エンターテイメント分野での利用が広がるVR。その中でも、ことスポーツに関しては国内外で様々な360°VR動画の配信事例があり、バスケットボールに野球、さらには2016年8月に開催された「リオオリンピック」でも活用され、陸上・フェンシング・ビーチバレーなどが様々な種目が、360°VR動画で視聴できたようだ。


そんな中、VRxスポーツとしては恐らく世界初となる ”プロレス “と掛け合わせた「VRプロレス」が、2017年3月31日にSHOWROOMにて生放送された。


プロレスと言えば、80年代に黄金期を迎え、アントニオ猪木を筆頭に長州力、タイガーマスクや海外選手では、ハルク・ホーガンなど数多の有名選手が在籍しており、TVでは金曜20時のゴールデンタイムに放映されていた人気格闘技だったが、現在、プロレスブーム再燃と言われ、選手をメディアで目にする機会も増えてきたが、当時ほどではないのが現状だ。


いわば “ニッチなスポーツ”と化してしまったプロレスだが、プロレスとユーザとの距離を近づける架け橋となるのはVRではないか?そう考えたのが、「VRプロレス」を考案したKlamp株式会社だ。


Klamp株式会社 渡邉 公基氏


どういう経緯で、本取組の実施に至ったのか?どんな想いを持ってこのプロジェクトを立ち上げたのか、についてKlamp株式会社の渡邉 公基氏にお話を伺った。


 


興行を買い取り、独占的にVRプロレスを放映


—- なぜ、VRxプロレスという組み合わせでライブ配信を行おうと思ったのか、経緯を教えてください。


渡邉氏:プロレスとの出会いは約2年前で、プロレス興行団体「プロレスリング・ノア」の看板選手である「丸藤 正道」選手の後援会長をされている方と、共通の知人を介してお会いする機会があり、その場で意気投合して、私は丸藤選手の宣伝部長に就任することとなりました。


当時、プロレス会場に足を運んだこともなければ、あまり見る機会もなかったのですが、このキッカケで会場に見に行ってみると、その迫力に圧倒され、一目見て虜になりました。


そんな折、映像ディレクターの友人と何か面白いことしたいね、と漠然と話ていた際に “VR”というキーワードが熱いという話を耳にし、VRでプロレスを見たら、会場にいなくてもプロレスの臨場感や迫力を伝えることができるのではないかと考え、知り合いや飛び込みでいろいろな方にアプローチをして、急造のVRプロレス制作チームを作りました。


プロレスリング・ノアにも相談し、一昨年にVRプロレスのパイロット版を作成しました。


2年前のことで当時はまだVRという言葉自体、今ほど認知を得ていなかったこともあり、非常に多くのメディアにも取り上げていただきました。


マネタイズとしてはVRゴーグルに丸藤選手のサインを入れていただき、会場で販売。


最終的には経費含め、収支トントンにすることができたこともあり、もっと本格的にやればビジネスにつながる、という可能性を感じることができました。


 


—- Klampを立ち上げたのは、VRプロレスをやろうと思って始められたのでしょうか?


渡邉氏:そうですね、過去の経験上、手応えがあったプロジェクトだったので、事業の一つとしてやろうと決めていました。


ただ、ノアでVRコンテンツを制作した際にも、痛感しましたが、いきなりこの事業だけでマネタイズできる自信はありませんでした。なので別の事業で軍資金を作り、チャレンジすることにしました。


もちろん、VRプロレス単体でのマネタイズも考え、スポンサーを集めようと営業していたのですが、そもそもVRって何?から始まって、どんなに説明しても、絵空事のようにしか受け取って貰えず、やはり実績を作っていくしかないと確信しました。渡邉presentsぐらい自由に放映できる環境を作ろうと思い、実現したのが今回の大日本プロレスの中継を360°VR動画で生配信した「VRプロレス×BJW」です。


 


VRは “テクニカルより驚き”


—- 昔に比べ、プロレス熱はそれほど高くないように感じますが、そこを盛り上げたい!という気持ちがあったのでしょうか?


渡邉氏:確かにそうかもしれません。でも今回はプロレスを見たことがない人でも “すげぇ”と思えるコンテンツに仕上がったと思っています。


プロレスって目の前で日々鍛えている人同士ががバチバチやりあっているのを目の当たりにすると、興奮するんですよね。


それが、リング外ではなく選手目線やリングサイド、レフェリー目線など普段見れない視点で見れるので、プロレスを見たことがない人でも、その臨場感や迫力を感じることができると思いますし、普段見ているプロレスファンにも新しい体験になるので、魅力的に感じると思います。


コーナーポストにも今回、カメラを設置していたので、エルボー合戦やポストからのダイブ、雪崩式ブレーンバスターなど、一般の方は恐らく一生見ないであろう世界を見ることができるので、興奮するのは間違いないかと。




