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最低でも週に1回、多いときは週に2〜3回は本屋に足を運び、ビジネス書の新刊をチェックすることが習慣となっている私。
表紙や冒頭文を見て気になった本は、片っ端から「ブクログ」に登録して、読みたくなったタイミングで購入するようにしています。
その習慣を活かして、今月からビジネス書の新刊の中で個人的に気になったものを、既読・未読に関わらず5〜10冊程度まとめて紹介していきたいと思います。
本屋に行く習慣はないけど、話題の本や新刊情報について知りたいという方の参考になれば幸いです。
もう3月も終わってしまうタイミングではありますが、3月の新刊で気になったのは次の10冊!
ライターとして気になった一冊。「あなたの評価は、あなたの書いてきた文章の積み重ねでできている」という、ちょっとドキッとするコピーが目を引きます。
作家やライターのように「書くこと」を仕事にしている人に限らず、メール、企画書、議事録など、あらゆるビジネスパーソンが日常的に文章を使って人を動かし、仕事を進めています。しかし国語が苦手、センスがないと諦めて、文章力を高める努力を怠っている人が多いはず。
本書では、人を動かす文章を書くには、文学力もセンスも必要ないとして、「理性に訴えるロジカル・ライティング」と「感情を動かすエモーショナル・ライティング」という、2つの文章テクニックを紹介しています。
個人的に「ロジカル・ライティング」の方は意識して書いているつもりですが、「エモーショナル・ライティング」の方はほとんど気にしていなかったので、本書を読んで勉強したいと思いました。
自分の文章力に自信がなく、「文章によって人を動かせていない」「説得力のある文章が書けない」と感じている人におすすめです。
ビジネス系ニュースアプリ「NewsPicks」の人気連載「世界王者の風景」を書籍化した一冊。
バリスタ、DJ、プロゲーマーなど、多くの人は世界一を決める大会があることさえ知らないであろうマイナーな分野で「世界王者」となった10人の、生き方や仕事に対する向き合い方についてまとめられています。
どんなジャンルであれ、世界王者といえば「天賦の才に恵まれた別世界の住人」というイメージがあると思いますが、本書に登場する10人は、身体能力が突出しているわけでも、英才教育を受けたわけでもなく、世界に挑む前の時点では、どこにでもいるような「普通の人」だったといいます。
そんな彼らが世界王者になれたのは、時間が経つのを忘れるほど対象に熱中し、周囲の目を気にすることなく没頭し続けられる圧倒的な熱量があったから。
今、ひと目を気にせず没頭できるものがない人や、やりたいことはあるけど本気で取り組めていないと感じる人は、新しい一歩を踏み出す勇気がもらえる一冊です。
最近「GRIT(グリット)」=「やり遂げる力」というキーワードが、ビジネス書の中でよく使われるようになっています。生まれ持った才能やセンスのような身も蓋もない成功要因と違って、心構え次第で誰もが身につけられそうな力だから注目されるのだと思います。
本書では32人のトップリーダーたちへの取材を通して、「これまで一番つらかったことは何か」「そのことにどう向き合い、乗り越えたか」を問い、彼らの共通点として「達成力(やり遂げる力)」があることを見出しました。
人は誰しもが逆境を経験するからこそ、日本を代表するトップリーダーたちが、いかにそれを乗り越え、一事をやり遂げたのかというストーリーは非常に有意義な情報です。
ユニクロの柳井正さん、サントリーの新浪剛史さん、元LINE社長の森川亮さんといった、ビジネス書では定番の面々に加え、東京都知事の小池百合子さん、冤罪で5ヶ月近く拘置所生活を経験した元厚生労働事務次官の村木厚子さん、「獺祭」で新しい日本酒ブームを作った旭酒造会長の桜井博志さんなど、これまでビジネス書で目にする機会の少なかったリーダーも多数登場します。
質問とそのやり取りがシンプルにまとめられていてとても読みやすいので、気になる人物だけでもサクッと目を通してみてください。
達成力~やり遂げる力~ トップリーダーが教える「成功の条件」
