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まず、セラミドの種類を考える上で最も基本となる4つの分類から見ていきましょう。
殆どの場合、肌の保湿ケアとして重要とされるセラミドは「ヒト型セラミド」を指します。
ヒト型セラミドはその名前の通り、人の肌にあるセラミドと同じ構造のセラミドで、セラミドに期待される保湿性やバリア機能強化などの効果が期待できます。
元々肌にあるセラミドと同じ構造なので、角質内に適切に入り込む事が出来れば、肌に存在するセラミドと同じ働きをしてくれます。
ちなみに、セラミドとは化学的には脂肪酸とスフィンゴシンというものがくっついた成分を指します。
セラミド配合といわれる商品で、ヒト型セラミド以外によく使われるセラミドが植物セラミドです。
いくつか種類があり、例えばコメセラミド(コメヌカスフィンゴ糖脂質)、こんにゃくセラミド(コンニャク根エキス)などがあり、植物から抽出された成分です。
ヒト型セラミドと構造は似ているものの、ヒト型セラミドとは構造が異なり、セラミドに更に糖類がくっついているという形となりますので、角質内でラメラ構造を作る働きはしません。
ヒアルロン酸などと同じく、肌表面で保湿効果を発揮するもので、ヒト型セラミドと同じ働きはしないとう事になります。
保湿効果についてもヒト型セラミドと比べると大幅に劣る形になります。
動物セラミドとしてよく用いられるのは、馬の脊髄から抽出される「馬セラミド」があります。
動物由来ですので植物由来のものと比べればヒト型セラミドに近い気もしますが、やはりこちらもセラミドに糖がくっついている構造であり、またそもそも肌から抽出しているわけではないので、ヒト型セラミドと同じ働きをする事はありません。
植物セラミドと同じく肌表面での保湿効果という形ですが、最近の研究で動物セラミドを利用すると、肌内部でヒト型セラミドの合成が促進されるという事がわかっています。
化学的に成分合成を行って、セラミドと同じような構造が作られた成分が疑似セラミドと分類できます。
セラミドと構造的には近いのですが、役割としては単純に界面活性剤としての働きのものであったり、保湿剤としての働きだったりと色々なものに分かれます。
有名どころでいえば、キュレルシリーズは「セラミドケア」として独自開発の疑似セラミドを配合し、高い保湿力を発揮するシリーズとして販売されています。
あくまでもセラミドに似ている成分ですので、ヒト型セラミドと同じように働く事はありません。
セラミド配合コスメの説明を見ると、「天然〇〇セラミド」とわざわざ書かれている事がありますが、天然と合成の違いもちゃんと理解しておきましょう。
まず、分かりやすいのは合成セラミドです。こちらは基本的に化学的に成分同士を反応させて作られたセラミドで、疑似セラミド全般とヒト型セラミドの一部が該当します。
合成というと何やら肌に悪い影響がありそうですが、合成させる原料は自然由来のものが殆どですし、性質としてヒトの肌に存在するセラミドと同じ構造であれば、おかしな副作用などなくちゃんとセラミドとして働くので、特に心配する必要はありません。
植物や動物といった生き物から、直接抽出されたセラミドは全般的に「天然」または「天然型」と表現されます。
前述の植物セラミドや動物セラミドは分かりやすいですね。
一方、ヒト型セラミドにも天然型というのがありますが、もちろんこれは人間から抽出されているわけではありません。
ヒト型セラミドでの天然型の場合、特定の条件下で培養された麹菌から抽出されるもので、化学的に合成させるか、菌に合成させるかという違いになります。
ヒト型セラミドは、成分上では「セラミド1」「セラミド3」などと表記されていて、成分表記上登録されているものが1,2,3,4,5,6II,9の7つである事から、7種類あるとよく言われていました。
ただ、これは成分表記上の話であって、実際にはセラミドの種類はもっと多く、人の角質層からは12種類のセラミドが確認されています。
なぜこんなに種類があるのかというと、セラミドを構成している脂肪酸が3種類、スフィンゴシンが4種類あって、その組み合わせによって性質が変わるため、3×4で12種類が存在するという事になります。
また、基本的にはこの12種類が分類になりますが、更に細かい形状の違いなどがある事から、細分化していけば300種類以上ものセラミドが存在しています。
【画像引用元】公益社団法人日本生化学会 論文「セラミドとその代謝産物の皮膚における役割」(https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2017.890164/data/index.html)
