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登壇者/福田大真(法政大学MBA特任講師、中小企業診断士、ITコーディネータ)、山田元樹(株式会社MU代表取締役社長)
聞き手/町田英伸(DXportal®編集長)
町田編集長(以下:編集長)
「本日は、『企業を成長させたい経営者必見!初心者のためのDX対談』と題して、お話ししていただきます。DXportal®読者の大多数にとっては『当たり前』の話もあるかと思いますが、改めてDX推進の超初心者に向けたお話を聞かせてください。
私が9つの質問を用意してきましたので、お二人はそれぞれのお立場からお答えください。
改めて本日はどうぞよろしくお願いいたします。」
福田大真先生(以下:福田氏)、山田元樹社長(以下:山田氏)
「よろしくお願いします。」
編集長
「では、最初の質問はこちら。基本中の基本とも言える質問です。『DXとはなんですか?できるだけ簡単な言葉で教えてください。』です。それこそ、中学生に説明するぐらい簡単に説明してもらうことはできますか?」
福田氏
「簡単にと言いながら、長くなってしまうかもしれませんが、まず辞書で『経営』と検索すると『経営とは変革すること』と出てきます。『DX=デジタルトランスフォーメーション』の『トランスフォーメーション』も『変革』という意味ですよね。
つまり『経営=DX』ということになります。
ただ、DXには『デジタル』という言葉がついていますので、ものすごく広い意味で言ってしまえば『デジタルを使って経営する』ことが、そのまま『DX』となるんですよと最近は話しています。」
編集長
「なるほど。『デジタルを使って経営する=DX』ですか。面白いですね。山田社長のお考えはどうでしょう?」
山田氏
「そうですね。2番手ということでちょっと面白いことを言わなければというプレッシャーもありますが、私は『トランスフォーメーション』の意味にもっと注目したいと思っています。
自社に足りないことをちゃんと探し当ててデジタルでトランスフォーメーション(変革)する場合、このトランスフォーメーションが何たるかというのは会社によっても違うと思います。
それぞれの企業によって、どういう経緯でトランスフォーメーションするかによって変わりますが、やっぱりそこに『プラスアルファがあるか否か』がトランスフォーメーションの意味であり、『DX』となるかと思います。」
編集長
「DXportal®では、『デジタル技術とデータを活用し、既存のモノやコトを変革させ、新たな価値創出で人々の生活をより良くすること』を定義としています。つまり、DXとはデータとデジタルの力を用いて人々の生活や社会をより良くするための新しい取り組みであり、そこから新しい価値を創出していくっていうのが一般的な説明になると思うんですが、これだと何となく『分かるような分からないような』となってしまいますよね。
でも、『デジタルで経営をすること』であるとか、そこから『プラスアルファを生み出すことである』というのがDXと言い換えると、分かりやすくなりますね。」
福田氏
「私はDX初心者の経営者さんには『デジタルを使って経営していれば、それでもうDXになっていますよ』と言っています。少しでも(経営者さんの気持ちを)前向きにしてあげるためにそんな話をするのですが、これだと何も難しいことではないですよね。『普段からデジタル使ってるでしょ?』ぐらいの感覚で、そんな話をよくしてます。」
山田氏
「大事なのって『目的が何か』と『ゴールが何か』ぐらいであって、いわゆるPDCAの頭と尻尾が決まっていれば良いのです。言い出せば、プランの過程ではチェック(C)やアクション(A)を細かくあれやこれやという話になりますが、まずはそのきっかけとして『何をやりたくて、何ができたの?』ということさえあれば、少なくともDXと呼べるのではないかと思います。」
編集長
「では次のテーマです。『なんでDXは必要なんですか?DXを進めないと生き残れませんか?』というものですね。今の時代、デジタルを使わなければ駄目なのか?というお話を伺いたいと思います。」
福田氏
「本当ですよね(笑)。別に使わなくても生き残れるんだったら、何も使わなくても構わないですよね。
このあたり、(『DX推進を進める』企業の代表として)山田社長はどうお考えですか?」
山田氏
「そうですね。例えばスマホというモノがあって、今は何でもかんでもというと語弊がありますが、生活やビジネスの大部分でスマホ化がなされていますよね。役所の手続きから決済まで、全部スマホで完結する時代になってきたと思います。
そうなると、人々がどんどんその重要度を高めていくから、時代の流れとしてまず必須なのではないかという考えが一つありますよね。それに加えて、(スマホ化に)ハッキングとかセキュリティのリスクとか脆弱性とかそういう話はあるとしても、それ自体が何かデメリットを生むようなものではありません。それであれば前に進むために変革していくのは『ドラえもん』の世界しかり、一つの例としてそれはいいことなのではないか?と思います。」
編集長
「つまりは、時代の必然である、と。」
山田氏
「そう思います。」
福田氏
「私も同じ考えです。だって今、デジタル使ってない方って逆に探す方が難しいかもしれないですよね。時代の流れを踏まえるとDXは必然なのだと思います。
