「iPhoneゲームをブラウザで遊べるTombo Platformをリリースしました。いぇい」。『ニコニコ大百科』の生みの親として知られるプログラマーのグニャラくん( @tasukuchan )がCTOを務めるTomboが、iPhoneアプリをウェブゲームとして遊べるプラットフォームを公開しました。なぜこのような物を作ったのでしょうか? グニャラくんに『Twitter』でいろいろ聞いてみました。






『Tombo Platform』は、『Apples to Oranges(A2O)』と呼ばれるコンパイラを利用して、iOSアプリとして作られたゲームをブラウザで遊べる形式で公開できるプラットフォーム。『A2O』コンパイラはiOSアプリのソースを自動でJavaScriptに変換してしまうという、何やらすごそうなコンパイラ。変換を実行する際のスクリーンキャプチャーが動画で公開されています。


a2o: Converting iOS apps into webapps(YouTube)

https://youtu.be/-TDRg2vryiU








現在、『Tombo Platform』には『Mr.AhhH!!』(PONOS)、『パズルプリズム』(PONOS)、『生きろ!マンボウ!』(SELECT BUTTON)の3タイトルが公開中。パソコンのブラウザだけでなく、スマートフォンのブラウザでもプレイ可能になっています。ただし、スマートフォンでは「モバイル機器で実行する場合、メモリやCPUパワーの不足で正常に実行されない恐れがあります」とアラートが表示されます。


ゲームを遊ぶユーザーは、『Twitter』のアカウント認証でログインすることでゲームのプレイが可能。アプリのインストールが不要、『Twitter』などSNSでシェアしたURLからすぐにゲームが遊べる、といった特徴があります。


なぜこのようなプラットフォームを開発したのでしょうか。グニャラくんに聞いてみました。


グニャラくん『Twitter』インタビュー


――なぜこのような物を作ろうと思ったのですか?


グニャラくん:社長(Tombo CEOの紀平拓男氏)は「アプリのインストールが大嫌い」で、ウェブで気軽にアプリを起動できたらいいね、ということでウェブアプリ向けプラットフォームを作り始めました。




※紀平氏はブログで「スマートフォンアプリにウェブ上の自由を与えることが我々のミッション」と主張しています。


僕個人の想いとして。現状の『AppStore』や『Google Play』では公開のための審査が必要で、“自由さ”がなくて息苦しいなあ、と思っていました。


僕は、ウェブ上にいろんな人が投稿した文章などを見るのが好きです。ウェブに公開するのに、審査は必要ありません。そういうゆるさを活かしつつも、いろんなアプリを探すことができる場がウェブ上にあるといいな、と考えます。


コンテンツがないとプラットフォームが成り立ちません。当初はゲームを作ろうという話をしていたのですが、紀平が前回起業した会社が“FlashからHTMLへの変換”を行うソフトウェアを開発していたこともあり、「iPhoneアプリからウェブアプリへの変換」ができたら面白いんじゃない、という話をして、それが実現された感じです。


――どんなアプリでもコンパイルできるのでしょうか。制約などあれば教えてください


グニャラくん:Objective-Cのソースコードがあれば原理上はコンパイル可能です。ただし、Apple側が提供しているライブラリの全ての機能を提供できていません。


現状では、変換を試してみて、提供されていない機能を見つけてライブラリを追加していく、ということが必要です。多くのアプリを変換することによってライブラリが完成すれば、その制約はなくなります。


――現在のウェブブラウザには、どんな機能が足りていないと思いますか?


グニャラくん:スマートフォンのブラウザでは、メモリ不足などの理由によって動作が不安定です。ここが直るといいなあ、と思っています。


“プログレッシブ ウェブアプリ”と呼ばれる、スマートフォンのアプリのようなウェブアプリがあります。これが全ての環境でサポートされるとうれしいです。


参考:

はじめてのプログレッシブ ウェブアプリ(Google Developers)

https://developers.google.com/web/fundamentals/getting-started/codelabs/your-first-pwapp/?hl=ja


――現在、3タイトルのゲームが公開されています。これらはどういう経緯で公開に至ったのでしょうか?


グニャラくん:『生きろ!マンボウ!』については、マンボウの死因がツイートされて、その面白さが話題となっていました。そのツイートのリンクから、インストールなしにゲームが遊べると楽しそう、ということで開発元のSELECT BUTTONさんにお話を持って行き、ご協力いただけました。


『パズルプリズム』『Mr.AahH!!』については、開発元のPONOSさんがiPhone向けの気軽に遊べるゲームを数多く製作しているので、その提供をお願いしました。




※『Tombo Platform』では、ウェブアプリとして公開するiOSアプリを募集中。


――iOSアプリを持っている人が『Tombo Platform』で公開するメリットを教えてください


グニャラくん:インストールなしに気軽に遊んでもらい、アプリのインストールにつなげられます。


今後、広告表示や課金機能を提供する予定です。広告収入のシェアや、直接ゲームのプレイヤーから収益を得られることを目指します。


――今後はゲーム以外のアプリにも対応したいとのこと。どんなアプリが『Tombo Platform』に向いていると思いますか?


グニャラくん:スマートフォンアプリでのみ提供されているアプリを、パソコンで使うことができます。


情報が多いフリマアプリ・ニュースアプリや、細かい操作が必要なまちづくりゲームなどはパソコン上で細かな操作をしたいです。メッセージングアプリも、出先のパソコンのブラウザで気軽に使えると便利そうだと思っています。


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「ウェブゲームをアプリにする」という例はよくありますが、「アプリをウェブゲームにしてブラウザで遊ばせる」というユニークな試み。ブラウザさえあれば誰でも同じ体験が共有できたFlash全盛期のような自由さが、今はAppleやGoogleのプラットフォームによる制約を受けているアプリの世界でも実現することになるかもしれません。今後の展開に注目です。


Tomboプラットフォーム

https://app.tombo.io/


情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 既存のアプリストアは「自由さがなくて息苦しい」 iPhoneゲームアプリをブラウザでプレイ可能にする『Tombo Platform』を公開したTombo CTOのグニャラくんにインタビュー