(写真: うまくいけば新鮮なアジを山ほど食べられるかも)


※すべての写真を見る場合にはこちら


うまい魚が食べたけりゃ、みんなで釣りにいけばいい!


最近、特に若者の間で密かに流行っているのが、東京湾など都市近郊での船釣りです。

ひと昔前までは、オジサンのマニアックな趣味でしたが、最近ではピクニック感覚で船釣りを楽しむ若者が増えてきました。

また、釣りの道具を持ってなくてもレンタルでき、午前・午後の空いてる時間に電車でさっと行ける気軽さも人気の理由の一つです。釣った魚はもちろん鮮度抜群。刺身にしても焼いてもおいしいです。また手間ひまかけて干物を作ってしまう人もいます。今回は、日本で最も人気のある魚と言っても過言ではない「アジ」をターゲットにして、東京湾のアジ釣りをレポートしたいと思います。




(写真: 横浜から船で20分ほどで釣れる、いわゆる「金アジ」。こぶりながら脂がのっている。)


「船釣り」の大まかな流れ


まず始めに、「船釣り」を経験したことのない人のために「船釣り」の流れを箇条書きで説明しておきます。船宿(船釣りをしている店)によって多少異なる場合もありますが、だいたいこのような流れになります。


■1.船宿に予約の電話をいれる

はじめての人は「初心者です」と予約時に伝えておいたほうがよいでしょう。また竿やリールを船宿でレンタルする場合は、電話でその旨をあらかじめ伝えておきましょう。ここでの対応が悪かったら他の釣宿を検討することも考えたほうがいいかもしれません。天気(特に風の強さ)や出船状況、魚の釣れ具合なども確認しておいたほうがよいでしょう。船宿のホームページがあれば、前もって確認しておきましょう。


■2.出船時間の1時間前には船宿に到着する

ぎりぎりに到着すると満員で座れないことがあります。出船時間に遅れると、船長や他のお客さんに非常に迷惑がかかるので1時間前には受付をすませておきましょう。


■3.船宿で料金を払う

船宿についたら、まず料金を払います。また仕掛けなどをレンタルする場合も、ここで一緒にレンタル代を支払います。初めての人は、船長席の近くに座って、適宜アドバイスを受けるのが得策でしょう。毎日、沖に出ている人の意見はちゃんと聞いたほうが賢明です。


■4.船にのりこむ

受付で乗る船を教えてもらい乗り込みます。座る場所は、自由席の場合と、指定席(特に混雑時)の場合があります。


■5.釣りの準備をする

船に乗り込んだら竿や仕掛けの準備をはじめます。魚をいれるバケツなども自分のところに持ってきておきましょう。準備は必ず、出船前にしておくことが重要です。沖では船が揺れるので思ったように動けません。仕掛けの付け方など、わからないことは船宿の人から船長に尋ねましょう。


■6.出船

釣宿を出発し、釣りをするポイントまで移動します。どこまで移動するのかは船長次第です。はじめての場合は、釣りをするポイントまでどのくらいかかるのかを聞いておいたほうがよいでしょう。


■7.釣りの開始

船長の合図によって釣りを開始します。船長が釣りをやめる合図があったら、すぐに仕掛けを回収し、移動にそなえます。

船の上で何か問題が起きたら、すぐに船長さんに知らせましょう。


■8.沖上がりの時間

沖で釣りをやめ、港に帰りはじめる時間の事を「沖上がり」と言います。船長さんが「今日は上がります」と言ったら、仕掛けをしまい、船宿に戻る準備をします。


■9.船宿にて解散

船宿に到着後、解散となります。氷などが足りない場合は、船宿で購入したほうがいいでしょう。


横浜でアジ釣りと言えば、横浜・新山下の「打木屋釣船店」




(写真: 横浜・新山下にある打木屋釣船店。最近は20代〜30代の若者が増えたとのこと。)


今回は、横浜の老舗釣り船店の「打木屋釣船店」を利用しました。この船宿はアジ釣りを年中やっていて、ベテラン船長たちがよいポイントに案内してくれるとのことです。打木屋のホームページにもアジを釣っている人の姿が毎日アップされているので、釣果が期待ができますね。


打木屋は地下鉄みなとみらい線の元町・中華街から徒歩5分ほどの場所にありますので、車がない人でも十分通えます。こんな駅からすぐに釣り船屋があったのかという感じです。釣りをした帰りに、元町で買い物をしたり、中華街でランチなんていうのもありですね。




(写真: すでに常連さんたちが釣りの準備を始めている)


