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マーケティングとは、ひとことで言えば「商品やサービスが売れる仕組みづくり」のことを指しています。
そして、マーケティングDXとは、その仕組みをAIやクラウド等のデジタル技術やデータを活用して「変革」していくことです。
技術革新と生活スタイルの多様化などで目まぐるしく移り変わる現代の市場において、企業が競争優位性を獲得するためには、現在の集客から販売までの流れを手直しするだけでなく、仕組みそのものを大きく変え、新しいビジネスモデルとして構築していかなければなりません。
そこでまずは、企業のマーケティングDXについて、その重要性や目的を解説してまいります。
リアル店舗での販売に加えて、ECサイトをはじめとするインターネットマーケティングが始まって以来、顧客の消費導線は多様化してきました。
それに対応して、企業の販売チャネルや販売方法も多様化・複雑化しています。
こうした傾向は、リモートワークが普及したことによる消費者行動の変化とも無関係とは言えないでしょう。
さらに、現代の消費者は「モノ」よりも「モノが持つストーリー」、つまり「コト」を重視するようになり、商品やサービスに求める需要は日々変化し続けます。
こうした多様化・複雑化、そして急速に変化し続ける顧客行動に柔軟かつ迅速に対応していくには、従来のマーケティング手法では難しいでしょう。
そこで、俄然注目を集めているのがマーケティングDXです。
経済産業省が発表したDXレポートでも「2025年までにDXに取り組まなければ、企業は存続できない」と警鐘が鳴らされているように、あらゆる分野でDX推進に取り組むことは、もはや喫緊の課題です。
当然、企業のマーケティング活動においても、これまでの仕組みに手を加えていくだけでなく、DX推進によって新しく変革したマーケティングの仕組みの導入が求められます。
全ての企業がマーケティングDXに取り組まなければならない時代は、もうすぐそこまで迫っているのです。
マーケティングDXの目的は、前項で解説したように多様化・急変化する顧客行動に対し、データ分析とデジタル技術を有効に活用して、商品やサービスを改善につなげ、結果として新規顧客の獲得や収益アップを実現することを目指しています。
デジタル技術を活用すれば膨大な顧客のニーズを継続的に分析できるため、顧客体験を改善しやすくなります。
顧客体験の改善とは、顧客が商品を購入するまでの過程を強化することでもありますので、直接的な売上アップに繋がることが期待できます。
ただし、マーケティングDXの目的は既存のビジネスを拡大するだけではありません。
マーケティングDXで収集し、分析したデータをもとに、ビジネスモデル自体を含め、組織や業務プロセス、企業理念や文化そのものを変革させ、競争優位性を確立することを見据えた施策でもあるのです。
デジタルマーケティングとは、デジタルを活用した様々なマーケティング施策を指します。
これに対してマーケティングDXは、デジタルを活用してマーケティングを「変革」させていくことと言って良いでしょう。
つまり、マーケティングDXとデジタルマーケティングは、デジタル化やデータを利活用しているという点においては同じですが、その先に「変革」という明確なビジョンがあるかどうかという点に大きな違いがあるのです。
デジタルマーケティングの段階では、デジタルの活用は行っても、変革までは目指していません。
しかし、マーケティングDXはデジタルとアナログの両方を含み、さらに多様化する販売チャネル全体のマーケティング施策を組織として運用し、それを最適化し、時には新しく組み直すこともビジョンに含まれているのです。
デジタルマーケティングであれ、マーケティングDXであれ、その基礎となる部分に「データマーケティング」があります。
データマーケティングとは、顧客のデータを収集・分析し、売上と利益を追及することです。
顧客の心理や行動の手がかりとなるデータには、購入履歴やサイトの閲覧状況、GPS情報など対象によって様々な情報が含まれます。
これらのデータをインターネットを介して「デジタル化し分析して利活用する=デジタルマーケティング」することで、あらゆる場面で活用できるのです。
そして、データマーケティングをもとにしたデジタルマーケティングを活用し、さらに進化させて既存の仕組みを変革していくのがマーケティングDXと言えるでしょう。
企業がマーケティングDXの特徴を理解することで、マーケティングDXの重要性が具体的に見えてくるはずです。
では、マーケティングDXを推進することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
マーケティングDXを導入することで、外部環境が変わっても適切に順応して素早い対応が期待できます。
