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沖縄のコザを舞台に、幼い息子と夫との3人暮らしをする17歳のアオイ(花瀬琴音)が社会の過酷な現実に直面する姿を描き、 第56回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭 [クリスタル・グローブ・コンペティション部門]に出品、 Variety誌が“貧困にあえぐ日本の性差別を、痛烈に告発する。溝口健二的な現代悲劇。”と激賞した映画『遠いところ』が、7月7日(金)より全国順次公開中です。
主人公アオイを演じるのは、昨年『すずめの戸締まり』への出演で話題を呼び、本作が映画初主演となる花瀬琴音さん。東京出身の彼女が、撮影の1ヶ月 前から現地で生活し、“沖縄で生まれ育った若者”アオイを体現します。
この記事では、映画について花瀬さんが感じたことを<ネタバレあり>でご紹介します。映画の重大な部分に触れていますので、まだご覧になっていない方は以下はお読みにならない様、お気をつけください。
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https://getnews.jp/archives/3424410
――夫から暴力を受けるシーンなど、ヘビーな撮影も多かったと思います。
役作り期間中には脚本をいただいていなかったんです。今日撮るシーンだけをいただいて、それを繰り返していく撮影だったので、どうなるのか先が分からなくて。アオイという役柄を自分の中に落とし込んでいく日々でした。
――アオイに色々なことが起こりますが、花瀬さんご自身も驚いてしまう様な感じだったのですね。
そうです。その日の台本いただいて「マジか…」って(笑)。みんなでよく話していました。うわあ…って思う様な出来事に感じた気持ちをそのまま演技していくという感じで。
――では監督と密にコミュニケーションをとりながら進めていく形ですよね。
工藤監督は「こうしてほしい」と言ったことを伝えてくるのではなくて、「この状況だったら、どう思うかな」といったことを一緒に話しながら考えながら、カメラマンの杉村さんと一緒に進めていました。「アオイを俯瞰で見ている」というカットにこだわっていたみたいで。工藤監督と杉村さんは、アオイのことを見守りたいけれど、近づかない様に、「誰かが見ている様な」視点にこだわっていました。
――アオイとして色々な出来事に対峙してきて、一番ショッキングだったことは何ですか?
たくさんありましたけど、さすがに海音が亡くなるとは思いませんでした。展開として、アオイの周りの人が遠くなっていって、アオイがどんどん孤立してしまう。(全体の)脚本をいただかなかったからこそ、「置いてかれちゃう」という気持ちが強かったです。実際に、マサヤ役の佐久間祥朗くんと、海音の石田夢実ちゃんがクランクアップして東京に戻っていってしまったので、本当にケンゴと2人きりになって。リアルな状況を映画にも反映してもらっていました。
――色々な辛い状況になっても、海音とケンゴの存在がとても大きいというか、その2人がいなくなってしまうということが大きすぎますよね。アオイはケンゴのことを大切にしていることが伝わってくるので。
売春をはじめるシーンとか、辛いこともたくさんありますけれど、ケンゴがいるから頑張れていたんですよね。ケンゴが児童相談所の方に保護されて、海音が死んで、全部無くなっちゃったという気持ちに私もなりました。
――ラストシーンについてですが、私は2人には希望があると感じているんです。
素敵です。ありがとうございます。
――花瀬さんはどう解釈されましたか?
工藤監督には「最後には希望があってほしい。こういう状況の女の子たちに希望があってほしいと僕は思っている。でも、向こう(撮影場所)に行った時にどう思うかはまかせる。行ける所まで行ってほしい」と言われました。実際にケンゴを抱っこして海に入っていく時に、月起くん(ケンゴ役)が「寒い寒い」って震えだした時に、「この子は生きていて、私にはこの子がいるじゃん」って初めて感じたんです。それをそのまま表現させてもらいました。正直、アオイが「この子は生きている」と感じたからって、どうなるのかは分からないけれど、「この子は希望だ」ということは心から感じました。
『遠いところ』
【キャスト】
花瀬 琴音
石田夢実、佐久間祥朗、長谷川月起/松岡依都美
【スタッフ】
監督・脚本:工藤 将亮
エグゼクティブプロデューサー:古賀 俊輔 プロデューサー:キタガワ ユウキ アソシエイトプロデューサー:仲宗根 久乃
キャスティング:五藤 一泰 撮影:杉村 高之 照明:野村 直樹 サウンドデザイン:木原広滋、伊藤 裕規
音楽:茂野 雅道 美術:小林 蘭 共同脚本:鈴木 茉美
主題歌:“Thanks” by 唾奇
製作:Allen、ザフール