東洋大学(東京都文京区/学長・矢口悦子)の酒粕プロジェクト「U-go! ~酵母の贈り物~」では日本酒の製造過程で生じる、食べられるにもかかわらず破棄されていた酒粕を活用した学生食堂メニューを開発。2025年5月から東洋大学 朝霞キャンパス(埼玉県朝霞市)の学生食堂で提供を予定している。それに伴い、発表会と試食会が行われ、メニュー開発をした学生やプロジェクトを進行している准教授が登壇した。

酒粕プロジェクト「U-go! ~酵母の贈り物~」は東洋大学ブランド酒である越生梅林エスティの醸造において、副産物的に発生する酒粕を使って学生が考案したメニューを学食で展開するプロジェクトだ。酒粕の廃棄問題を解決するための一環で、学内横断プロジェクトとして立ち上がったと東洋大学 理工学部 応用化学科 准教授 峯岸 宏明氏は説明した。

東洋大学で酒粕?と思う人も多いと思うが、東洋大学理工学部生命工学研究室と埼玉県入間郡越生町にある有限会社佐藤酒造店が産学連携事業として花の酵母を使った新しいコンセプトの日本酒の開発に取り組んでいて東洋大学ブランド酒として発売している。当日は有限会社佐藤酒造店 代表取締役 社長 佐藤 徳哉氏も会場に駆け付けた。

今年もキャンパス内に自生するアジサイと、佐藤酒造店敷地内の梅林にある小梅の花から採取した酵母を使用した2種類の日本酒を発売。酒造りの工程では酒粕、米ぬかなどがでるが、清酒業界では、これらを食品リサイクル法でいう食品廃棄物等として取り扱っている。

最近では酒粕のでる量は増えているものの、酒粕の取引額やその利用が減っているため、廃棄するためのお金などが酒蔵の負担にもなっている。そこで、今回、学生がメニューを考案することで若い世代への酒粕の認知にも繋がり、今後も酒粕を使用する機会が増えれば酒蔵への助けにもなるというわけだ。

今回のプロジェクトは経営学部と食環境科学部の学生が3チームに分かれ、それぞれのメニューを開発。学生は酒粕を知っているのか?学食ではどのようなメニューがあると喜ばれるのか?など市場調査からスタート。2回にわたる試食会では試食した学生から多くの意見をもらい、改善を重ねた。

料理だけではなく、写真やメニュー、ポスターなどの販売意欲を掻き立てるものを考え、販売戦略も考案。学生にとっては講義・実験・ゼミ等で学んだことの実践する場となった。

【3チームのメニュー紹介】

A班のメニューは「酒粕仕込み!やわらか鶏の照り焼き風〜茶碗蒸しを添えて〜」(550円/税込)

照り焼きと茶碗蒸しに約15gの酒粕を使用している。甘じょっぱい味付けの日本食メニューをコンセプトにメニューを考えた。酒粕になじみがない人でも食べやすいように茶碗蒸しのような繊細な料理を取り入れることで酒粕の魅力を伝える。鶏肉を酒粕に一晩漬けているため、柔らかな食感、豊かな風味を出した。

実際に食べてみると、お肉は柔らかくてソースにもよく合う。そして、茶碗蒸しは普通の茶碗蒸しよりも味にインパクトが出て、とても美味しかった。

B班のメニューは「酒粕香る豚しゃぶサラダうどん」(500円/税込)

全体の酒粕の使用量は8gとなる。メニュー開発にあたり、アンケートを取ったところ、学食のメニューには野菜が少ない、ヘルシーな料理が少ない、和食が少ないなどの結果が出た。そこで彩り豊かな野菜をたっぷり使用し、うどんにすることにした。そして酒粕風味のバンバンジータレとして酒粕をタレに使用することで酒粕の風味が苦手な人にも程よく感じられる料理に仕上げた。

試食してみると、ゴマの風味豊かなタレが野菜とコシのあるうどんにからんで食が進む。冷たいうどんなので春の季節にもピッタリだ。

C班のメニューは「選べるソースの粕から定食」(550円/税込)

酒粕入りのソースを選んだ場合、1食あたりの酒粕使用量は30gとなる。珍しさ&ボリューム、ジューシーさの顧客需要の高さが市場調査でわかり、コンセプトとして酒粕を使った新しさとボリュームを追求した肉料理にした。学食初のソースが選べるメニューでもあり、珍しさもある。

食べてみると、酒粕に漬け込んだお肉が柔らかく、ジューシーな唐揚げは学生に人気がでそうだ。4種類のソースにはさっぱりしたソースからマヨネーズのこってりしたソースまであり、好みに合わせて選べるのも魅力的だと感じだ。

学生が実際に開発したメニューを食べられる大学というのも面白いが、さらには酒粕廃棄にも貢献するプロジェクトである「U-go! ~酵母の贈り物~」は清酒業界にとっても学生にとっても多くの学びとなることだろう。今後もこのような実践的なプロジェクトが増えていくかもしれない。

情報提供元: マガジンサミット
記事名:「 廃棄問題を抱える酒粕を上手に利用!東洋大学の学生が考えた酒粕を使った学食メニューが登場