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現在、クラウドファンディングサイトIndiegogoで、資金調達とともに、臨床試験用製品の事前予約を受け付けている。
2017年11月9日に募集開始してから、わずか24時間で、目標金額の500%にあたる5万ドルの調達に成功しており、世間の人々からEmpower Meに寄せられる、注目度の高さが伺える。
Empower Meの謳い文句は、「世界初となる、自閉症の人々の為につくられたウェアラブル教室」。
MITやハーバードなどの脳科学研究者の研究成果に基づいて制作されており、自閉症者に対して、言語理解、他者の感情理解、ストレスマネジメントにより行動を自制する方法、会話スキルなどの社会的スキルを、トータルにトレーニングする場を提供することができるようになる。
メインとなるソフトウェアやアプリのほかに、教育者や自閉症者へのケアを担当する人への情報ポータルサイトなども組み合わせられて、パッケージ化されている、Google Glassをはじめ、互換性のあるAndroidスマートグラスでいずれも動作可能だ。
一例として、アプリ「Emotion Charades」の例を挙げてみよう。
このアプリでは眼前にいる他者の表情を、瞬間的にGoogle Glassが捉え、その際、相手がどのような感情を抱いているのかをクイズ形式で訓練する。
たとえば、上記の動画では自閉症者のケア担当員である女性が笑った瞬間をGoogle Glassが撮影され、静止画としてディスプレイ上に表示される。
次に、「笑った顔」と「不満げな顔」を示す2種類の絵文字が表示されるので、自閉症者は正解だと思う方に視線を向ける。すると、Google Glassの視線検出機能が作動し、どちらの選択肢を選んだのかを自動的に判定するのだ。
「出題」される相手の表情は、学習したAIが顔の画像から自動的に感情を読み取ってくれるので、問題を出題する手間を省力化することが可能だ。
もうひとつ、サンプルとして「Transition Master」も取り上げておこう。
これは慣れ親しみの薄い場所でも、自閉症者が不安に襲われたり、ストレスを感じたりする程度を緩和することを目的としたアプリだ。
Google Glassが、次に向かうことになる場所の映像を360°動画で出力し、あらかじめ慣らしておくことで、自閉症患者は、移動先でも慌てずに対処しやすくなる。
また、Transition Masterにはゲーム要素も搭載されている。AR空間のある特定の場所に隠されたアイテムを探す、という内容のゲームで、これを熱中してプレイすることにより、慣れない場所でも、感情をセーブしやすくなる訓練効果が期待できる。
このように、ゲーミフィケーションの手法を取り入れることで、訓練効果を高めるように工夫している点もEmpower Meの大きな特徴だ。
2017年11月20日現在、Empower meの立ち上げたindiegogoのプロジェクトには、5万9609ドルが集まっている。
プロジェクトでは、資金提供者への返礼品として、アーリーバード品を含む6つのコースを用意している。
2770ドルでGoogle GlassとEmpower Meがセットで同梱されたパッケージが贈呈される。
アーリーバード品の場合は、1725ドルと37%オフの価格となっているので、気になる人は早めに予約しておくと良いだろう。
Google Glass5個とEmpower Meに加え、VIPトレーニングセッションなどの追加特典が同梱された「SCHOOL PACK」は12000ドルだ。
無事に製品が出荷されれば、自閉症者ケアを目的にARウェアラブルデバイスを使用したケースとしては、たしかにEmpower Meが世界で初めての事例となるだろう。
Google Glassはエンタープライズ向けに出荷されており、一般消費者向けには現在のところ、発売されていない。しかし、Empower Meの事例のように、Google Glassが社会的に有用であることを実証する事例が増加すれば、事態は変わるかもしれない。
つまり、以前、コンシューマー向けに販売した際に被ったプライバシーへの懸念などの不安材料を期待感が塗り替えて、一般消費者の手元に届くようになるかもしれない、ということだ。もっとも、こうしたシナリオ通りに進む可能性は、それほど高くなさそうだが。
参考URL:
Brain Power, Empower Me, Indiegogo, NextReality
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