2002年4月に声優デビュー、同年6月には歌手デビューを果たし、2022年に活動20周年を迎えたRita氏。現在「Rita 20th Anniversary」として、2022年12月3日(東京)、24日(大阪)に記念ライブが行われるほか、記念アルバムやオリジナルストーリーを短編小説と音楽にまとめた作品を発売するなど、様々なアニバーサリー企画が予定されている。

 そんなRita氏に、デビューから現在までの活動を振り返りつつ、当時の思い出を語っていただく特別インタビューを実施。さまざまなゲームソングを歌い、声優としても活動中のRita氏の過去、現在、そして未来への想いを語っていただいた。

縁で繋がり歩き続けた20年を振り返る

――20周年おめでとうございます! 今の率直な思いを聞かせてください。

Rita氏(以下、Rita):我ながらよくぞここまで続けて来たと思います。音楽(と演技)だけはずっと飽きることなく追い求め続けることが出来ています。自分にとって大切なもの、心の糧なのだろうなと。

――これまでの活動を振り返る意味でも、年代ごとに思い出深い出来事を聞かせてください。まずはデビュー期2002~2006年)頃から。

Rita:ゲームCVへのオーディションのお誘いと、CV出演のオファーがたまたま2つほぼ同時に来て、どちらも運よく関わらせていただくことができたというのが始まりでした。このお話をいただく前の私は、ハイアマチュアでもいいから舞台に立っていたい、けど俳優として生きるのは夢のまた夢、と思っていました。学校を卒業後、一般の仕事と舞台活動を並行して無理をしたため過労で倒れ、結局舞台も仕事も辞める羽目に。就職したものの長続きせず、舞台活動にも戻らず、全て白紙に戻った感覚でした。

 すると不思議なことに、ネットを介して新しい出会いがあって様々な人と仲良くなり、面白いお話が飛び込んできたわけです。今にして思えば2001~2002年はとても不思議な分岐点の時期でした。2002年の前後に出会っている方々とは今もご縁があるかたが多いです。

 佐藤ひろ美さんのライブを大阪のイベント会場で観たことで、PCゲームのシンガーという道があるのだと感激しました。歌うことも好きだった私は、ゲームソングを歌いたい、佐藤さんみたいになりたい、絶対にやりたい!と思い込んでしまって。思い込むと一直線!みたいな状態だったのでしょうね。

 当時は大阪に住んでいたのですが、以前過労で倒れたのが嘘のように、仕事でお声がけいただけば夜行バスで東京~大阪を往復して、バイトも掛け持ちして、猪突猛進していた時期です。全てが自分の好きなこと、本当にやりたいこと、片手間ではなくのめり込んで集中してできることだったのでとても気力が充実していたからこんな離れ業みたいなことも出来たのだろうなと思います。

 最初に関わらせていただいた2作を通じて「この世界で自分は生きていく」と決心して動けば動くほど、驚くほどのたくさんのありがたい出会いがありました。この時期には『CROSS†CHANNEL』(FlyingShine)をはじめ、いまだに忘れられない作品に多く携わらせていただいています。PCゲームの隆盛期とちょうど重なって、数珠繋ぎのように作品との出会いがあった感覚です。

 ビジュアルアーツさんとの関わりも大阪に住んでいたからこそのご縁でした。電話一本で「歌いに来て~」みたいなこともあったり(笑)。

――いい縁がどんどん繋がっていったんですね。続いて2007~2011年頃はいかがでしょうか。

Rita:その時期は、彷徨い歩き期ですね。夜行バスの時間を心配されることも定着しましたが、いよいよこの時期に思い切って上京しました(※)。ところがこれまた不思議で、上京したから仕事が増えるというわけでもないんですよね……。これがこの仕事の恐ろしいところです。
※このイメージが定着しており、ちなみに未だに「夜行バス大丈夫ですか?」とたまに聞かれているとのこと。

 この頃の私はとても焦っていて、自分の演技がとても下手だと痛感してワークショップに通ったり、あちこちの先生を訪ね歩いて歌のレッスンを受けたりしていましたが、うまくいきませんでした。むしろどうやって芝居していいのか分からなくなるくらい……。がむしゃらに突き進んでいた時期を抜けて、「この世界で生きていく」という決意が空回りして完全に混迷していたのかもしれません。

 その時またひとつ扉が開きました。Keyさんとの出会いです。『リトルバスターズ!』(Key)へのボーカル起用がもう一回り大きな世界へ乗り出すきっかけとなりました。ただ自分が満足して楽しく歌うだけではダメで、様々なかたへ伝わるようにきちんと届けて結果を出さなければいけない。本当のプロフェッショナルにならなくてはいけない。そんな思いがプレッシャーになることもありました。

 当時の私は出来る限り評価に一喜一憂しないようにしようと決めていました。常にニュートラルでいること。冷静に物事を受け止めて浮き沈みしない自分でいること。喜怒哀楽の激しい私には未だにとても難しいのですが、この頃の経験をきっかけに、ずっと心のどこかにそのことを言い聞かせるようにしています。

――混迷の中、さまよったからこその光だったのかもしれませんね。続く2012~2017年は、いよいよ快進撃が……!?

