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ところが、2017年に入ってさらに多くのヘッドマウントディスプレイが発表。現在、VR市場には多数のヘッドマウントディスプレイが存在しており、VR業界の関係者でも完全には把握しづらい状況となっている。ましてや、これからVRを知るという人にとっては何が何だかわからない状況といえるだろう。
そこでこの記事では、2017年10月時点でVR市場に存在している主要なヘッドマウントディスプレイを、わかりやすく整理してみたい。ヘッドマウントディスプレイを購入したり、VR市場に参入する際の参考にしていただければ幸いだ。
多数存在しているVRヘッドマウントディスプレイだが、その差は主に3つの観点から成り立っている。
ひとつめは、体験できるのは仮想現実であるVRなのか、拡張現実であるARなのか、複合現実であるMRなのかというXRカテゴリー。ヘッドマウントディスプレイのもたらす最も基本的な機能といえるだろう。
ふたつめは、何が本体になるのか?という点。VRヘッドマウントディスプレイは基本的には映像を映すディスプレイに過ぎないので、コンテンツを再生するためにはPCやスマートフォンといった本体が必要となる。XRカテゴリーほど大きな違いはないものの、本体のスペックが高ければ、よりリッチな体験がもたらされる。
みっつめは、どんなコンテンツの配信プラットフォームに対応しているかという点。たとえばゲーム機の場合、ニンテンドースイッチではプレイステーション4向けに作られたゲームを動かすことができない。これと同様に、VRヘッドマウントディスプレイも対応したVRコンテンツしか動かすことができない。どんなコンテンツを楽しめるのか?という点でVRヘッドマウントディスプレイの体験の差を分けるポイントだ。
なお、記事自体を整理するため、ふたつめの「何が本体になるのか?」という点を見出しに、各VRヘッドマウントディスプレイを並べた。
「HTC VIVE」は、HTCが開発・販売するヘッドマウントディスプレイで、XRカテゴリーはVR。
本体はPCで、「HTC VIVE」に対応したスペックのPCが必要となる。
プラットフォームは、PCゲーム配信プラットフォームであるValveが手掛ける「SteamVR」と、HTC自ら手掛ける「Viveport」に対応。
特徴は、ベースステーションという機器を使って体験者が実際の空間を歩くという動作を、VR空間に反映できること。
「Oculus Rift」は、大手SNS「Facebook」の子会社であるOculusが開発・販売するヘッドマウントディスプレイで、XRカテゴリーはVR。
本体はPCで、「Oculus Rift」に対応したスペックのPCが必要となる。
プラットフォームは、PCゲーム配信プラットフォームであるValveが手掛ける「SteamVR」と、Oculus自ら手掛ける「Oculus Store」に対応。
また、Facebookが開発を進めるVR-SNS機能への対応も予定されている。
特徴は、「Oculus Touch」というコントローラーによって、手の動作をVR空間で自然に再現できること。
「FOVE」はFOVEが開発・販売するヘッドマウントディスプレイで、XRカテゴリーはVR。
本体はPCで、プラットフォームは、PCゲーム配信プラットフォームであるValveが手掛ける「SteamVR」。
他のヘッドマウントディスプレイにない機能として、視線トラッキング機能を持っている。
通常のヘッドマウントディスプレイは、センサーによって体験者の頭の動きを認識し、頭の動きに応じて映像を変化させる。
「FOVE」はさらに体験者の眼球の動きも認識することで、眼球の動きに合わせた映像展開が可能だ。
「OSVR」はゲーミングデバイスの開発・販売で有名なRazerが開発・販売するヘッドマウントディスプレイで、XRカテゴリーはVR。本体はPCだ。
VRヘッドマウントディスプレイとしてのハードウェア部分、動作させるためのソフトウェア部分などがオープンソース化されているのが特徴。Valveが参加しているため、プラットフォームとしては「SteamVR」に対応。
「Windows Mixed Reality」対応ヘッドマウントディスプレイは、「Windows Mixed Reality」というプラットフォームに対応したヘッドマウントディスプレイの総称。
単一の会社から開発・販売されるプロダクトではなく、複数の会社からそれぞれの「Windows Mixed Reality」対応ヘッドマウントディスプレイが発売されている格好だ。
「Windows Mixed Reality」は、現実の風景と、デジタルによる仮想の物体を融合して表示する「MR」を実現するプラットフォームで、、XRカテゴリーはMR。本体はPCとなっている。
