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「経営戦略」なんて経営者にだけ必要な話、と思われがちですが、どんな役職、立場の人でも、知っておくと仕事だけでなくプライベートでも役に立つ重要なテーマです。
とくに夢やキャリアプラン、理想とする生き方のように目指すものがある人にとっては必修テーマといえるでしょう。
なぜなら、経営戦略とは「ありたい姿に近づくための実行プラン」だからです。
「ありたい姿」があるのは、企業だけではなく、個人にとっても同じこと。だからこそ仕事だけでなく、プライベートでも役に立つと言えるのです。
難しく思われがちな経営戦略について、こうしたわかりやすい表現でシンプルに解説し、経営戦略の本質を学ぶことができるのが、『実はおもしろい経営戦略の話』です。
表紙イラストの可愛さに惹かれて手にとったのですが、極限まで無駄を削ぎ落とし、本質部分だけを抽出してまとめてくれているので、退屈な箇所が一つもなく、終始サクサクと読み進められる良書です。
本書では「戦略とはなんぞや」といった根本的な考え方に加え、「ありたい姿」に近づくための手段である「競争戦略」「ポジショニング戦略」「成長戦略」といった基本的な戦略論について、簡潔に解説されています。
個人的に一番興味深かったのは、第2章「歴史に学ぶ経営戦略」。この章では7名の偉人たちのエピソードをもとに、「戦略とはどういうものか、なぜ重要なのか」を教えてくれます。
これが非常に面白くてわかりやすい。
1人目のアレキサンダー大王は、古代ヨーロッパを代表する戦略家。ギリシア北部の古代王国「マケドニア王国」の君主で、ギリシャ、ペルシャ、エジプトといった列強を征服し、インドにまで遠征して領土を広げた伝説的な英雄です。
単なる豪傑ではなく、さまざまな戦略を駆使した知将でもあり、彼を象徴する3つの戦略について解説されています。
象徴的なのは、圧倒的な海軍力を誇っていた宿敵、ペルシャとの戦い。相手の強みに真正面から対抗するのではなく、自分の強みを活かした戦略を立てることで勝利を収めたエピソード。
ペルシャの海軍力の中核は、200隻以上の大艦隊。定石に沿って考えれば、これを打ち破るために200隻以上の大艦隊で対抗する、となるでしょう。
でも、その頃のマケドニアの国力に照らすと、大国ペルシャの大艦隊をしのぐ大艦隊を揃えるのは大変困難でした。
ヒト・モノ・カネといった資源が限られている中、戦いに勝つにはどうしたらよいか。考えたアレキサンダー大王は、得意の「陸戦」を駆使。沿岸にある敵の艦隊給水地を、ことごとく制圧していったのです。
いかに強靭なペルシャの大艦隊でも、船乗りや兵士たちに真水が供給できなくなると、まるで機能しません。アレキサンダー大王は、自軍の強みを活かした戦略で、敵の強みを無効化することに成功し、見事、戦いに勝ちました。
この話は、「限られた資源の中でいかにして勝つか」を考えることに戦略の本質があることを教えてくれます。
強い組織をマネジメントするためには、部下たちのモチベーションを高めるような、ワクワクするミッションの共有が必須です。
アレキサンダー大王は、自らがストイックな生活を徹底することで組織から怠惰を排除するとともに、大きなビジョンを語ることで軍のモチベーションを高めました。
「安楽な生活は奴隷に相応しく、厳しい生活こそ王者に相応しい」という言葉が残されているように、アレキサンダー大王は普段から徹底的にストイックな生活をしていました。
その生活態度を部下である将軍や兵士たちに見せることによって、組織全体から怠惰を排除したのです。
さらに「世界を征服して自らの善政を全世界に広める」という驚くほど大きな夢を語り、軍のモチベーションを高めました。
同じ夢に向かって挑戦し続ける集団だったからこそ、アレキサンダー大王の軍隊は無敵だったのです。
アレキサンダー大王は、戦いに勝った後のマネジメントも見事でした。次のエピソードからはその器量が伺えます。
負かした相手をリスペクトし、敵の圧政に苦しんでいた民衆を解放し、自分の味方をどんどん増やしていったのです。
その結果、アレキサンダー大王の軍が攻めてくると、王様とその配下の軍隊は戦おうとしているのに、民衆はアレキサンダー大王を歓迎するようになりました。なぜならアレキサンダー大王が、自分たちの暮らしを楽にしてくれると信じていたからです。
軍事力によって敵を制圧したら、当然その国の民衆に対しても圧政するものかと思いきや、アレキサンダー大王は、敵国の王よりも歓迎される善政を敷いたのです。
この話について、「大義を掲げて解放者として振る舞うのは、自社と市場との間にウィンウィンの関係を築く戦略に他ならない」と著者は解説しています。
とにかくわかりやすくて面白い内容にまとまっているので、経営戦略について全体像をざっくりと理解したい人はぜひ読んでみてください。
仕事でもプライベートでも、自分の「ありたい姿」に近づくために、本書から「経営戦略」の発想を身につけましょう。