Rita:おかげさまで安定した活動が出来た時期でした。ゲームのおかげで自分の名前を知っていただくことができて、ゲームというものにとても支えていただいていました。この時期を支えて下さったメーカーさんやクリエイターの皆様には感謝ばかりです。自分では到底立てないような大規模ライブへの参加もたくさん経験しました。

 この時期に浮かんできたのは「自分に何ができるのか」ということでした。”クリエイター魂爆誕期”とでもいいましょうか、自分で作品を制作したい思いが次第に芽生えて、意識的にオリジナル作品の制作やコラボレーションをしていくようになりました。絵が描けないし作曲もあまりできないので、今まで知り合った方々の力を存分にお借りして。「あなたを夢に見たのでコラボして」みたいな口説き文句を言ったり(笑)。

 初期に歌唱した楽曲の権利関係がだんだん分からなくなってきた時期でもあったので、自分で楽曲管理できる歌を持ちたいと強く感じたこともオリジナル作品の制作を始めた動機のひとつでした。制作の苦労も本当によくわかるようになりました。だけど作品を作ることの楽しさと、作品を世に送り出すときのワクワク感は何物にも代えがたいです。

 断続的に喉の不調に悩まされることもありましたが、良いお医者様との出会いがあり、リハビリを受けることによって、発声の方法を模索しました。喉の不調を経たことで圧倒的にラクに歌える自分がいました。私の方向性が少しずつ、待ちの姿勢から「発信していく方向」へと転換していき、私の知りたいことは?私のやりたいことは?とハッキリさせていくようになった時期でした。

――迷いや焦りも抱えながらも、まっすぐ前を向いて走っていくような感じですね。そして現在(2018~2022年)へと。

Rita:以前のように追われる感じではなく、少し落ち着いて周囲を見渡している自分がいます。

 今私がトライしてみたいことは、メディアミックス的な案件の制作です。音楽と演技という私の中にある2本柱を融合させるような作品作りが出来ればと思っています。布石はいくつか打っていて、朗読・映像と音楽のコラボレーションや、ストーリー仕立ての作品を今までも作っていますがひとつのメディアや手法に収まらない五感を刺激していくようなエンターテインメントを作りたいというのが今後の夢です。

 頭の中にやりたいことやアイデアが浮かぶので、半年に1度くらい「何をやりたいか」をiPhoneのメモやPCのテキストに書き出してこれは今できる、これは2~3年後くらいにやりたい、これは無理、などと整理したりしています。

 新型コロナの影響で一旦やってみたいことは全て止まらざるを得なくなりましたが、私は白紙に戻ってリセットするとがむしゃらに突き進むタイプなので(笑)。全部なくしても、今までだってここまで出来たのだからこれからもまた出来るはず、という根拠のない謎の熱意だけはあります。喉の状態をキープしながら、20年前の歌もそのまま歌えるように、新しい歌もこれからも大切に送り出していけるように、努力していきたいと思います。

20周年記念CD、ライブなど最新情報をまとめて公開!

――20thAnniversaryとして様々な企画が進行されていますが、新曲オンリーという豪華使用(Disc1)の「Rita 20thAnniversaryCD【-Merkmal-】」(12月3日ライブ会場先行発売予定)はどのようなコンセプトで作られましたか?

Rita:まずは「オリジナル曲をまだまだ持ちたい」という欲張りな願望からの企画立ち上げでした。その上で「私から見た各クリエイターさんのイメージはどんな感じなんだろう」「どんな歌をRitaに歌わせたいと思われるだろう」という私自身の強い興味を足して、各クリエイターさんに発注させていただきました。

 制作を進めていくうちに「絶望」と「希望」が歌詞と楽曲の中に交互に浮かび上がるような内容になってきました。
 私が歩いてきた20年の道のりも、結果的には希望ひとつを握りしめて走ってきたようなものなので、20年に得た私自身の方法論と道のりを、この6曲に重ね合わせていった感じです。

――Disc2の内容は一風変わっているとお聞きしましたが、詳細を教えてください。

Rita:過去のワークスベストアルバムでも「その時に自分が表現したいもの」をテーマにコンセプトを自分で決めて楽曲発注する、ということをずっとやってきていました。その時のアルバム構成や諸々の状況を踏まえて制作するのはだいたい1~2曲でしたが、それらをまとめて聞いていただくカタログのようなイメージでトラックを作ろうと思い立ちました。「DJみたいにトークで繋いでいくのはどうだろう」というA&Rのかたのご提案を受けて、ラジオ番組風に曲の思い出話と曲紹介をしながらのボーナストラックとして構成しました。