 


—- 目の前でプロレスラーがバチバチやるシーンを目の当たりにしたら確かに興奮しますね。


渡邉氏:私は現時点でVRコンテンツに求められるのは “テクニカルより驚き”だと思っていて、だからこそ、今回はあえてレフェリー目線での配信を増やしました。


今まで体験したことのない視点こそ、驚きにつながると思ったためです。


ただこの視点、人によってはかなりVR酔いします・・・。それでも私の判断としては “それでいい”でした。


もちろん、酔ってしまうというマイナスの要素もありますが、コンテンツの魅力自体が伝わらなければ、そもそもVRのスゴさを感じて貰えない。


だからこそ、酔い問題で妥協せずVRだからできる目線に振り切って配信を行いました。結果的に反響も大きかったのは、VRコンテンツだからこそ実現できることに焦点を当てたからだと思いますし、我々としての気づきも大きかったです。既存のやり方に縛られず、やりたいことを実現するために、思い切って振り切ってみるということも大事だと思います。


 


—- なるほど、確かに見る機会さえあればファンが増えそうですよね。


渡邉氏:そこがポイントだと思っていて、「プロレス」に接したことの無い人にとってプロレスを見るというのは結構、ハードルが高いと思っています。


周りの友達にプロレス好きな人がいないと、プロレス観戦する機会はなかなか生まれないと思います。


それはVRも同じことが言えると感じていて、だからこそ双方の力を掛け合わせることで、その垣根を一気に下げることができるのではないか、と思い今回のVRプロレスの実現に至りました。


プロレスはVRの力を借りて魅力を伝え、VRはプロレスを見ることでバーチャルリアリティの臨場感を感じて貰うことができる。双方の力でユーザとのタッチポイントを増やし、多くの人に見て貰えればと思っています。



 


他ジャンル展開も検討


—- 今後はどのような展開をお考えですか?


渡邉氏:もちろん、VRプロレスは継続していきます。


先日開いた記者会見でも発表させていただきましたが、大日本プロレスでは2回目が決定。DDTと東京女子プロレスでもVRプロレスの映像を撮らせていただくことになりました。


ほかの団体とも実施に向けて協議中ですので、今後随時発表させていただきます。


また、VRプロレスの経験で培った企画力・ノウハウ・ライブ配信、そしてDLC配信までワンストップで提供できるのが我々の強みなので、他ジャンル展開も視野に入れています。


社名にも由来するのですが、我々の会社名であるKlampは、英単語でCLamp、意味としては”かすがい”。モノとモノを繋ぎ合わせるという意味なのですが、我々もそういうVRxプロレスのように、何かと何かを掛け合わせて新しいものを作っていきたいという想いがあります。


また、CをKにしたのは、knowledgeのK。当社の知見や経験も活かしながら、何か面白いものを生み出せればと考えているので、今後は「プロレスx●●」や「VRx●●」という形で、様々な組み合わせで事業展開できればと考えています。


 


—- 他ジャンル展開は具体的にどのような分野がいいとお考えですか?


渡邉氏:今はVR工場見学など、ビジネスサイドの展開をメインに考えています。


例えば某食品メーカーで混入騒動などが起こりましたが、再販のタイミングで新たに改修した工場を、360°VR動画を通じて、エンドユーザに見学してもらうことで食の安全をよりリアルに伝えることができ、結果的に信頼の回復につなげることができると思います。


また、災害時に現状を伝えるための手段として、360°VR動画を活用したり、様々な要因で人の誘致が進んでいない地域のインバウンド対策としても活用できると思うので、その辺に注目して展開を検討しています。


他にもプロレスのような格闘技系の横展開はもちろん、スポーツにイベントなど様々な分野への展開も可能だと感じているので、もし、ご興味ありましたらアイディアベースで構いませんのでぜひ、ご一報ください。


 


「VRプロレス」は前回生放送した映像を編集し、5月10日よりDMM.comにてダウンロード販売が開始される。


前回は生中継だったため、見逃した方も多かったと思うが、この機会に筋骨隆々とした男たちがバチバチやりあうプロレスを、リング場の一員としてぜひご覧いただきたい。


プロレスファンもそうでない方も、一目で360°VRの迫力を感じることができるだろう。


ちなみに、5月10日(水)にDMM.comでの配信を記念して開催された記者会見のレポート記事内で、『VRプロレス』”オリジナルハコスコ”のプレゼンキャンペーンも行っているので、興味がある方は以下の関連記事からご覧ください。


[関連記事]:http://vrinside.jp/news/vr-puroresu-dmm/


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情報提供元: VR Inside
記事名:「 "テクニカルより驚きを" VRプロレスが仕掛ける熱量を高める未体験視点とは?