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App StoreやGoogle Playへの開発者登録は労力的にも費用的にも個人で十分まかなえるものなので、スマートフォン向けの小規模なVRコンテンツであれば個人で開発可能だ。
その一方、スマートフォンアプリは基本的には無料で使えると考えるユーザーも多いため、スマートフォン向けVRコンテンツで収益を上げるのは容易なことではない。
そんな中光明になりそうなのが、VRコンテンツ向けに広告を提供するアドネットワーク業者だ。
この記事では、VRコンテンツ専用広告を配信するアドネットワーク業者についてご紹介しよう。
アドネットワークとは何かというと、多数のWEBサイトを集めて一つのメディアとし、そこに広告を配信する手法のこと。
そもそも広告を配信したいと考える企業側は、できるだけ沢山の人に自社の商品を知ってもらい、興味を持ってもらいたいと考えている。
だから、テレビや雑誌のように、ひとつの番組や雑誌が何万、何十万というユーザー(=視聴者/読者)を抱えているところへCMや広告を流すのだ。
WEBサイトにもYahooのような大量のユーザーを抱えるサイトが存在するものの、大多数のWEBサイトはそうではない。一日に数名がアクセスするだけというWEBサイトが無数に存在しているというのが実情だ。
しかし、1つ1つのWEBサイトが抱えるユーザー数は少なくとも、沢山のWEBサイトをまとめあげてしまえば、全体としては大量のユーザーが存在することになり、広告を掲載する価値が生まれる。
これこそがアドネットワークの価値だ。
「WEBサイト」と書いた通り、元々はインターネットのWEBサイトへの広告掲載を前提とした手法だが、近年スマートフォンアプリが普及してからは、スマートフォンへの広告掲載を扱うアドネットワークも存在している。
少人数のアプリ開発者にとってのアドネットワークの価値は、広告という収益化手段を提供してもらうことによって、開発だけに集中できること。
アドネットワークなしにアプリで収益を上げようと思ったら、広告を掲載したいという広告主を自力で営業して探すか、アプリ内課金で収益を上げるかしか、現実的な道はない。
専用の営業チームがいるような大きな会社であればそれも手段のひとつかもしれないが、少人数にも拘わらず自力で広告主を探すとなると、当然アプリの開発がおろそかに。
また、2017年現在アプリ内課金で収益を上げられるようなアプリは、大手ゲーム会社が大量の予算をかけて作る大規模なゲームアプリに限られるため、少人数のアプリ開発者が収益を上げる手段とするのは現実的じゃない。
このため少人数のアプリ開発者が現実的に収益を上げつつアプリ開発に集中しようと思ったら、アドネットワークは非常にありがたい存在なのだ。
VRコンテンツに特化したアドネットワークのひとつめは「SpeAD(スペアド)」だ。
特徴は、VRコンテンツを利用するユーザーが、広告を見た時点で収益が発生する「gaze課金」という仕組み。
VRゴーグル使用中画面がタップできなくなってしまうスマートフォン向けのVRコンテンツにおいて、ユーザーが広告を見ただけで収益が発生するというのは重要なポイントだ。
アプリ開発者にとって重要なポイントとなる収益の支払いについては、次のようになっている。
毎月月末に1か月分の収益を締め、収益の支払いは当月発生分を翌々月15日に支払い。
ただし、収益の累計金額が5000円未満の場合は支払いが次月以降に繰り越し。
振込手数料はアプリ開発者側が負担。
なお、現在β版として提供されているため、上記の内容は今後変更の可能性もありうる。
VRコンテンツに特化したアドネットワークのふたつめが、「VRize Ad」。
「360°動画広告」と、映画館のようなVR空間で再生する「2D動画広告」、プレイヤーの目の前に3DCGのオブジェクトを広告として出現させる「3DCG広告」という三種類の広告タイプを持っていることが特徴。
こちらは現在クローズドβ中とのことで、広告に関する詳しい情報や、収益の支払いに関する情報について詳細を確認することができない。
ただ「VRize Ad」のWEBサイト上からクローズドβへの申し込みが可能になっているので、「VRize Ad」に興味を持ったアプリ開発者は、申し込んでみてはいかがだろうか?
3つ目のアドネットワークが「Immersv」。
「Immersv」が提供する広告は、2Dと3Dの動画広告。
VRコンテンツ中、ユーザーが広告を一定時間以上見つめていると、劇場のような空間に移動して、そこで動画広告が流れる…という内容だ。
なお、「Immersv」は既にプラットフォームを運営開始しているようだが、本稿を執筆している2月20日時点ではWEBサイト(https://immersv.co/)にアクセスすることができなくなっている。
VRアプリをリリースした直後にいきなり収益化するというのは難しいこと。
VRアプリの利用者が増え事業が軌道に乗ってきたら、自前で広告主を探して広告を掲載したり、自社が提供するデジタルアイテムを販売をしたりといった収益性の高いビジネスが可能になるが、そうなるまでは厳しい時期が続く。
そうした中でアドネットワークがあれば、利用者が少ない立ち上げ時期にあっても、なんとかVRコンテンツの収益性を高めていくことが可能だ。
もちろん、利用するにあたって注意が必要な部分もある。
広告を表示する場所や、広告を表示する回数によってはユーザーの快適さを損なってしまう点だ。
特に仮想世界に没入してしまうVRでは、ユーザーが体験する内容について慎重に考える必要がある。
だがそうした点に注意して活用すれば、アドネットワークは強い味方となってくれるはず。
VRコンテンツの開発に携わっているなら、収益化の手段として今後のVRコンテンツ向けアドネットワークの動向を見守っておいた方がいいだろう。
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