた作品となりました」と本作への想いを語りました。
また、金原さんが小説を書くことに関して「皆さん日々生きづらさや怒りを感じることもあると思いますが、そういった抑圧を言語化し、書き出すことで、落ち着いて整理が取れていく感覚を得ます。小説を書くのは、自分を少し俯瞰に見て整理ができるいいツールだと思います」と語りました。
そして三宅さんから読書の意義について問われると、金原さんは「やはり、SNSやショート動画のようなファスト化したコンテンツは瞬間的には刺さるのだけれど心に残らないなと感じていて、本をじっくり読むという体験は心に残る深さが違う。例えば私はドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を数か月かけて上巻を読んだのですが、中下巻は本当に面白くて一気に読み進めたんです。こういった読書における成功体験を積み重ねることも意義があると思います」と回答しました。
続いて、三宅さんの著書『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』についても言及し、金原さんは「人はこうやって本を読んできたのかという歴史から知ることができたすごく面白い本でした。なかなか本を読む機会がない人はこの本を読めばいいんだ!と強くおすすめしたいです」と魅力を語りました。その後、金原さんと三宅さんのお二人のおススメの小説を紹介するコーナーや来場者との質疑応答などもあり、読書好きにはたまらない時間を観客と共有していきました。
<登壇ゲスト>:福本 敦子 (エルスタイルインサイダー)、大山 直美(フィリップスジャパン)
<進行>:松井 朝子(エル デジタル副編集長)
第2部のトークイベントでは、エル デジタル副編集長・松井朝子さんの進行のもと、美容コラムニストの福本敦子さんと、フィリップス・ジャパンのビューティー担当マーケティングマネージャー・大山直美さんが登壇。「〜Be free in your own skin〜 自分をエンパワーメントするセルフケアとは」をテーマに、心と体のセルフケアについて語り合いました。
大山さんからフィリップスの歴史やヘルスケアへの取り組みが紹介され、続いてセルフケアの実践例へ。福本さんは「毎日湯船に浸かって疲れをリリースするようにしています。よもぎ蒸しやハーブティーなど、温めることを意識していて、疲れに敏感な自分にはとても大切です」と語りました。大山さんも「一日の終わりにリセットする意識、大切ですね。私も今日からしっかり湯船に入ろうと思います」と共感を示しました。
心のケアについては、福本さんが「人との関わりと、自分と向き合う時間の両方が大事。私は“アヴァンダンスプログラム”という22日間の内省ワークを通して、自分にとっての豊かさを見つめ直しています」と告白。大山さんは「初めて知りましたが、自分の内側を整えるヒントになりそう」と関心を寄せました。 また、ムダ毛ケアについても話が及び、会場ではフィリップスの光美容器「ルメア」が紹介されました。
<登壇ゲスト>:橋本愛(俳優)、福間美由紀(映画プロデューサー)
<進行>:月永理絵(映画ライター)
第3部のトークイベントでは、人気俳優の橋本愛さんと、是枝裕和監督が主宰する映像制作者集団「分福」のメンバーとして『真実』『ベイビー・ブローカー』『遠い山なみの光』など映像作品のプロデュースを手掛けている福間美由紀さんが登壇。『女性が導く日本映画のこれから』と題し、映画ライターの月永理絵さんの進行にて、トークセッションが行なわれました。
まず、福間さんが日本の映画業界における女性の監督、プロデューサー、スタッフの関わり方について、「肌感覚では女性スタッフは増えてはいるが、まだまだ意思決定層における女性の割合は低い」と現状を伝え、それに対して橋本さんは「私も福間さんと同じで、増えてきているとは思いますが、やはりまだまだ女性のプロデューサーは少ないと感じますし、私自身、女性の監督とご一緒したことがあまりありません。衣装部やメイク部は女性の方が多いという認識です。今後、意識的に女性スタッフを増やしていくようにしていけたら良いなと思います。是枝監督と以前お話させていただいたとき、女性スタッフが増えるような意志をもって現場を作っていらしゃる方がいるのは映画界の希望だな、と感じました」と俳優の⽴場から話しました。
近年の撮影現場では、労働環境や出産・育児への支援が改善されつつあるとした福間さんは、「以前の映画業界は長時間労働や力仕事が多く、男性向きの環境が続いていた印象があります。現在は映適(日本映画制作適正化機構)によってルールが整備され、デジタル化も進み、身体的な負担が軽減されてきました。女性スタッフにとって働きやすい環境が少しずつ整ってきていると感じます。シッター費用の補助や、女性が悩みや生活について話し合える場もできてきており、大きな変化だと思います」と述べました。
また、橋本さんは「私も映適のルールが適用された現場に参加しましたが、労働時間が決まっていることで心身ともにとても働きやすくなりました。限られた時間で高いクオリティを目指すことで、以前よりも現場にエネルギーが生まれ、作品の質も向上していると感じました」と話しました。