「教育」をテーマにした堀江貴文さんの新刊。毎月のように本を出している堀江さんですが、いつも違った切り口で世の中の問題点を言い当て、その解決策をシンプルに提示してくれるので、どれを読んでも面白くて痛快です。
本書では「やりたいこと」があるのになかなか行動に移せない人たちは、学校教育によって「洗脳」されていることに根本的な原因があると指摘し、その洗脳を解くための考え方を示してくれます。
どんなに現状に不満があっても、どんなに理不尽な状況に置かれても、それを耐え忍ぶことを美徳とし、我慢の先にこそ「成功」が待っているかのように思い込んでいるのは、なるほど言われてみれば異様な状態です。
なぜ、自分の欲望を抑えつけるような「我慢」や「準備」は積極的にするのに、一番やりたいはずの「行動」には至らないのか? という堀江さんの問いはぐうの音も出ないほどの正論で、これまでの価値観をガラッと変えてくれるでしょう。
変化のスピードが速い現代では、従来のような「いざという時」のために、役に立つのかどうかもわからないことを我慢して学び続けるような「貯金型」の勉強ではなく、未来を先読みし、自分が何を求め、どんな社会でどう生きたいのか考え抜く「投資型」の勉強こそ重要です。
まずは本書を読んで、これまでの教育による洗脳を解き、シンプルな発想と行動力を手に入れましょう。
すべての教育は「洗脳」である~21世紀の脱・学校論~ (光文社新書)
本書は『Think Simple アップルを生みだす熱狂的哲学』の著者であり、広告のクリエイティブディレクターとしてスティーブ・ジョブズと12年仕事を共にし、「Think Different キャンペーン」やiMacの命名など、倒産の危機にあったアップルの復活を支えたケン・シーガルの最新刊です。
今作では、ジョブズのようなシンプル哲学を貫き、圧倒的な価値を創出する世界の企業を、規模や業種に縛られず多数取材し、優れたリーダーはいかに複雑化を退け、「シンプル」を貫いているのかを解き明かしています。
「シンプル」を追求する過程は必ずしもシンプルであるとは限らず、誰にでもできる簡単な仕事ではありません。
だからこそ「シンプルさ」はビジネスにとって最強の武器となり、企業に驚異的な成長と活力を与えてくれるといいます。
企業の経営者やマーケターに限らず、日々の仕事や生活が複雑になり過ぎていると感じる人は、本書からシンプル思考を学びましょう。
最強のシンプル思考 最高の結果を出すためのたった一つのルール
何もないところから何かを生み出すという意味の「ゼロイチ」という言葉。しかしこの「ゼロイチ」というのは、そもそも本当に何も無いところから発想が生まれるのだろうかと疑問を呈し、「模倣」することの重要性を教えてくれる一冊です。
たとえばイノベーションの象徴とも言われるアップルでさえ、実は模倣がとても上手な企業と言われているのは有名な話。マッキントッシュのグラティカル・ユーザー・インターフェース(GUI)やマウス操作は、米ゼロックスのパロアウト研究所で開発されたものだし、iTunes Music Storeの立ち上げにはNTTドコモのimodeが参照されたと言われています。
実際、スティーブ・ジョブズ自身も「素晴らしいアイデアを盗むことに我々は恥を感じてこなかった」という言葉を残しており、模倣することについて必ずしも否定的ではありませんでした。
既存の技術を新しいコンビネーションで結びつけることの重要性を説き、「模倣」を「創造」に変える方法を体系的に示してくれる名著です。
模倣の経営学 実践プログラム版 NEW COMBINATIONS 模倣を創造に変えるイノベーションの王道
ちなみに、本書は2012年に日経BP社から発行された『模倣の経営学』に「実践解説」が大幅に増補されたものです。
米グーグルの経営層が書いた本はいくつも出版されていますが、日本法人の経営層が書いた本は珍しいと思い、気になった一冊。著者は、グーグル日本法人の専務執行役員CMOである岩村水樹さん。
今や「世界一働きやすい職場」ともいわれるグーグルですが、岩村さん自身がワーキングマザーとして奮闘していた頃の東京オフィスでは、アメリカ本社では当たり前のようにあるマザールーム(搾乳を行うための個室)もなく、母親としては必ずしも働きやすいオフィス環境ではなかったといいます。
