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近年、日本における女性の社会進出は確かに進んでいますが、グローバル基準で比較すると大きな遅れを取っていると言わざるを得ません。
世界的にみた日本女性の活躍度合いと、現在の取り組みについて解説します。
上図は、グローバル社会における女性管理職・役員比率の国際比較です。
日本は、女性人口に占める就業者比率こそ51.8%と他国よりも若干高い数値になっているものの、管理職に従事する人の割合は13.3%と、調査対象国の中でも最下位の数値に甘んじています。
また、役員に占める女性の割合についても10.7%に留まっており、DX先進国でもある欧米諸国と比較してみるとその差は顕著です。
また、国会議員(衆議院議員)に占める女性の割合は、2020年時点においてもわずか9.7%に過ぎず、ここ30年で大幅に上昇した諸外国と比べても、日本の数値の低さは一目瞭然です。
働く女性の割合は増えているにも関わらず、女性の管理職や政治家の数が少ないことは、そのまま日本女性が社会の中心や意思決定の場で活躍しづらい状況であることを物語っているといえるでしょう。
当然ながら、女性の社会進出とは、単に社会の労働力不足を補う労働力として女性を動員することではありません。
男性中心に作られてきた既存の社会構造の変革も含めて、性差にかかわらず、1人ひとりが自分の能力を発揮し活躍できる状況を実現してこそ、真の意味で「女性の社会進出」といえるのです。
先に見た通り、残念ながら日本における女性の社会進出はまだ道半ばといえます。
しかし、日本でもこの状況に対してただ単に手をこまねいてみているだけではなく、官民が協力して様々な施策が取られています。
グローバルな視点で見ても、日本では女性が社会で活躍することが遅れているという課題に対応するために、日本政府は内閣府に「男女共同参画局」を設置し、「男女共同参画社会」の推進に取り組んでいます。
男女共同参画社会とは、「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会(引用:男女共同参画局公式ホームーページ)」です。
これは男女共同参加社会基本法(第2条)として法令の条文にもなっており、日本が目指すべき社会像だといえます。
男女共同参画社会基本法は1999年6月にはすでに公布・施行が行われており、基本理念は次の5つの柱です。
こうした考えをもとに、国・地方公共団体及び国民の役割(責務、基本的施策)もそれぞれ定められており、性別にかかわらず、職場や家庭、地域といった、様々な環境で隔たりなく活躍できる社会の実現のための取り組みを目指しているのです。
さらに内閣府では、「女性デジタル人材育成プラン」を打ち立てています。
「女性デジタル人材育成プラン」とは、DXなど企業のデジタル産業への変革が求められ、デジタル人材の需要がますます高まる中、デジタルスキルを有する女性の人材が少ない点を踏まえて、女性のデジタルスキル習得支援やデジタル分野への就労支援、全国各地域にこの育成プランの周知・啓発を実施する取り組みです。
具体的なアクションとしては、次の3つを軸としています。
参考:女性デジタル人材育成プラン
- デジタルスキル習得支援
- デジタル分野への就労支援
- 全国各地域への横展開に向けた周知・啓発
同プランを利用した事例の1つとして、長野県塩尻市では市の外郭団体(塩尻市振興公社)の指導のもと、就労に時間的制約がある女性に対して、自営型テレワークの導入でより柔軟な働き方の実現を促進しています。
塩尻市振興公社が仕事を分割して、登録した女性テレワーカーへと委託する仕組みであり、参加した女性にOJTでスキルを身につける機会を提供し、さらには地域企業等への就職に繋げるなどした結果、女性が公共施設や企業など地域のDX推進を後押しできるようになりました。
このように日本でも、女性の社会進出を後押しするための施策が行われています。
この他にも政治や企業経営の世界において、女性が中枢を担える仕組みづくりに向けた様々な施策を行っていますが、それが成果を上げているとは必ずしも言い切れないのは、前項で紹介したデータからも明らかです。
それはなぜなのでしょう。
日本女性の社会進出が遅れているということには、当然それを阻む要因があります。
この要因に向き合い、その根本を理解しない限り問題の解決には至りません。
そこでここでは、日本女性の社会進出を阻む要因について、もっとも大きな2点を取り上げて解説していきます。
日本では、高度成長期に「男性は外で仕事、女性は家で家事・子育て」というような性別役割分業の意識が急激に高まったと言われています。
そのため、一昔前までは女性が労働により賃金を得ることは、結婚・出産までの一時的な期間を除いて一般的なこととして認知されていませんでした。
