VR空間で、ユーザ同士のコミュニケーションが可能になる


VRの普及に欠かせないと言われているソーシャルVR。


ゲームでも、ソロでやり込むゲームより他のプレイヤーとの交流要素があるものの方が長くプレイしてしまうというゲーマーは少なくないのではないだろうか。単なるチャットアプリであっても、気の合う仲間が集まればずっと時間を潰すことができてしまう。


Viveのコミュニケーションアプリ『WeChat』


WeChatでも、Facebook Spacesのようにアバターの作成が可能


HTCは、Viveにおけるコミュニケーションのベースになるアプリとして『WeChat』を考えているようだ。WeChatを使うことで、ViveユーザはVRの内外でフレンドとのコミュニケーションが可能になるという。


Facebookが先週リリースしたVR上でのコミュニケーションツール『Spaces』は、残念ながらOculus Rift専用のアプリとなっている(Reviveを使えばViveで動作自体は可能だという情報もある)。


WeChatは、ViveユーザのためのSpacesのような立場を狙うアプリと言えそうだ。


WeChatの機能


WeChatでできることは、Facebook Spacesやその他のソーシャルVRアプリの機能とほとんど同じだ。


ユーザは、自撮り画像を元にVR空間で使用する自分にそっくりなアバターを作成できる。VR体験をしながら友人からのメッセージをWeChat経由で受信し、受信したメッセージに返信をするためにVRヘッドセットを外す必要もない。そのまま音声で文字入力して返信が可能だ。


VR空間に友達を招待して、バーチャルな自撮り棒を使って一緒に写真を撮ることもできる。撮影した写真は、WeChatのアプリ内から自分のアカウントで公開するために投稿できるようになっている。


プラットフォームによる分断


こうした機能は、Facebook SpacesがOculus Riftで提供しているものとよく似ている。それぞれのVRアプリはOculus RiftとHTC Viveに限定されており、プラットフォームによって別々のアプリが使われるという状態だ。


ユーザにとっては不便な状況だが、将来的には相互に他のプラットフォームへの乗り入れが行われることになるのだろうか?


Facebook側は、「理想的には」Viveのような他のVRヘッドセットにも将来的にSpacesを提供したいとしている。HTCによるWeChatの拡大はまだ始まったばかりで、WeChatの開発に関わったサードパーティの企業ObENからもこうした互換性に関するコメントは発表されていない。


ObEN


2014年に創業したばかりのObENは、Vive Xアクセラレータプログラムの第一期に選ばれてHTCから援助を受けていた企業だ。Vive Xの同期には、Viveのワイヤレスアダプターを作成しているTPCastがいる。


同社のAI技術は、人工知能によって人物の写真と音声を組み合わせて3D空間で利用できるアバターを短時間に作成するものだ。さらに、音声をテキスト化する機能によってVRヘッドセットを付けたままの返信を可能にしたのもObENの技術である。


アバターによってAR/VRといった体験が強化されることはもちろん、そのAIは使うたびに学習して賢くなるという。


WeChatの現状とユーザビリティ



WeChatの現状


今回HTCが発表したWeChatの機能拡張は、今年の後半にViveportで提供される予定になっている。これにより、WeChatとObENの技術が統合されることになる。


だが、こうした機能の追加を待たずともWeChatには既に10億人の利用者がいるという。ヨーロッパやアメリカにおいて、WeChatの評判はそれほどでもない。一方で、中国では大人気のようだ。


WeChatには10億のアカウントが作成されており、そのうち8億がアクティブなユーザだ。ユーザの大部分は、中国の『Weixin』(中国での『WeChat』)ユーザだと思われる。


HTCは、WeChatとViveとの連携を強化することで、中国のVR市場でさらに強い影響力を持つことを狙っているようだ。


誰のための争い?


中国で多くのユーザを獲得しているらしいWeChat。中国市場に力を入れているHTCとしては、Viveのコミュニケーションアプリとしてプッシュしていきたい存在なのだろう。


一方で、Facebookは元がSNSの運営で成長した企業であり、SpacesはVRにおける同社の基盤となり得る存在だ。Oculusの買収やVRコンテンツデベロッパーへの投資にかなりの金額を費やしてきたFacebookにとって、それを取り返す種になりそうなアプリである。


どちらも引けない立場にある。だが、特にユーザ同士のやり取りを中心にしたサービスを考える上で重要なのは「友人が使っているか」だ。機能面での差異がほとんどないからこそ、利用者の多さがポイントとなる。


二つの似たようなアプリがあって、どちらも繋がりの深いプラットフォームでしか使えないとき、ユーザはどうするだろうか?


既にパソコンやスマートフォンで使えるSNSもメッセンジャーもある現状、「面倒だから交流にVRアプリを使わない」というのは十分あり得る。


ここでHTCとFacebookが争うよりも、なんとか協力しながらソーシャルVRを利用するユーザを増やしていかないとお互いにとってリターンの少ない戦いになってしまいそうだ。


 


参照元サイト名:Upload VR

URL:https://uploadvr.com/vive-wechat-social-vr-integration/


参照元サイト名:ObEN

URL:https://oben.me/?lang=ja


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情報提供元: VR Inside
記事名:「 ViveユーザのためのソーシャルVR『WeChat』