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(Written by Publisher’s editor)
フェイスブック、ツイッター、インスタグラム…インターネットやSNS上にはたくさんの記事、メッセージ、広告があふれています。
でも、ヒットするものやバズるものはごくわずか。同じようなパッケージでも、売れるものとそうでないものの差は歴然とすることがあります。この違いはなぜ生まれるのでしょうか。
答えは脳にある。これが、今回紹介する『♯HOOKED』の著者であるパトリック・ファーガンの主張です。
この本では、人間の無意識での行動、つまり「つい、買ってしまった。」という状況について分析し、それを10個のマーケティングの法則(HOOK、フック)としてまとめています。
つまり本書には、人々が無意識にフックされてしまう、ハマってしまう、引っ掛かってしまう法則が盛りだくさん、というわけです。
10のHOOKは、脳の無意識の反応に働きかけるために、①気づかせる、②考えさせる、③行動の変化を促す、という3つのステップに基づいて紹介されています。
ここでは10のHOOKの中から一部を紹介します。
この本の表紙にあるような、かわいい子猫の写真。気になる人は多いのではないでしょうか。
猫に限らず、かわいい動物の写真や人間の赤ちゃんの画像などは、人の目を引くものの「テッパン」です。
これはベビースキーマと呼ばれる、赤ちゃんの顔の構図と同じものに対して、「ちゃんと守らなきゃ」といった母性本能が反応するためだといわれています。つまり、「かわいい!」と感情を動かすものには、自然と注意が向いてしまうということです。
また、ヘビのように恐怖を感じるものにも注意が向きやすくなります。それは、気がつかないと生存に関わる危機になってしまうから。
人間には、このように生き残るために反射的に何らかの刺激に対処するための本能がある、これが、#HOOK2「感情をわしづかみにする」の根底にある脳のしくみです。
昨日の昼ごはん、どこで食べましたか? いつもと同じお店になんとなく入った、という人も多いのではないでしょうか。他にも、いつも同じ缶コーヒーを買っているとか、同じスマホの最新機種が出たら気にせずに更新した、なんてことは?
これらに共通するのは、「人間は面倒くさがり屋で、現状維持したがる」ということ。難しく言えば、「現状維持バイアス」が働いているということです。
ここから導き出される法則が、#HOOK6の「ハードルをとことん下げる」です。これ、商売においては結構重要なポイントだったりします。
例えば、小売業の商品陳列で、基本中の基本といわれるゴールデンライン(視線に入りやすく、手に取りやすい範囲のこと)も、この法則と関係があります。
あえて高いところに手を伸ばしたり、低いところにある物を取るためにしゃがんだりするのは面倒なこと。ましてや、スーパーで商品を選ぶときは、「今日の晩御飯どうしよう」とか「今月の食費あといくらだっけ」といった考え事をしていることが多く、集中力も散漫になりがちです。
そんなときは、首を動かさない範囲で視野に入り、かつすぐに手に取れる高さにあるものをつい買ってしまいがちなのです。さらに、そこに「今月のおすすめ」とか「○○もあわせて買うとおトク」なんてPOPまで付けてあったら、「つい、買ってしまう」こと請け合い。
人間はさまざまな条件を分析して賢い選択をするのではなく、怠惰であるということを受け入れた上で、シンプルかつ具体的な提案をすることがポイントです。
「行動経済学」という学問を知っていますか?
「人間は合理的な選択をする」という前提に立つ経済学とは違い、心理学的なアプローチに立って、人は必ずしも合理的に行動しないことに着目した新しい経済学です。
そのなかで頻出するのが「ヒューリスティクス」というキーワード。
ヒューリスティクスとは、経験や勘を頼りにして短絡的に思考することを言います。例えば、ネット上の口コミが高いお店はハズレが少ないとか、専門家がおススメしたものを買ってしまう、とか。先ほどの「人間は怠け者」にも通じる話です。
ヒューリスティクスという現象はさまざまな場面で出くわすのですが、大きくまとめると以下の6つの観点が重要だといわれています。
「希少性」とは、求められている量に対して用意されている量が少ないものに価値を感じるということ。限定○○個や期間限定という文言に弱いのはこのためです。
「権威」とは専門家など、権威を背負った相手に対して本能的に従ってしまうということ。古くは「宮内庁御用達」、近年では「モンドセレクション」「専門家○○監修」に代表されるように、「権威」を感じるワードが入ったものにはポジティブな感情を持ってしまうということです。
これらはすべて「思考回路のショートカット」を狙ったものです。人間の心理は合理的ではありません。このことをうまく使えば、商品開発や、販売戦略に大いに役立てることができるでしょう。
心理学と経済学を組み合わせたものが行動経済学であるならば、心理学とマーケティングを組み合わせたのが、本書『♯HOOKED』というわけです。
マーケティングと聞くと、小難しい理論がたくさん出てくると思う人も多いかもしれません。しかし、その基本はいたってシンプルです。
ドラッカーも「マーケティングの理想は、販売を不要にすることである」と著書の中で書いています。あれこれと商品のよさをアピールしたり、価格競争で安さに訴えるのではなく、「気がついたら売れていた」という状況をつくることこそがマーケティングだ、と。
消費者の側に立って考えれば、「つい、買ってしまった」という状況をつくることこそが究極のマーケティングなのです。
本書のHOOKはさまざまなところで活用することができます。マーケターや広告担当者に読んで欲しいというのはもちろんですが、この本は広く、企画書やプレゼンをする人をはじめ、メッセージを発するすべてのビジネスパーソン必見です。
ぜひ、『♯HOOKED』を読み、本当のマーケティングの極意を実践してみてください。
(Written by Publisher’s editor)