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たしかに経理部門の業務は以前より効率的になるかと思いますが、経理が完全に無くなることはないと考えます。
仕訳やデータ入力、あるいは資料と資料が一致していることを確認する「バウチング」などの単純作業は必要なくなると考えられていますが、最終的な数値のチェックは必ず人の目で行わなければなりません。
つまり、ハードの省力化はできても、ソフトの省力化は難しいということです。
人の目で最終的なチェックを行うことにより、その資料から将来の構想がみえてくることもあるでしょうし、そうした判断はデジタルで置き換えることはできないでしょう。
それでも、これまで経理にかけてきたリソースの多くを削減することができますので、これからは空いた時間を利用して、人間がやるべき判断や戦略的な部分にリソースを振り分けていくのが得策でしょう。
つまり、これからの経理担当者は、単純作業をこなすことから、知恵を活かした仕事内容へとシフトしていくことが求められるのです。
「経理」という仕事自体はなくならないものの、今後はその仕事に求められる内容自体が変わっていくというのが小林氏の考える「経理DXの先にある未来」なのでしょうか。
そこに求められるのが、経理部門における「知恵と経験」なのだとすると、すでにそうした力を身につけている経理担当者であれば、時代が変わっても経理という仕事を失うようなことはないのでしょうか。
小林氏は、このように楽観的に考えている経理担当者にとってはある意味ショッキングな言葉を続けます。
(小林氏)
ただし、今後はセキュリティ的な面で考えても、一部の経理業務は外部のプロに任せた方が安全だと考えています。
今まで企業の情報は紙で保存され、鍵付きのキャビネットや金庫に保管していました。
しかし、電子帳簿保存法への対応も含めて今後ますます社会全体のDXが進み、デジタルでの取引量が増える事が予想されます。
今までの「1対1」のセキュリティではなく、「1対多」のセキュリティに対応しなければならないのです。
この時、これまでの物理的な保管に傾倒していた知識と経験ではなく、膨大な量のデータという「無形の情報」を扱う経験が必要になります。
そうしたデジタルデータの取り扱いに長けた人材が社内で確保でき、かつ強固なインフラセキュリティを構築できるのは、一部の大手企業に限られてしまうのではないでしょうか。
多くの企業にとってはデジタルデータの取り扱いという「知恵と経験」、さらには時代に即した「スピード」を兼ね備えた経理部門を作り上げる事は、かなり難しいミッションになるはずです。
それであれば、経理業務自体を信頼できる外部のプロに任せ、自社ではその分のリソースをより生産性の高い、本業に即した業務に振り分けるほうがはるかに効率的だとも考えられます。
実際に当法人では経理、労務における個人情報など、機密性が必要な情報を取り扱っており、そこを信頼して多くのクライアントが経理業務そのものを当法人にアウトソーシングしてくれています。
自社の経理部門をアウトソーシングに頼らず、正統にDXしていくために求められる力は「知恵×経験×スピード」だと、小林氏は語ります。
その真意はどこにあるのでしょう。
総務省はAIの新規事業創出効果により、新しく創出される職業のタスク量が増加すると予想しています。
つまり、無数のテクノロジーで経理をDXすることで、これまでの単純作業を繰り返す経理業務はなくなるかもしれませんが、経理部門の仕事がなくなることはなく、むしろ新たな業務が生まれてくるのです。
そこで新たな成果が生まれることこそが、DX時代の経理が持つべき付加価値と言って良いでしょう。
ただし、経理に新たな付加価値をつけるためには、「知恵×経験×スピード」といったスキルが重要になってきます。
(小林氏)
とても抽象的な話になりますが、「知恵」とは積み重ねてきた経験や判断力によって生みだされる「課題解決能力」のようなものです。
従来の経理部門は専門的な知識を必要としていましたが、この知識はAIなどのデジタル技術により必要がなくなるでしょう。
これは我々会計士や税理士でも同じことが言えます。
例をあげると最近の会計ソフトは進化し続けており、確定申告の大まかな部分は自動化されてきています。