福間さんは、職場における男女格差について「出産後、仕事に復帰できるか不安で、両⽴に自信が持てなかった時期がありました。男性はそうした不安なく働けるのではと感じ、夢や人生を考える上で、なぜ女性ばかりが選択を迫られるのかと悩みました」と語りました。そのうえで「最近は子育てに積極的な男性も増えてきており、社会全体が良い方向に向かっていると感じます」と前向きな変化を述べました。 橋本さんは「男性同士の方がコミュニケーションが円滑に感じることがあり、自分が壁を感じる場面もありました」とし、女性スタッフの増加を望む気持ちを共有しました。
撮影現場の国際的な違いについて、福間さんはフランス・韓国・イギリスでの現場を例に制作環境の違いに触れ、橋本さんも「昨年ベルリンで撮影を経験し、労働時間が守られ週休二日制という働き方に感動しました。朝食をとる時間もあり、規則正しい生活が保障されていると感じました」と語りました。
最後に福間さんは「作品の内容だけでなく、働く環境の両方をより良くしていきたい」と述べ、橋本さんは「映画業界にはまだ課題もありますが、希望をもって“映画を一緒に作ろう”と誘える時代になってきました。これからも未来のためにできることを続けていきたいです」とトークセッションを締めくくりました。
<登壇ゲスト>:peco(タレント/ブランドプロデューサー)、鏡リュウジ(占星術研究家/翻訳家)
第4部のトークイベントでは、タレント・ブランドプロデューサーとして若い世代から支持されるpecoさんと、占星術研究家・翻訳家として30年以上活躍する鏡リュウジさんを迎え、「占い&ジャーナリングで未来を切り開く! “本当のわたし” の見つけ方」と題したセッションが行われました。
冒頭でpecoさんは、「ジャーナリングは知っていましたが、実際にはあまり経験がありません。ただ、息子が1歳になるまで成長記録を日記につけていた時期がありました。今ではあまり見返さないけれど、当時の自分が将来の私にとって宝物になると信じて書いていました。また、私はSNSもよく使うのですが、自分の想いを整理して発信することで感情が確かになる感覚があります。とはいえ、本当は紙に書く方がより良いのかもしれないと思っています」と語りました。
続いて鏡さんは、「ジャーナリングとは日記や日誌のこと。今アメリカのZ世代の間で大きなブームになっています。私も翻訳を担当した『シャドウワーク・ジャーナル』を通じてこの概念を知りました。“シャドウワーク”とは、目に見えない影の部分と向き合う作業。心理学的にはコンプレックスや苦手意識など、自分が避けてきた一面をあえて見つめることが心の整理や成長に繋がるのです。過去の自分に目を向け、認め、感謝することもその一部です」と説明しました。
その後、参加者と共に実際のジャーナリングを体験。「あなたの嫌いな人を一人思い浮かべて、なぜ嫌いなのかを書いてみてください」というワークでは、pecoさんも「こうして文字にすることの大切さを実感しました」と語りました。鏡さんは「嫌いな相手は自分の“鏡”であり、それを通じて自分を見つめ直すきっかけになる。これこそがジャーナリングであり、シャドウワークです」と解説しました。
さらにいくつかのお題に取り組んだ後、鏡さんによるタロット占いも行われ、「悪魔のカード」が登場。しかしこれはシャドウワークと深く関係するカードで、「影と向き合えば、それは幸福へと転じる」というメッセージが語られました。最後にpecoさんは、「鏡さんの“悪魔”のお話を聞いて背筋が伸びました。自分の中の悪魔とも向き合い、仲良くなれたら、それはもう悪いものではなくなるのかもしれません」と感謝を述べ、トークを締めくくりました。
<登壇ゲスト>:坂井佳奈子(エル編集局長)、中村昭子(エル・ジャポン副編集長)
<イベント総合MC>:三浦珠美
本イベントのラストとなる第5部では、エル編集局長・坂井佳奈子さんとエル・ジャポン副編集長・中村昭子さんが登壇。 前半では、ELLE ACTIVE!と通じる理念を持つ、現在開催中の大阪・関西万博の「ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier」の「WA セッション」を紹介。「WAセッション」のこれまでをダイジェストで振り返りました。
後半は、各セッションの担当エディターとともに、イベント全体を総括。「11回目の開催となる本イベントは、ファッションやビューティーだけでなく、文化的な側面も強く打ち出したいと考え、今年はカルチャーを軸にさまざまなセッションを企画しました。『Switch ON!』というテーマのもと、登壇者の皆さんが多様な視点から前進のヒントを語ってくださり、私たちにとっても大きな手応えを感じる一日になりました。本当にありがとうございました」と坂井局長が締めくくり、盛況のうちに『ELLE ACTIVE! FESTIVAL 2025』は幕を閉じました。
【イベント公式サイト】
https://www.elle.com/jp/culture/a64738438/elle-active-festival-2025-switch-on-0628/