船宿に到着して料金を支払い、さっそく船に乗り込みます。空いてる席に座っていいとのことでしたので、船長席に近い真ん中あたりに荷物を置きました。船宿に朝6時頃到着し、まだ出船まで1時間ほどありましたので(打木屋の午前アジ船は7時出船・11時沖あがり。午後の船もある)、さっそく道具の準備にとりかかりました。常連さんはもう準備をはじめています。船にはバケツやぞうきんなどが用意されているので、自分の分を持ってきます。わからないことがあれば、遠慮せずに船長さんに尋ねましょう。しったかぶりが一番良くないですね。


東京湾のアジ釣り開始


船は横浜ベイブリッジの下を通りぬけ、一路アジ釣りポイントへ向かいます。この日のポイントは横浜・本牧沖だというので、船宿からおよそ20分程度で到着しました。すぐにポイントに着いてしまうので、出船前に釣りの準備をすませておいたほうがいいですね。ポイントに着くと、船長さんの合図で釣りを開始します。打木屋さんの船長は、「はいどうぞー」という合図でした。




(写真: 船は一路、アジ釣りポイントへ走る。この日は15分程度で到着した)


船でのアジ釣りのやり方


アジ釣りには、「コマセ」とよばれるイワシのミンチでできた撒き餌を使います。このコマセを「コマセカゴ」と呼ばれる籠のようなものにつめ、それを海中で振ることにより魚をおびき寄せます。そして、そのコマセにおびきよせられたアジ達を、下についている針に食いつくように誘導します。この針には赤く着色された「赤タン」と呼ばれる餌や、アオイソメなどの餌をつけておきます。




(図: アジの仕掛け図。糸がからみやすいので、うまく扱わないとすぐにからんでしまう )




(写真: コマセがつまったコマセカゴ。このコマセでアジをおびきよせ、下の糸についている針にアジを食いつかせる)


この釣りのポイントは、おおまかに以下の3点になります。


1.いかに効率的にコマセを撒いて魚をおびきよせ、

2.そのおびきよせた魚の群れの中に、うまく針を誘導して、

3.アジに食いつかせる


ということになります。うまく針が誘導できなければ、ただエサを撒いただけになります。潮の流れや、その時の水温などいろいろな条件があり、なかなかこの「誘導」がうまくいきません。「誘導」がうまくいっても、アジに食い気がなければエサに興味を示しません。このあたりの複雑さが、アジ釣りを面白くさせている要素の一つでしょう。ただ、爆発的に魚に食い気がある時は、何もしなくて仕掛けを落とすだけで簡単に釣れたりします。そういう日に当たればラッキーですね。


アジ釣りのポイントを図解する


なかなか文章ではわかりづらいので、アジ釣りのポイントを図解してみました。実際には、潮の流れや波などの影響がありますので、なかなかうまくいきませんが、頭の中で釣り方をイメージしておいたほうがいいでしょう。




まずコマセを船長から指定されたタナ(魚がいる層)にまきます。このタナの深さは日によって微妙にかわります。おそらく船長から「底から何メートル〜」と指示されると思いますので、そこのタナに合わせてコマセを撒きます。




コマセを一通り撒きおわったら、次に針の部分をコマセの煙幕(コマセをばらまいた範囲)に持ち上げて誘導します。およそ50cm〜1mくらい持ち上げることが多いです。魚が煙幕の中に群れで集まってきていることを想像し、その中に仕掛けの針を持っていくイメージでいいでしょう。




うまくいくと、魚が針に食いつきます。釣り竿にビュンビュンと当たりがでますので、静かにリールを巻き、船に取り込みます。イメージ通りに魚が釣れると、アジ釣りがどんどん楽しくなってきます。




(写真: このように移動中は、コマセを入れるバケツにコマセカゴをいれておくと便利)


隣の人をマネて釣るカメレオン戦法


私の得意技は、近くで釣れている人のマネをするカメレオン戦法です。この日は丁度、「クニさんの釣り日誌」で有名なクニさんが乗ってましたので、いろいろと参考にさせてもらいました。船釣りでは、陸での釣りと違って他の人と一緒に釣りをします。周りの人とのコミニュケーションが重要になりますね。




(写真: コマセを振り、アジのアタリを待つ筆者。)