与えられる仕事も男性従業員の補助的な内容である場合が多く、女性が担当する仕事については正当な評価がされてきませんでした。
その後、男女雇用機会均等法や前述の男女共同参画社会基本法の施行などにより、こうした性別に基づく分業意識は徐々に薄まっているとはいえ、現在においても日本社会に根強く残っています。
そのため、入社時の初任給こそ男女間に格差が無かったとしても、様々な要因により就業年数が経過するごとに男女間の賃金格差が生まれてしまっています。
上記のグラフは2015年のデータですが、男女の賃金格差は少しずつ縮まってはいるものの、この時点においても顕著に低く、まだまだ同等とはいえないのが現実でした。
コロナ禍以降は、女性の完全失業数や女性ひとり親世帯の困窮が問題となることも多いため、現在においても、未だ女性が活躍できる社会が実現できているとは言えないのが現実でしょう。
男女の賃金格差は、当然ながら、管理職などで活躍する女性の少なさや後述の女性特有のライフイベントなどの影響で、男性と同じようなキャリア形成が困難であるという社会的な要因によって引き起こされています。
また、賃金格差が社会に根付いていること自体も、女性の労働に対するモチベーションの低下を招いたり、女性のキャリア形成を難しくする要因にもなっており、負のループのような状態にあると言えるでしょう。
このような状況を解消できないため、日本女性の管理職創出には依然として大きな壁があり、前述のデータにもある通り、世界の国々と比較した場合に、日本女性の管理職人材は最低ラインという結果に繋がっているのです。
人が生きていく中では、結婚や出産・子育て、介護といったライフイベントが生じる場合があり、当然ながら働き方にも大きな影響を及ぼします。
とはいえ、ライフイベントは、多くの場合において男性と女性で異なる形で経験され、女性特有のライフイベントの発生が、日本女性が社会の中枢で活躍することを難しくしている大きな要因の1つとなっているのです。
まず日本では、諸外国と比較して女性が労働することについての認知が遅れています。
そのため、未だに「結婚したら女性は家で家事や育児をするべき」といった、昔ながらの考え方が根強く残っているケースも少なくありません。
こうした考え方のもとでは、小さな子どもを持つ母親が仕事をすることについて、家族の理解や協力が得られず、「家事や育児との両立」が前提のパートタイム労働などしかできない場合があります。
また、社会的な課題である待機児童問題も解消されておらず、幼稚園や保育園の空きがなく子どもを預けられず、働きたくても働けないといった問題もあります。
子どもを預けられず、夫婦の内どちらか一方しか働けないとなれば、「賃金が高い男性が外、女性が家」という選択にならざるを得ず、仕事から離れる期間が長くなれば、それだけ仕事復帰後のキャリアアップが難しくなるのも致し方ありません。
若い世代を中心に徐々に意識が変わってきているとはいえ、未だに「子育て=女性中心」という考え方が社会に根強く残っている現状においては、出産といったライフイベント発生後は、子どもの体調不良時などの緊急対応も基本的に女性の役割になりがちです。
こうした突発的トラブルは子育てにおいて避けられない事態ですが、この影響が仕事にまで及び、予定通りタスクを行うことができない状態が続けば、必然的に女性が管理職を担うことは難しくなってしまいます。
これは、女性の社会進出を進めていく上では決して望ましい状況ではありませんが、営利活動を行う企業としても、この判断は致し方ないとも言えるでしょう。
不安定な状況でしか働くことができない女性に重要な管理職を任せるのは不安があり、どうしても男性中心で考えることが慣例となっているのが、多くの日本企業が直面している現状なのです。
そのため、結果として女性がキャリア形成を図るうえでのロールモデルが存在せず、女性が活躍する土壌がなかなか育たない現状を生み出しています。
日本企業がグローバルに活躍していくためのカギとなる、日本女性の社会進出を阻む要因は日本社会の構造そのものにあり、一企業の努力で乗り越えることは容易ではありません。
他方で、これまで作られてきた社会の仕組みを根本から変えていくことは、さらに困難でしょう。
そのため、女性の社会進出の重要性は多くの人が認識し、政府も取り組みを行ってはいるものの、なかなか状況が好転しないというのが日本の現状なのです。
そんな多方面の課題を解決し、女性の社会進出を後押ししていくには、社会や企業の仕組みを変革する可能性を持つ、DXこそが重要なカギとなり得ます。
「女性とDX」と題してお送りする本特集の前編では、日本社会の現状を整理し、女性の社会進出が進まない要因について考えてまいりました。
後編では、女性の活躍を後押しする「社会・企業・家庭」3つのDXについて、事例を交えながら解説してまいります。
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