働く女性たちにとって、グーグルをより働きやすい環境にするために「Woman@Google」というグループを立ち上げた岩村さんは、その後これを「グーグルだからできた」で終わらせるのではなく、日本の企業全体へ広げるべく、働き方を変えるためのプラットフォーム「Women Will」プロジェクトを発足させます。
これはGoogleのテクノロジーやチームの力によって「できること」を増やし、これまでのように「ハードに働く」ことが評価されていた状況から、クリエイティブに「スマートに働く」ことが評価される社会へと転換させること、すなわち「ワーク・スマート」を目指すプロジェクトです。
電通の過労自殺事件を機に、「ハードに働く」ことに対して社会的にも厳しい目が向けるようになった今。グーグルが進める「働き方改革」と「人生を多様化する働き方」を知ることは、現在の働き方を見直し、未来の働き方を考える上でとても参考になります。
ワーク・スマート –チームとテクノロジーが「できる」を増やす
ヤフーの人事責任者である本間浩輔さんが、就任以来、社内への浸透を進めてきた「1on1」ミーティングの技法について解説した一冊。
「1on1」ミーティングとは、「わざわざ定期的に」上司と部下との間で行う1対1の対話のこと。これは多くの企業で実施されている「面談」とは少し異なり、人材育成を効果的に行うための「部下のための」ミーティングであり、ヤフーでは週に1回30分、この「1on1」を行っているといいます。
マンガやスクリプト(対話の文字化)によって、「1on1ミーティング」とはどのように行えばいのか、上司にとっても部下にとっても時間を割く価値があると感じられるようにするために心がけるべきポイントは何かについて、わかりやすく教えてくれています。
上司と部下の関係に限らず、同僚や友人から仕事の相談を受けたときに、どのようなコミュニケーションを心がけるべきかについても役立てられる良書です。
ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法
「努力と才能は報われる」という考えを「幻想」と言い切り、成功にまつわる誤解を暴くとともに、偶然や運とどのように付き合うべきかについて語られた一冊。
著者は「実力主義」という言葉によって、成功や失敗がしばしば個人の力がおよばない要因(つまり運や偶然)によって決まることが覆い隠されてしまっていることを指摘します。
多くの成功者は、自分の成功を運によるものだと思いたくないため、成功はいつも後追いで理由がつけられ、合理化されてしまうからです。
もちろん才能と努力なしに成功するのは難しいことだし、「成功はすべて運にかかってるから努力しても無駄」ということはありえません。
しかし「一番成功する人は、一番有能な人ではない」「才能と努力が劣っても、幸運な者が勝者になる」という現実を直視することは、ささいな偶然や運に目を向け、感謝することの重要性に気づくきっかけにもなります。
「自分は努力が足りないから、才能がないから」という理由で成功をあきらめ、ささいな偶然が人生を変えるという現実を信じられなかったり、自分の恵まれた環境に気づかずにいる方は、ぜひ読んでみてください。
政治家や芸能人のスキャンダルのスクープを連発し、世間を騒がし続けている週刊文春。個人的に、これまで文春の扱うゲスネタには否定的な立場だったのですが、本書を読むとその見方がガラッと変わってしまいました。
というのも、編集長をはじめ現場の人たちが、どのような哲学やこだわりを持って取材するネタを決め、どのように人脈を築いて他社には取れないスクープを取ってきているのか、そのリアルな内情を知ることができるからです。
世間から注目を集める企画や、人がお金を払おう思うコンテンツはどのようにして作ればいいのか? 雑誌が売れない時代に生き残るためには、どのようなビジネスモデルを構築していく必要があるのか? など、出版ビジネスやコンテンツビジネスの本質まで語られていて、メディアを運営する立場としてとても勉強になる一冊です。
ライター:渡邊