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読書を必要としているすべての人にお勧めできる一冊を見つけました。
齋藤孝さんの『大人のための読書の全技術』です。
今まで小説、評論文、古典など、本のジャンルによって読み方を分けてきた人は少数ではないでしょうか。私も「速読が良い」と聞けば、ほぼ全ジャンルの本に適用するものだと考えていました。
しかしこの本で「読書の技術」を一つずつ理解していくと、その考えが浅はかだったことに気づき、本の読み方のバリエーションはこんなにも広いんだなぁと感銘を受けました。
今の本の読み方に疑問を持っている皆さんも、おそらく同じ感想を抱くのではないかと思います。
何といっても本書は、あの齋藤孝さんが、これまで読書で培ってきた技術を惜しげもなく披露している贅沢な一冊です。人並み外れた読書量で教育学者として活躍しながらも、ベストセラー作家として数多くの本を出版している齋藤さんが、集大成としてまとめた一冊なので、中身も非常に濃いものとなっています。
本書では、序章と第一章で、読書術が必要な背景と、それを習慣づけるための秘訣についてまとめられています。そして第二章から五章まで、下記の4段階に分けて、それぞれの全技術を展開しています。
タイトルに「全」技術と書かれているとおり、本書を読めば、読書に必要な技術は全てを網羅できることになります。
今回は各章で紹介されている技術について、一つずつ紹介していきます。
本章では「とにかく、より多くの本を読んでほしい」と繰り返し述べており、「同時並行読書術」、つまり複数冊の本を同時に読むことを勧めています。
本を読むスピードはバラバラでよく、一冊をまるまる読破する必要もありません。
実際、多くの本を速読している人のほとんどは、「全ての本を最初から最後まで読む」「一冊読み終わってから次の本へ」などとは考えずに、次々と新しい本を読み始めています。
もしどれを読めばよいか迷ったら、その場で手に取った本を続きから読めばOK。まずは数をこなすつもりで試してみましょう。
手順は下記のとおりです。
こうすることで、引用した言葉を自分のものにすることができて、表現力が身についていきます。また引用したくなる文章を探す過程で、速読力も鍛えられるでしょう。
「引用力」は、教養を身につけるうえで非常に重要なスキルで、「引用ができない人は教養がない」とまで言われています。
齋藤さんも、自身の大学の講義でエッセイの課題を出す際に「必ず引用を入れてください」と指示していると言います。そうすることで、引用なしではつまらなかった文章が、読む価値のある引き締まった文章に変わり映えするからです。
それくらい「引用」は価値のあるスキルで、日頃から意識して使っていく必要があるのだなと感じさせられました。
齋藤さんは、いろんな本を100冊読むよりも、『論語』のような古典を一冊持って繰り返し読むほうが効果的だと言います。
たとえば渋沢栄一は、孔子に傾倒しており『論語』の学びをそのまま日常生活や仕事に応用していたことで有名です。
古典には時代の洗礼を乗り越えてきた普遍的な原理原則が詰まっているため、どれだけ時代が異なろうとも、今の自分の仕事や日常生活に生かすヒントを見出すことができるのです。
最初はとっつきにくいイメージがあるかもしれませんが、古典で原理原則を学べば、死ぬまで人生の指針として自分の行き先を照らしてくれます。読書のコストパフォ―マンスとしては最高なので、長い目で見れば、まず古典を読むべきなのです。
文脈力とは様々な情報や知識を、目の前の状況に合わせて適切に言葉にして、アウトプットしていく能力です。
これは読書によって鍛えることができます。なぜなら読書というのは、つまるところ他人の経験を学ぶことであり、それを自分の言葉として使えるようにするために必要なのが「文脈力」だからです。
仕事の多くはチームで行われるものであり、リーダーには高度な「経験値」が求められます。そして経験値のレベルは「言葉」に現れます。チームのメンバーとともに一つの目標に向かっていくためには、「言葉」によってチームを率いていかなければなりません。
しかし自分一人の経験によって得られた「言葉」など、ごくわずかなものでしょう。読書によって「文脈力」を磨き、他人の経験を自分の言葉と結びつけることができれば、「経験値」を大きく伸ばすことができるのです。
ここまで紹介した読書の技術はほんの一部。本書には、齋藤さんの過去の著書でも何度か述べられている「三色ボールペン」を使ったメモ書きや、その他の技法についても紹介されています。
本の読み方をより一層深めていきたい方は、本書を手に取って、最初から最後までじっくり読んでみることをお勧めします。
古典と同じで、何度も繰り返し読んで「読書の全技術」を身につけてしまえば、これからの仕事や人生はより豊かなものになっていくでしょう。