ちなみに、セラミドは以前なら「セラミド1」「セラミド2」というような数字での表現だったのですが、最近は「セラミドEOP」「セラミドNS」などアルファベットでの表現になっています。
この違いは、簡単に言えば数字で表現しているものはセラミドとして発見された順番につけていたのですが、これだと数字と性質がバラバラになってしまうため、性質毎に分類しなおそうといものがアルファベット表記です。
具体的には、セラミドの種類は脂肪酸が3種類、スフィンゴシンが4種類の組み合わせで12種類と紹介しましたが、この脂肪酸3つが[N]、[A]、[EO]と区別され、スフィンゴシン4つが[S]、[P]、[H]、[DS]と区別されていて、このアルファベットの組み合わせで表記されています。
尚、従来の数字で表現されるものとの対応は下記の通りです。
セラミド1=EOP
セラミド2=NS(またはNG)
セラミド3=NP
セラミド4=EOH
セラミド5=AS(またはAG)
セラミド6II=AP
セラミド9=EOS
同じセラミドといっても、この一つ一つが持つ働きに違いがありますので、コスメを選ぶ際は配合されている成分の詳細な働き方を調べてみると、より有効活用しやすくなります。
ここ最近、ヒト型セラミドの中でも「アシルセラミド」という表現をよく見かけるようになってきました。
アシルセラミドは、簡単に言えば普通のセラミドより「長い」セラミドで、肌にあるセラミドの中でも特に保湿やバリア機能として重要な働きを持っている事が分かってきています。特に、アトピー性皮膚炎などの症状はこのアシルセラミドが不足する事が大きな原因と判明してきていて、通常のセラミドを塗布しても中々改善しないものが、アシルセラミドの塗布を続けると改善しやすくなるなどの報告もあるそうです。
理系の詳しい話は分かりづらいのでさておき、イメージとしては普通のセラミドよりも長い手を持っているため、他のセラミドや、保湿成分、肌の細胞などと結合しやすく、安定して肌内部に存在しやすい事が特徴となっています。
そのため、通常の「短い」セラミドではせっかくスキンケアで肌に入れても、軽い洗顔やお湯などですぐ流出してしまうのに対し、「長い」アシルセラミドであれば、一度入り込んだセラミドがしっかりと肌内部に残り、洗顔などでも流出しなくなる事から、高い保湿効果やバリア機能が維持されるようになります。
アシルセラミドは、「セラミドEO■」などアルファベットのEOがつく種類が該当し、数字表記でいえば1,4,9,12等が該当します。
他のセラミドよりも化粧品原料の価格が高い場合が多く、配合されているものが少ないようです。
昨今、色々な成分が「ナノ化」されていますが、セラミドにもナノ化されたものが増えてきています。
ナノ化とは、成分をナノサイズという非常に小さい大きさにするという事で、通常、美容成分はある程度の大きさがあるために肌の中まで浸透していかないのですが、ナノ化によって小さくする事で肌内部に浸透させられるようになります。
セラミドのナノ化にも色々な方法がありますが、例えば富士フィルムが開発した独自の手法では、通常、セラミドを化粧品に配合する場合にはセラミドをある程度の油分に溶かして更に小さなカプセルに入れておく必要がある所を、セラミド成分同士を特殊な技術で小さくまとめ、カプセルなど無くても配合できるようにした方法などがあります。
こうしたナノ化技術によって、セラミドによる保湿効果が何倍にも上昇しているという研究も多くありますので、積極的に活用してほしい所ですね。
ちなみに、世の中にはコスメにセラミドに該当する成分は入っていなくても、セラミドケアという表現で販売されているものも多くあります。
これは消費者の間で「セラミド=肌にいいもの」というなんとなくの理解が広まっているために使われている表現かと思いますが、セラミドケアと表現される場合、基本的には保湿などによってセラミドの働きを補ったり、洗顔などであれば強い界面活性剤を使わない事によってセラミドの流出を防ぐ事などを示しているもので、セラミドだけに限らず肌に優しいコスメというイメージに近い形だといえます。
広告などであたかもセラミドが入っているかのように表現され、行政からの指導をうけている場合などもありますが、セラミドコスメをちゃんと活用するためには、商品購入前に一度しっかりと成分表示を確認して、「セラミド〇〇」と書かれた表記があるかどうか確認するようにした方が良いでしょう。
セラミドはまだまだ研究が進んでいますので、今後もより画期的な種類が増えていく可能性もあります。
新しい情報にも注目しつつ、より自分の目的に合った商品を見つけてくださいね。
※記事の正確性については細心の注意を払っていますが、専門家視点からの間違いなどありましたらご指摘頂ければ幸いです