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通常はPCとの有線接続が必須のHTC Vive。VR体験の途中で邪魔になることも多いケーブルを問題視する企業は多く、TPCastもその一つだ。ワイヤレスアダプターによってViveの無線化を実現するTPCastだが、これまでのアダプターは1台のViveでのみ使用可能だった。
TPCastは新しく、複数のViveを同時にワイヤレス化することが可能なワイヤレスソリューションのビジネスエディションを発表した。このシステムは既存のハードウェアを利用して構築されており、最大6台のViveをワイヤレスで同時に使用できるのが特徴だ。
上の動画は、Viveのサンフランシスコオフィスで行われたデモの様子だ。PCと有線接続されていないViveを装着した二人が、VRで卓球を行っている様子を見ることができる。
これまで、Viveを使って複数のユーザがローカルで参加するVRコンテンツを構築するのは難しかった。バックパックのように背負えるPCなどが利用されてきたが、本体の重量がVR体験の妨げとなってしまう。
だが、TPCastビジネスエディションがあればVRアーケードやテーマパークにマルチプレイ対応のVRコンテンツを作るのも簡単になりそうだ。もちろん、エンターテイメントだけでなく自動車などの製造業や不動産業などのビジネス用途でも有用なソリューションだ。
写真のように天井などにワイヤレスレシーバーを取り付けることも可能なので、一般の来場者が誤って設定を変更してしまうようなことも避けられそうだ。インテリアを上手く使えば、ハイテク感を見せることなく自然にレシーバーを隠すこともできるだろう。
レシーバーとアダプターが一対一でのやり取りを行う通常版のTPCastと比較しても、ビジネスエディションの遅延は増えていないとTPCastのCEO、Michael Liuは説明する。
ビジネスエディションには、通信に使用する周波数をリアルタイムで動的に変更できるソフトウェアが付属する。複数のヘッドセットを使ったときに電波が干渉して遅延が発生することがないように、自動的に変更が行われるようだ。
これはWi-Fiルータなどで利用されているのと同様の仕組みだと思われる。電磁波を発する電子機器をいくつも同時に使うのが当たり前になっている現在、安定した無線通信を実現するためには必須の機能だ。
Upload VRは、サンフランシスコオフィスでのデモ中にこの新しいシステムを体験する機会を得られたという。最初の数秒でフレームレートが大幅に低下し、30秒ほどで通常の状態に戻ったようだ。
これはTPCastのアダプター同士か、あるいは他の機器との間で電波の干渉が発生し、その後にソフトウェアが使用する周波数の調整を行った結果だと思われる。
実際に使用した場合にどの程度の頻度で干渉が発生するかは、周辺の状況次第なのでなんとも言えない。しかし、ソフトウェアがきちんと通信を安定させる役割を果たしているのは事実のようだ。
Viveを使ったVRアーケードは、複数の国で異なる経営母体によって展開されているが、中でも中国ではHTC自身がViveアーケードを展開している。このTPCastビジネスエディションは、そうしたVRアーケードにワイヤレスなマルチユーザ対応のVRを普及させるだろう。
Viveを前面に押し出さず、オリジナルのVRコンテンツを提供するロケーションベースのVRアトラクションにおいてもこのシステムは活用されそうだ。
価格は明らかになっていないが、今年の後半には発売が予定されている。Viveの広報担当者は、第3四半期のうちに発売するとしている。
Viveによれば、TPCastの通常版も発売に向けて動いているという。アメリカではこのビジネスエディションと同じく第3四半期の発売を目指しており、現在は連邦通信委員会の承認を得るために作業を続けているようだ。
中国では4月後半の出荷を目指していたはずだが、公式サイトにも新たな情報はない。また、予約枠は完売状態となったままだ。
個人用ならば通常版のTPCastで十分だが、商業施設での利用ならば効果が大きそうなビジネスエディションが発表された。
デモで起きたフレームレートの低下が頻繁に発生するものでなければ、ローカルVRの体験をかなり進化させてくれるソリューションになりそうである。
アトラクションでの使用を考えると、6台同時に動かした場合でもレスポンスの低下が起きないことも重要だ。デモでは二つのViveを同時に使っているだけなので、複数人が動き回るようなより負荷がかかる状況での動作レポートが見たいところである。
参照元サイト名:Upload VR
URL:https://uploadvr.com/tp-cast-business-edition/
参照元サイト名:TPCast
URL:https://www.tpcast.cn/h_en/index.html
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