ちょっと堅苦しい話をしますが、中小企業庁が出している小規模事業者白書等のデータでは、日本の事業者数でみると小規模事業者は85%以上になります。つまり、日本の85%以上が小規模の会社です。夫婦二人でやっている企業や、社長の一人企業などが日本のほとんどで、労働人口でみても中小企業と小規模事業者の従業員数は7割を超えています。
『日本はDX後進国である』と言われていますが、日本の大多数を占めるそれらの企業が逆にデジタル使っていただかないと日本そのものが生き残れないんですよね、もはや。
日本では(労働人口的にみて)大企業と、かなり大きな中小企業が3割しか占めてない状況で、それらの企業が仮にデジタル使ってますと言っても、残り7割の人が使っていなければ、国際社会では生き残れません。だから、広い意味では『日本が今後生き残るためにDXは必要』となるかと思います。
と同時に、狭い意味ではもうまさに山田社長がおっしゃった通り、よく『私、IT苦手なんです』とか、『全くわかってないです』という社長さんでも、『スマホは使ってますよね』となる。仮にガラケーしか使っていない方でも、メールやデジカメは使っていたりする。
これらはトランスフォーメーションであるかは別にして、全て『デジタル活用』ではあるわけなので、入口としてはそれでいいのではないでしょうか。
DXが必要か必要でないかという以前に、どんな小さな企業でもすでにある程度のデジタルは使っていて、そこから発展していけば良いだけの話ですので、何も難しく考える必要はないんです。」
編集長
「なるほど、なるほど。では、DXが必要なのは分かったけど、次のテーマは多くの事業主さんたちが考えるこんな疑問です。『でも、お金がかかるんでしょ?』です。なにやらどこかのTVショッピングみたいですが。」
福田氏・山田氏
「ああ~(苦笑)。出ますよね、この質問。」
編集長
「実際にDX推進に踏み出したいと思ってはみても、踏み出せない理由の多くは『人材と予算の不足』と言われます。特に、そこまでDXを重要と考えていない経営者さんにとっては、人材がどうこうよりも多分予算の方が重要視されるのではと思うのですがいかがでしょう?」
福田氏
「全くおっしゃる通りですね。大企業や一部の中小企業は人数が多いので、お金かけてIT化しましょうとか、デジタル化しましょうということに十分な効果が見込まれます。例えば、何かのシステムを作って一人が業務にかける時間を1秒短縮できたとしたら、従業員が30万人いる企業であれば、30万秒(83時間)もの短縮になるわけですから、それはお金をかけてでもやる価値があるとはっきり分かりますよね。
けれども、小さい会社ではこれが見えにくいため、なかなか踏み出せないというのが実情なんだと思います。
でも、先程お話に出たガラケーしか使っていない社長さんがスマホに変えたら、LINEが使いやすくなったという話がありました。この社長さんは建築会社の方なんですが、現場からLINEで連絡がきて、『こんなふうに施工したので確認してくれ』という大量の写真の確認がものすごくやりやすく、かつ早くできるようになったというのです。
それまでガラケーしか使っていなかったころは、パソコンにメールが送られてきて、それを開いて確認し、返信してといった感じで毎日1時間以上もかけてやっていたそうですが、スマホにしてからはLINE一つで完結するようになったので、その時間が数分で済むようになったと言います。
仮に1日1時間の時間が浮いたと考えると、スマホを買ったことにより、社長さん一人だけでも年に300時間ほどの時間を効率化できた計算になりますよね。その上、空いた時間で営業に時間を割けるようになって、新しいお客さんが見つかり売上と利益が上がったと。しかもこのスマホは、いわゆる『0円スマホ』で購入したものなので、かけた費用はタダ同然のものでした。
こうした事例をみると、お金をかけた分だけ効果があるのであれば予算をかけても良いのではとも思いますし、そのお金にしても必ずしも多くの予算を割くだけが施策ではなく、小さく始めることもできるようになってきています。特にヒト、モノ、カネに限りのある小規模事業者にはおすすめです。」
編集長
「なるほど。では、『DXを推進するアドバイス』ということを生業とした企業の代表として、山田社長はこの問いについてどのようにお考えですか?」
山田氏
「そうですねぇ……。DXとして効果を実感しやすい施策を考えると、『今ある工数を減らす』というのも将来的にはより重要になってくると思うのですが、それよりもまずは『どうやって売上をアップさせるか』といったマーケティング視点でのDXが重要だと思います。
DXportal®でも紹介した『株式会社塾のナガシマ』様の事例などからも分かるように、DXをすることによって『今までになかった層にアプローチできた』など、結果的に増収・増益に繋がる施策は大きな価値かと思います。
どちらの事例でも、確かにある程度のお金はかけていらっしゃいます。やはり全てを無料で済ませようと思ったらできることも限られてしまいますしね。それであれば、企業にちゃんとした体力があるなら、増収・増益に繋がる施策をしっかりと予算をかけて取り組んでいったほうが良いのではないでしょうか。もちろん、しっかりとした費用対効果を計算すべきではありますが。」
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