 Disc1のクロスレビューも別トラックで入れました。こちらはDisc1と聞き比べてDisc1の楽曲のコンセプトを知っていただければと思います。もう1曲収録していますが、こちらは5年前に15周年記念で作ったオリジナル曲です。シングルCDとして頒布していたのですがもうロットアップしてしまったので、手に取っていただけていないかた向けの再収録です。

――Ritaさんが参加されているユニット「Blueberry&Yogurt」の通算10枚目のミニアルバム「miroton mirotaine」の発売も予定されているとお聞きしました。内容を先行でこっそり教えていただけませんか?

Rita:短編小説と音楽のメディアミックス案件として立ち上げた企画です。原案を私が立てて、PCゲームのライターをされている市川珠輝さん(@tamaki_i)にプロットと小説の執筆をご依頼し、イラストはライアーソフトさんの作品でゆかりのあるAKIRAさん(@akirage)にお願いしました。

 少女が不思議な世界に迷い込んでしまってそこで見たものは……!?といったお話なのですが、うっかり口を滑らせてネタバレしそうなので完全版発売まではこのくらいでご勘弁ください(笑)。来春に完全版CD+小説のセット頒布を予定しています。異なるエンタメの形式に発展できそうなストーリーなので、CDが出た後に何かできないか市川さんと今相談しています。

――そしていよいよ東京・大阪で記念ライブとなりますが、こちらにかける思いを聞かせてください。

Rita:2019年6月のワンマン以来、有観客でのワンマンライブから遠ざかっていました。なんと3年半ぶりです!めいっぱいライブを楽しんでいただけるように頑張りたいと思います。

 2日間4公演、全曲かぶりなしです。「Merkmal」のオリジナル曲も初歌唱です。セットリストが大変なことになりそうです(笑)。
 もともと舞台で育った私からすると、ライブは舞台ととても感覚が似ています。その時のリアルタイムの空気感、その場所でしか味わえない自分の感覚を揺さぶる刺激、音の振動や色や肌感覚が、他では替えのきかない特別な体験なのではないかと思っています。

 配信ライブも配信の良さや面白さがあるのですが、ライブはその場に行って初めて味わえる体感型エンタメなのでぜひこの機会にこの場所に集まってください! 二度とない一期一会の空間を皆さんで一緒に作りましょう!

――実現するしないは置いておき、ライブでこれをやってみたいというものはありますか?

Rita:今回はできないのですが、またバンドライブをやりたいですね。これはいつか実現させたいです。以前はVJさんにライブで映像出しをしていただいたりもしていたので、映像と音とのコラボもまたやってみたいですね。

 以前から考えているのですが、またプラネタリウムでライブ的なものを開催したいです。今は開催できる場所がまだ見つからなくて……公共の施設は基本条件が合わないので難しいのです。粘り強く探したいと思います。

――その他の告知事項があれば教えてください。

Rita:来年2023年夏くらいまでアニバーサリーイヤーとして企画を動かす予定なので、20周年記念と銘打ってのイベントは引き続き計画中です。20周年記念特設サイトや私のTwitterアカウント(@Ritaco25)をチェックしていただければ嬉しいです。Twitterが一番告知情報としては早いです。
 また、コロナ禍をきっかけに、長年の友人が経営している高円寺のイベントスペース(https://twitter.com/CafeProscenium)とカフェ(https://twitter.com/TheatercafeP)の2店舗運営チームに参加し始めました。ここ1年くらい今まで経験しなかったイベント運営や経営的なところをお手伝いするようになり、新しい刺激と学びがいっぱいです。自分の活動があるのでやれることは限られていますが、イベント運営は挑戦してみたかったことなので、面白いエンタメの発信が出来たらと思っています。お近くへお越しの際はお店にもぜひ遊びにいらしてください!

――最後にファンの方にメッセージをお願いします。

Rita:やりたいと思ったことを実現するために行動するのが私のモットーです。そんな私の原動力は、皆さんが楽しんでくださること。え、そんな場所でライブやるの?とか、そんな企画を立てたのか!と、皆さんに面白がっていただけるようなことができたらいいなと思っています。私を入口にして様々な世界へお連れしたいです。これからもどうかついてきてくださいね!

――ありがとうございました!

■Rita 20th Anniversary ​SPECIAL Site
https://ritarita25.wixsite.com/rita20th

■Rita氏Twitter
https://twitter.com/Ritaco25

(執筆者: sasuke_in)

情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 声優・音楽活動20周年を向かえたRita氏特別インタビュー! デビューから現在まで縁で紡がれ歩いてきた道を振り返る