- 週間ランキング
フィンガーライムの栽培にあたり、当社が選んだのが「水耕栽培」という方式です。理由は明確で、これまで農業の知識や経験がなかった私たちが、すでに経験豊富な農家の方々と同じ土俵で戦うのは難しいと判断したからです。そのなかで初心者でも管理しやすく、なおかつ効率的な方法として水耕栽培を選びました。また果樹の水耕栽培は珍しく、差別化も図れると考えました。
水耕栽培のメリットは、長期休暇が取りやすい点です。従来の土耕栽培は手入れが日々欠かせず、夏場などは休みを取りづらいとされています。水耕栽培は水を一定量貯められる構造のため、1週間程度は手をかけずとも問題なく管理可能。印刷業と両立できる体制となっています。
また、体力的な負担が少ないことも強みです。フィンガーライムは「フィンガー」と言うだけあって、果実は指と同じくらい小さく、収穫や移動の際に重さが負担になることはほぼありません。土を使わないことで鉢の重量も軽くなり、果樹の移動や配置変更もスムーズです。無理のない栽培方法のため、定年後の社員の働き口としての提案も検討しています。
水耕栽培を選んだことを機に、農業事業のブランド名を「Aqua Pomum(アクアポムム)」としました。「Aqua」はラテン語で「水」、「Pomum」は「果実」を表します。水耕栽培で果樹を育て、良質な果実を安定供給する。その第一歩として、フィンガーライムの栽培に取り組んでいます。
将来的な目標は、全体売上の2割を農業事業で達成すること。そうなれば、事業の多角化とリスク分散が可能になり、農業法人化も視野に入ってきます。農業法人になることで農地を購入できるようになるため、フィンガーライムの栽培面積をさらに広げていけるでしょう。また、ゆくゆくはフィンガーライム以外の果物の栽培にも挑戦したいと思っています。
こうした取り組みの先に見据えているのは「ブランドオーナー」としてのやりがいです。現在の印刷業では、当社の名前が表に出ることはほとんどありません。例えば、物流ラベルや医療ラベルなど、多くの人の目に触れない場所で使われているものが多く、いわば裏方の仕事が中心です。たとえどれだけ高品質であっても、それが当社の仕事であると知ってもらえる機会は限られています。
その点、フィンガーライムのような希少価値の高い商品であれば、自社ブランドとして市場に直接出せるチャンスがあります。レストランのメニューに「アクアポムム」の名前が記される日が来れば、それは社員にとっても大きな誇りとなるはずです。実は、ブランド名のアクアポムムは、社員の公募により決定しました。今後も会社一丸となって農業事業に注力し、社員が家族や友人との会話のなかで「うちが作ったフィンガーライムだよ」と言えるような、そんな未来を実現したいと考えています。