つまり、これまで我々経理事務所などが担当していた確定申告代行などの業務は、わざわざ外注する必要がなくなるということを表しています。
しかし、だからといって当然のことながら、AIが進化した未来に我々の仕事がなくなるとは考えていません。
AIは正確な申告書を作成することはできても、それをもとにクライアントに経営アドバイスをすることはできないでしょう。
仮に数字上の問題点を指摘して、どのようにすれば数字が改善するかの案を提示する事ができたとしても、それを自社のビジネスモデルの中でどのように改善していけば良いのかまでは、AIがアドバイスできるような未来はこないはずです。
むしろ自動化が進むと個性や特徴がなくなり、「画一的」な世界が訪れてしまうのです。
もちろん、今後のビジネス界は大変難しい世界になりますが、だからこそこれからは個性を出す「知恵」が必要です。
知恵を得るためには裏付けとなる経験を積み続け、課題解決能力を上げるための「人間力」を高める必要があります。
未来の経理・財務部はこれからの世代の方たちが、どのようにデジタルを活かしていくのかスピード感を持って取り組むことが重要です。
デジタル化が進んだからといって、人がいらなくなるということではありません。
デジタルを活用しつつ、人間としての付加価値をどのようにつけていくのかを考え、行動し続け、ビジネスパーソンとして活躍し続けるために求められることこそ、「知恵×経験×スピード」の三拍子だと、私は考えます。
そうした掛け算の力を持った人材こそが、AIでは代替できない「人間力」を持った人材として、これからのデジタル社会では求められてくるのではないでしょうか。
デジタルを活用し効率的になった経理部門の将来は、AIには持ちえない創造性を含んだ「人間力」が重要だと語る小林氏。では、これからのビジネスで求められる「人間力」の本質はどこにあるのでしょう。
最後に、石井氏と平氏に伺ってみました。
(石井氏)
手前味噌になってしまいますが、代表の小林はまさしく「人間力」があると感じています。
小林は常にクライアントの課題に対して真摯に向き合い、培われた経験をもとに課題を解決して、クライアントから信頼を得ています。
社内でも現場の声を吸い上げ、時にはクライアントに対して提案や決断もしてくれるので、小林がいるだけで安心感や包容力を感じられます。
まさしく人間力やオーラがありますね。
(平氏)
これは経理のDXを進めるうえでも共通して言えることで、社内外の現場担当者と真摯に向き合い、意見を吸い上げてより良い形に進めていく統率力が、人としての重要な部分なのではないでしょうか。
そのためには日頃から自社や部門にとっての課題を認識して、小さな経験でも良いので行動し、経験と信頼を積み重ねて行くことこそが、これからのビジネスパーソンに求められる重要なスキルとなってくると感じます。
ここまで全3回にわたって「経理DX先にある未来」をテーマに、税理士法人ユナイテッドブレインズの3氏にお話を伺ってまいりました。
インタビューを通して感じたのは、「経理部門のDXとは、単に既存の業務をデジタルに代替することではなく、1人ひとりがデジタルを活用していくことで、より価値のある経理チームへと進化する」ことを意味するだということです。
進化するためには「知恵×経験×スピード」が重要であり、なによりも「人間力」のある人材が求められる。
これは、経理をDXする際だけに留まらず、これからの時代、企業が継続して成長するために必要な要素ではないでしょうか。
変化が益々激しくなるこれからの時代において、3氏の言葉は、どれも時代の流れの核心をついた言葉のように感じられました。
筆者もこの取材を通して改めて、経理のDX推進のカギとなる「人間力」について考えさせられました。
本特集の読者の方にもこの重要性が伝わり、貴社の経理DXに求められる人間力を考えていただけたなら幸いです。
ぜひ、全3回の当連載記事をご参考に、経理部門のDX、ひいては貴社のビジネスモデル変革のために何ができるかを考えるきっかけとしてください。
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The post 【業界インタビュー】経理DXの先にある未来|ユナイテッドブレインズ (後編) first appeared on DXportal.