外部環境とは、企業の活動を取り巻く全ての要素を指します。
例えば、近年では新型コロナウイルスのまん延による市場の変化や、スマホアプリの普及による顧客行動の多様化などが、多くの企業に影響を与えた外部環境の変化と言えるでしょう。
現代社会において、ビジネスの外部環境は日々大きく変化し続けています。
急激に変化し続ける市場の動向や消費行動を柔軟に捉え、迅速に対応していくためのベースとして、マーケティングDXでは高速にPDCAを回す手法が基本にあります。
データ分析と改善を小まめに繰り返すことで、継続的に仕事のやり方や仕組みそのものを時代に合わせて変革し続けることができるのです。
マーケティングをDXする場合であっても、「誰に」「何を」「どのように」販売するのかといった、顧客の需要を明確に分析し活用するマーケティングの基本的な考え方そのものを忘れてはなりません。
そうすることで、マーケティングDXのメリットである、顧客1人ひとりに最適化した顧客体験が提供できるのです。
例えば、ECサイトで戦略的に販売するには、UI(ユーザーインターフェイス:ユーザーと機器との接点)やUX(ユーザーエクスペリエンス:ユーザー体験)を常に改善し続ける施策が重要でしょう。
顧客目線のデザインや機能を工夫することで、ユーザーにストレスを感じさせずに購入ボタンまでの導線を引くことができます。
マーケティングDXでは、得られたデータを分析・活用することによって、購買までの顧客の気持ちや行動を想像しやすくなりますので、顧客体験を最適化するための戦略が立てやすく、企業の信頼を積み重ね、リピーターを増やすことに繋がってゆくのです。
マーケティングDXでは、膨大なマーケティングにかかわる業務をデジタルに置き換えることで、単純作業を自動化し、省人化できます。
その結果、より付加価値の高い業務に人的リソースを投下できるようになるのです。
例えば、ファミレスの配膳ロボットや病院のAIチャットボットなどは、オフラインで「接客」にかかわる単純業務のパートをこなしながら、同時にデータ収集と分析を行うことができます。
AIに業務を自動化させることで従業員の負担を軽減させ、人の力が発揮できる業務にリソースを振り分けることにより、より生産性の高い業務フローへと変革できるのです。
様々なITツールを用いて働き方を変革することは、マーケティングをDXさせる合理的な施策と言えるでしょう。
企業のIT化が加速すると、大量のデータが蓄積されるようになります。
これらのデータを収集・分析することで、実施した施策を定量的(客観的)に判断できるようになるのもマーケティングDXのメリットです。
データにもとづく意思決定は、属人化が起こりにくいといった特徴があります。
属人化が起こると、業務が他の人に見えづらくなるため、担当者に何かがあった場合に業務に大きな支障をきたす原因にもなりかねません。
そうした属人化の問題点を解消できることは、業務を効率化するといった点においても大きなメリットです。
また、DX推進のカギを握る手法として、データにもとづいて意思決定を行う「データドリブン」が注目を集めています。
データドリブンとは、収集したデータを分析し、企画の立案や未来予測といった経営にまつわる様々な意思決定を行う手法を指しています。
経営陣の経験や感覚に頼るのではなく、データを意思決定の中心に位置づける手法は、今後のビジネスでますます注目されていくでしょう。
マーケティングDXにより収集・分析したデータをもとに、データドリブンの手法を取り入れることで、経営の場面で迅速かつもっとも効率的な判断ができるようになり、変化の激しい時代にも取り残されることなく、その時の顧客ニーズに合った施策が行えるようになるのです。
では、マーケティング施策の一環としてマーケティングDXを導入するには、どのようなことに取り組めば良いのでしょうか。
現在、日本企業のDXが進まない原因の1つには、失敗への恐れがあります。
マーケティングDXに未着手な企業においても、この失敗への恐れがあるのではないでしょうか。
そこで本章では、マーケティングDXの問題と課題を提示しつつ、解決のためのポイントを考えていきます。
具体的な問題と課題、解決策を学ぶことで、失敗への恐れを克服していけるのではないでしょうか。
マーケティングDXを推進することは、ある意味で業務内容を複雑化してしまうといったデメリットも内包しています。
例えば、広告効果やアクセス解析、あるいは顧客の購買などあらゆるデータが収集できるのはマーケティングDXの強みですが、その反面、それらのデータの分析や利活用は簡単なものではありません。
膨大なデータをうまく利用することができなければ、マーケティングDXは効果を発揮しないどころか、データの分析に膨大なリソースを割かれて業務全体にマイナスのインパクトを与える懸念すらあります。
