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『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』のキャラクターデザイン・アートディレクターである信澤収氏×ブシロードのタッグ贈る『VIRTUAL GIRL @ WORLD’S END』(バチャガ)が、2025年6月12日(木)に発売された。
本作は、2055年の荒廃した終末世界が舞台。ジャンルは一言で言えば「ヴィジュアルノベル」だが、プレイ感はそれだけに収まらない。終末SF、恋愛、コメディ、サスペンス……いくつものジャンルを溶かし込んだ、不穏で美しい物語となっている。
現在、プレイを終えたばかりの筆者だが、その物語の面白さに心を揺さぶられまくった。
「AI」や「バーチャルライバー(Vstar)」が大きなキーワードとなる本作は、現実世界が歩むひとつの未来を暗示しているかもしれない。そう思わせるほど、作り込まれた世界観となっているのだ。
本記事では、本作の魅力をキャラクターにスポットを当ててお届けする。なお、ネタバレは極力ないように心がけるが……できればプレイしてみてほしい。
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2055年、東京。
戦争、資源の枯渇、人口減少。絶望に溢れかえったこの場所で、ライブ配信を行う少女たち。
カラフルな新しい衣装と髪型で、今日の配信が始まる。
値踏みされ、順位をつけられ、空っぽになっていく少女たち。
世界を見るその瞳だけが、黒く濁っていった。
色のない、暗い世界で、ひとりの少女が目覚める。
「HELLO WORLD! Vstarの《アイ》です!」
少女はうたう。世界中の笑顔のために。
どんな闇の中でも、うたいつづける。
世界が終わるその日まで。
絶望で、かがやけ。
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物語は、主人公がとある廃墟で自らを“Vstar”と名乗る謎のAI「アイ」と出会うところから始まる。
すでに終末を迎えた世界で、彼女はみんなを笑顔にするため、失ってしまった“歌”を取り戻そうとするが……。
目の前の存在は本物なのか? 歌い終えた先に待つものとは?
絶望と希望、それぞれの思惑が重なったとき、物語の根幹を揺るがす真実へとつながっていく。
ここでは本作の核となるキャラクター4名をピックアップして紹介する。
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終末世界で希望を失い、無気力に日々を過ごしているエンジニアの青年。趣味という趣味もないが、旧時代の機械をいじるのは嫌いじゃない。左目が見えず、Vision Eyeと呼ばれる義眼を埋め込んでいる。それを使えばAR上でバーチャルライバー(Vstar)の配信を見ることができるが、Vstarに関心がなく、Vision Eyeは故障したまま放置している。
自らをVstarと名乗る謎のAI「アイ」と出会い、嫌々ながらも巻き込まれる形で彼女と行動を共にすることとなる。
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【プレイ感想】
登場時は必要以上に人と関わりを持たない、無気力系主人公かと思っていた。しかし、物語を進めるうちにアイや片瀬凛たちと徐々に心を通わせ、人やVstarに対する気持ちが変わっていく。
不器用ながら一途で誠実な面があり、主人公としてかなり好印象。自分の過去と向き合い、選び取る未来は……。
ちなみに、とあるシーンでは本人不在で「ドS系彼氏」のようなレッテルを貼られるが、案外やっていることはその通りだったりする。
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廃墟のゲーム機の中で長い間眠り続けていた少女。人間のようにふるまうが、その正体はAGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)。しかし、長期に渡るスリープの弊害で記憶の大部分を失っている。人間以上に喜怒哀楽が激しくおしゃべりが大好きで、必要最低限しか話さないミライとは対照的な性質。
忘れてしまった歌を思い出せれば、この絶望世界を「楽しい」でいっぱいにできると考え、画面を飛び出して外の世界を旅することに。
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【プレイ感想】
本作のメインヒロインで、明るく楽しい天真爛漫さが非常に可愛い。自分が生まれた時代の言葉を使うためか、“現実世界”で使われているネットミームを多用するところに親近感を覚える。