ついにアジを釣り上げたぞ


まわりの常連さんはアジを釣り出しています。20センチ超の中型アジのようです。自分にはなかなか釣れないので、かなり焦りましたがついに小ぶりながら最初のアジが釣れました。アジがかかると、グイッ、グイッと力強く竿を引っ張るのですぐにわかります。アジは口がもろく、アタリ(魚の最初の引き)があってもすぐにバレる(外れる)ことが多いので、あまり強引に上げないことが肝心です。




(写真: やっとこさアジを釣り上げた筆者)


反対側に座っていたグループも連れ出したようです。このように仲間で来るとピクニック気分で楽しいですね。はじめて釣りをする人は、船長席の近くに座るのがいいでしょう。わからないことがあれば、すぐにアドバイスを受けることができます。




(写真: 当日一緒だった他のお客さん。道具はすべてレンタルだったが、船長さんの指導をうけ、着実に数をのばしていた)


中には30cmオーバーの大型アジも釣れるので油断は禁物です。私は数回大きなアタリがありましたが、残念ながらバレてしまいました。(大きいアジほど、バレる可能性が高い) その後、小型のアジを10匹前後釣り、30cm弱くらいの中型アジも釣れました。中型になるとアジが太っていて肉厚です。これが船長の言う「下根ブランドアジ」でしょう。




(写真: 太っている中型アジ。釣れた時に金色がかってみえるので、横浜では「金アジ」とか「ブランドアジ」などと呼ばれている)


本日のアジ釣りの釣果


結局、この日は小型アジ15匹・中型アジ3匹・カサゴ1匹・メバル1匹の計20匹でした。自分の家で食べるには十分すぎる量でしょう。中型アジでしたら、5〜6匹もあれば十分ではないでしょうか。釣り時間は正味3時間半でしたが、あっという間に過ぎてしまいました。もうちょっと釣りたいなというぐらいが丁度いいのかもしれないですね。




(写真:釣った魚をボールにあげたところ。新鮮な魚は目が透き通っている)


アジ釣りでは、アジの他にもいろいろな魚が釣れてきます。カサゴやメバルなどのいわゆる根魚をはじめとして、時期によってはマサバ・イシモチ・クロダイなども釣れてきます。運がよければ、ヒラメなんかも釣れることがあります。今日は、大きめのカサゴとメバルが釣れてきました。




(写真:高級魚のカサゴ。アジ釣りをしていてたまに釣れてくる。身がポロッとしていて煮付けに最高 )




(写真:こちらも高級魚の江戸前のクロメバル。煮付けはもちろん、この大きさなら刺し身でも最高ですな )


さっそく釣った魚をおろしてみる


釣った魚は新鮮なうちに内臓を取り除かなくてはだめです。釣った魚でも2日くらいたつと内蔵がどろどろになって、臭みが出てしまいます。魚料理は下ごしらえが肝心です。アジの簡単な下ごしらえの方法をのせておきます。


ウロコと内臓を取る


まずは魚のウロコをきれいに取ります。ウロコをきれいにとったら、アジの胸ビレのところからななめに頭を切り落とします。その後、水を流しながら内蔵と血合いをきれいに洗い流します。ここでちゃんと内蔵を洗い流しておかないと、魚が生臭くなるので注意しましょう。最後に水で洗ながら、ウロコがちゃんととれているか確認します。




(写真:出刃包丁を寝かすようにウロコを落とす )



(写真:胸ヒレのところから斜めに切るように、頭を落とす )



(写真:内蔵を洗い流す前のアジ。新鮮なアジは内蔵の形がしっかりしている )



(写真:内蔵をきれいに洗い流した後。内蔵を取り除けば、鮮度が長続きする 。身が透明なのは新鮮で、ちゃんと血抜きをした証拠)



(写真:ウロコと内蔵を取り除き、頭をおとしたアジ。尾の向きを一緒にして置いておくと次の作業にとりかかりやすい)


大名おろしで三枚におろす


アジのようにそれほど大きくない魚は、頭の方から骨にそって包丁をいれ、背と腹を同時におろす「大名おろし」でいいでしょう。写真のように中骨にそって包丁をいれて、そのまま尾の方までおろしていきます。身を骨にあまり残さずにおろしたい場合は、柳刃包丁(刺身包丁)を使うとよいでしょう。腹の部分は骨がタテに入っているので、すくように切り取ります。


三枚におろす前に、まな板を一度きれいに洗い流しましょう。そのままだと、せっかくの刺身にウロコが残ったり、内蔵の汁で魚が生臭くなったりします。




(写真:アジを大名おろしにする際に包丁を入れる場所 )




(写真:半身を切り分けた所 )



(写真:身を2つに切り分けた所 )