戦略的なマーケティングを目指して進めた施策が、結果的に業務の複雑化を招き、効率を落としてしまっては本末転倒です。
また、DX推進を目指す企業がECサイトを導入して販路拡大を目指したところ、リアル店舗での売上が減少してしまうというような事例は少なくありません。
こうした利益相反が起こってしまうことは、マーケティングDXを推進する上での大きな課題です。
そのまま放置しておいては、これまで現場を支えてきた店舗社員のモチベーション低下や企業への反感を招く可能性もあります。
マーケティングDXでは時として業務間、部門間など様々なレベルで利益相反をもたらす可能性があるため、全社的に売上評価基準を設けてこれを調整しなければなりません。
マーケティングDXを推進することでどのようなベネフィットを得られるのかなど、経営陣は従業員を含む全てのステークホルダーに情報を開示する必要があります。
マーケティングDXの推進には、ある程度のデジタルリテラシーが必要です。
闇雲にツールを導入するだけでは、デジタルリテラシーを持たない従業員が新しいシステムに対応できず、現場に混乱を招いたり、従業員の反感を買ってしまい、かえって生産性が落ちてしまうといったことも可能性がないわけではありません。
マーケティングDXは、販売部門など特定の部門や部署だけが対応すれば良いわけではなく、会社全体で取り組まなければ成功はありません。
マーケティングDX推進のためには、プロジェクトへの全社的な理解が必須条件なのです。
この点を軽視して、DXを押し付けると、期待通りの結果が得られないどころか、マイナスの影響を及ぼす懸念があることには注意が必要でしょう。
前項でも触れた通り、マーケティングDXの成功には、マーケティングの知識とスキルだけではなく、デジタルやITへの理解、データドリブンなどの知識や技術が必要となります。
データの分析や利活用に関する専門知識や技術を持つ人材を採用したり、社内のデジタルリテラシーを高めたり、現場をサポートできる仕組みづくりができる人材の確保は、マーケティングDXには欠かせません。
しかし、現在日本でDXが遅々として進まない理由のうち、一番大きな問題となっているのがITやデジタル、データの取り扱いに長けた「DX人材の不足」です。
経済産業省の試算によると、2030年にはIT人材が約79万人不足すると言われていることからも、、日本企業におけるデジタルを扱える人材不足の深刻さは明らかでしょう。
深刻な人材不足は企業のIT人材の採用活動を難しくさせており、知識やスキルを持つ人材がいない企業が社内の人材のみで内製化によるマーケティングDXに取り組むことを困難にさせています。
これに対応するためには、全ての従業員がデジタルリテラシー、そしてDXリテラシーを身につけるような育成プランを策定しなければなりません。
マーケティングDXやIT育成を担える人材がいない場合は、一部業務の外注化を含めて、プロジェクトチームの組織化が重要となってくるでしょう。
マーケティングDXの構築は、戦略的に予算を投下していく必要があります。
データ収集や分析にはITツールが必須です。
新規開発をする場合だけでなく、既存のツールを利用する場合でも当然コストがかかりますし、外部のサポートを得る場合は外注費が発生します。
どのような形で施策を行うかにより予算規模は大きく異なりますが、、実装までには協業企業への外注費を含めてそれなりの額の予算が必要となるのです。
予算を抑えるためには社内の人材を中心にプロジェクトを進め、外注費を抑えることが考えられるでしょう。
実際に大手企業の一部では、マーケティングDXに強い人材を外部から公募するケースもあります。
ただし、前述の通り、この分野の人材不足であるため、人材確保は一筋縄ではいきません。
しかし、中長期的な視点で考えた時に、マーケティングDXは予算を投入するだけのメリットがあるのは、紛れもない事実です。
マーケティングDXの推進には、10年先の市場やサービスを見通して、それに対応していくような戦略的な施策が求められており、長期的な目的から逆算して戦略的に予算を立てていく必要があるといえます。
企業の販売活動を根本から変える可能性を秘めたマーケティングDXについて、その目的とメリット、さらには課題について解説しました。
マーケティングDXは、今では販売活動にマーケティングの概念を導入している多くの企業が、率先して取り組んでいる施策になっています。
今この時点でマーケティングDXに取り組んでいない企業は、競合他社と比べて競争力が不足していると言っても過言ではないでしょう。
現時点で未着手の企業においては、この機会にマーケティングDXの重要性を理解して、競合優位性確保のために価値ある一歩を踏み出してみてください。
The post マーケティングDXが企業の販売活動を変える!目的とメリット、課題とは? first appeared on DXportal.