ただ、終末系作品において純粋&天真爛漫なキャラクターは、なにかを抱えているもの。物語を進めるうちに彼女の過去が明らかになり、真実に近づいたときに見せた言葉と表情は震えた。
彼女の歌は絶望となるか、希望となるのか。彼女の一挙手一投足に心を揺さぶられる。
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終末世界の頂点にいるアイドルバーチャルライバー(Vstar)。サプライズ溢れるLIVEパフォーマンスや毎日の多様な配信でファンを飽きさせず、1年以上にわたってトップの座に君臨している。特に料理配信回は創意工夫がみられ、神回が多いと評判。完璧主義でプライドが高く、他人との馴れ合いを嫌うためコラボ配信は行わない。
かつての親友との約束を胸に、彼女は結果を出し続ける。そのうつろげな目をアバターで覆い隠しながら。
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【プレイ感想】
「Vstar」の頂点に君臨するリンカと、その中の人である片瀬凛。彼女が抱える苦悩は、もしかすると現実の“V”や中の人なら、より深く共感できるかもしれない。
主人公とのラブコメが一番強く描かれており、戸惑いながら恋に落ちていく姿が非常に可愛い。とくに、主人公のことになると早口になるシーンは必見だ。
物語のなかでとある過去と真正面に向き合うことで、人としての成長を見せてくれる。このまま自分の道を歩み、幸せになってほしいと思っていたのだが……。ナンデソンナコトスンノ。
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選ばれた者だけが豊かさを享受する、そんな世界を反転させるべく結成されたレジスタンスのリーダー。バーチャルライバー(Vstar)として配信することで、都市の目を欺きながらレジスタンス活動をしている。明るい性格でノリが軽い一方、計算高く目的のためには犠牲者がでることもいとわない非情さも持ち合わせている。
一向に成らない革命に焦りを感じており、大局を変化させる逆転の一手を模索している。
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【プレイ感想】
終末世界に似つかわしくないほどノリが良く、気前のよい姉御肌。しかしながら、彼女の抱えている“闇”は深く、憎悪と怨念に満ちている。
素性が明らかになるほど彼女を止めたくなるのだが、その術が見つからず、タイミングの悪さも相まって心がザワザワしてしまう。
基本的に革命家のリーダーとしての側面が描かれるが、“ちゃんと年相応”のシーンもあり、彼女がこうなってしまったのは誰が原因なのかと考えてしまった。
戦争により資源(リソース)が枯渇し、ただ終わりを待つ世界。“Vstar”たちは投資の対象となり、順位による格付けが行われている。
プレイしていると、やはり頭にチラつくのが現実世界のVTuberの存在。スパチャのような投げ銭システムや生配信によるコメント返しなどのシーンもあり、AIの飛躍的な発展を相まって、これは現実の延長線上にある、ひとつ未来ではないかと錯覚してしまう。
だからこそ、その結末がどのようなものになるのかが非常に興味を惹かれた。
また、プレイ中に常につきまとってくるのが、明るいシーンの中に見え隠れする不穏感。
バーチャルな世界が描かれているからこそ、相手は本当に存在するのか、本心はどこにあるのかなど、どうしても心から信じられない部分が出てくる。
その不穏、不信感こそが、より物語に没頭させるスパイスとなっていた。読み進めることの意欲と興味、そして真実へ向かうことの怖さが、たまらない面白さを生んでいた。
シナリオは40万字以上の大ボリュームで、おおよそラノベ4冊分の文量。「あ、もう終盤かな」と思わせたところからの怒涛の展開が、非常に感情を揺さぶる。
……くそう。ネタバレなしに書くのがこんなに心苦しいとは。
プレイした方と感想戦がしたい。それほど心を掴まれた作品なので、ぜひプレイしてみてほしい。
作品概要
VIRTUAL GIRL @ WORLD’S END
■ジャンル:終末系ビジュアルノベルゲーム
■発売日:2025年6月12日(木)
■プレイ人数:1人
■対応機種:Nintendo Switch™/ Steam®/Windows
■対応言語:日本語/英語/簡体字/繁体字
■価格:
【Switch】
パッケージ通常版 3,960円(税込)
パッケージ初回限定版 19,800円(税込)
ダウンロード版 2,970円(税込)
【Steam】
ダウンロード版 2,970円(税込)
【Windows】
パッケージ通常版 3,960円(税込)
パッケージ初回限定版 19,800円(税込)
■公式HP:https://virtualgirl.bushiroadgames.com/
©Project VIRTUAL GIRL
(執筆者: sasuke_in)