(写真:お腹の部分をすき切る)


選びだしたらキリがない、包丁選び


私が愛用している柳刃包丁は、貝印から販売している「関孫六 碧寿ST和包丁 刺身210mm」です。アジやサバでしたら、210mmで十分だと思います。貝印の関孫六シリーズは、値段も4000円代からとお手軽で、ステンレス製で錆びづらいです。ただ切れ味が落ちやすいので、頻繁に砥石でとぐ必要があります。予算に余裕がある人は、浅草かっぱ橋にある「釜浅商店」の、V金10号のステンレス和包丁がおすすめです。切れ味がぜんぜん違います。




(写真:愛用している柳刃包丁。貝印の「関孫六21cm」 )


骨抜きで小骨をぬき、皮をとりのぞく


アジの身を触ってみないとわからないのですが、アジには中心線にそって小骨があります。この小骨はかなり鋭いので、骨抜きできれいに抜いておきます。面倒くさい場合は、中心線を切り落としてもかまいません。(ちょっともったいないですが)




(写真:身の中心線にある小骨を骨抜きで抜く。骨抜きは包丁でも有名なグローバル社の「骨抜き GS-29」を使用。この骨抜きはかみ合わせがしっかりしているので、抜きやすい)


アジの皮を手でむく


頭側の皮に指できっかけを作り、身をおさえながらあせらず丁寧に手で皮をむいていきます。包丁を使って皮をむくやり方もあります。



(写真:皮を手でむく場合は、お腹の部分の皮が残らないように丁寧にむく)


下ごしらえ完了


この状態までおろしておけば、どんな料理にも応用できますね。冷蔵庫で保存する場合は、サランラップを魚の身にぴちっとつけて、身が空気とあまり接しないようにすると鮮度が長続きします。冷凍にすると身が白く変色するのでやめたほうがいいでしょう。



(左側の身:小骨を抜かずに切り落としたもの  右側の身:小骨を抜いたもの、こちらの方が身が多くとれる)


今晩のおかずはアジづくし


アジの刺身


さっそく新鮮なアジを刺身にしてみました。ワサビもあいますが、アジにはショウガ醤油があいますね。

新鮮なアジは魚臭さがまったくなく、白身の魚のようにすっきりしています。コレステロールを下げる効果もあるそうなので、積極的に食べていきたいですね。



(写真:刺し身にしたアジ。ピンク色の血合いは鮮度がよい証拠。古くなってくると灰色っぽくなってくる)


アジのたたき


アジを軽くきざんで、その身にしょうが汁(大さじ1)・赤味噌(こさじ1)・長ネギ(適量)を混ぜ、アジのたたきにしてみました。

味噌の量はお好みで調整するといいでしょう。しょうがは汁だけを絞って入れるとマイルドな味になります。これだけでご飯がすすみますね。



(写真:アジのたたき。あまりアジは細かくきざまずに、形を残したほうが食感がよい。醤油はいれなくてよい)


アジのみぞれあえ


3枚におろしたアジに塩をふり、20分ほどおいておきます。それから塩を洗い流し、お酢に2時間ほどつけておきます。酢につけている間に、土佐酢をつくり、キュウリのすりおろし(1本分)とキュウリの輪切り(1本分)を用意しておきます。食べる直前に、アジ・キュウリのすりおろし・キュウリの輪切り・土佐酢を混ぜあせて、上にきざんだショウガをのせて完成です。このレシピは新橋の名店「京味」の西健一郎さんがやっていたレシピを元にしました。夏にはぴったりの爽やかな味わいです。さすが西先生ですね。



(写真:アジのみぞれあえ。甘酢がきいていて、箸休めにぴったり。アジじゃなく、白身の魚を使ってもおいしい)


初夏から秋にかけてが、アジ釣りのハイシーズン


これから秋にむけてアジにどんどん脂がのっていきます。特に東京湾のアジは脂の乗りがよく、塩焼きにすると脂がしたたり落ちてくるほどです。船釣りをまだ経験したことない人は、まずはアジ釣りからはじめてみてはいかがでしょうか。友達に釣れたてのアジを配れば、きっと喜ばれますよ。


*この記事内の写真・図表はすべて筆者が撮影・作成したもの


取材協力:

・横浜・新山下「打木屋釣船店」 / www.uchikiya.com

・クニさんの釣り日誌 / http://cuttle-fish.com/kuni/


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(執筆者: ジョナサン・バード ( Jonathan Bird )) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか


情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 [大人の食育]「アジを釣って、晩飯をつくる」