Acer「AH101」
富士通「「Windows Mixed Reality」対応ヘッドセット」
Dell「Visor」
HP「Windows Mixed Reality Headset」
「PSVR」はソニーが開発・販売するするヘッドマウントディスプレイで、XRカテゴリーはVR。
本体はゲーム機である「プレイステーション4」。
プラットフォームも「プレイステーション4」で、パッケージ版として販売されるPSVR対応ソフトのほか、「Playstation Store」からダウンロード販売されるPSVR対応ソフトを再生できる。
ゲーム機である「プレイステーション4」の拡張デバイスであるため、大手ゲームメーカーが開発したゲームソフトが対応ソフトになっている…という点が最大の特徴。
大手ゲームメーカーが手がけるコンテンツの質は知名度・クオリティ・ボリュームなどの面で良質なものが多く、他VRデバイスと比較してコンテンツ面がアドバンテージといえる。
「Gear VR」は「Oculus Rift」のOculusとSamsungが共同で開発・販売するヘッドマウントディスプレイで、XRカテゴリーはVR。
本体はSamsungが開発・販売するスマートフォン/タブレットの「Galaxy」シリーズで、「Galaxy S6」以降の一部端末が対応している。
プラットフォームはOculusの手掛ける「Oculus Store」に対応しているが、「Oculus Rift」向けの「Oculus Store」とは明確に分かれており、「Gear VR」専用のストアが用意。
スマートフォン向けのVRは基本的に、スマートフォンのディスプレイと加速度センサーを用いてVRを実現するため、ヘッドマウントディスプレイはスマートフォン本体を固定するためのホルダーに過ぎない。
しかし、「Gear VR」はヘッドマウントディスプレイとスマートフォンをUSB Type-Cコネクタで接続する仕様になっており、ヘッドマウントディスプレイに用意されたタッチパネルからの操作を実現するなど、一般的なスマホVR以上にリッチな体験が味わえる。
「Daydream View」はGoogleが開発・販売するヘッドマウントディスプレイで、XRカテゴリーはVR。
本体は「Daydream VR」への対応が謳われたスマートフォンで、「Google Pixel」シリーズなど一部端末が対応している。プラットフォームはGoogleの手掛ける「Daydream VR」。
「Gear VR」と異なりヘッドマウントディスプレイとスマートフォンとの接続はしない。つまり、ヘッドマウントディスプレイとは書いたものの、「Daydream View」は単なるスマートフォンホルダーに過ぎない。
ただ、「Daydream VR」というGoogleの用意したプラットフォームがVRコントローラーをサポートしているため、コントローラーを使ってVR世界での操作が可能。一般的なスマホVRよりもリッチな体験が可能になっている。
「Gear VR」の説明で触れた通り、スマートフォンでVRを体験する場合、スマートフォンが本来持っている機能を使ってVRを実現する。このため、スマホVRにおいてはスマートフォンを頭に固定する道具として、スマホVRゴーグルが用いられる。
スマホVRゴーグル自体は、多数のメーカーから様々なプロダクトがリリースされているものの、(スマートフォンを頭に固定するというものなので)機能面で大きな差はなく、VR体験的にも大きな差は存在しない。
「Microsoft HoloLens」は、Microsoftが開発・販売するヘッドマウントディスプレイで、XRカテゴリーはMR。
「Windows Mixed Reality」に先行して展開されていたものだが、他の「Windows Mixed Reality」対応ヘッドマウントディスプレイと異なり、PCがなくとも独立稼働する。
また、他の「Windows Mixed Reality」対応ヘッドマウントディスプレイが密閉型なのに対し、「Microsoft HoloLens」は透過型ディスプレイを採用。透過ディスプレイを通した現実の風景の上に、デジタル情報がオーバーラップ表示される形だ。
「Oculus GO」は「Oculus Rift」のOculusが開発するヘッドマウントディスプレイで、XRカテゴリーはVR。「Oculus Rift」とも「Gear VR」とも異なり、PCやスマートフォンといった本体なしで独立稼働できる。
プラットフォームはOculusの手掛ける「Oculus Store」に対応し、「Gear VR」用のVRコンテンツが動作する予定。
価格が20,000円台と安いことや、ハイスペックなPCが不要で、「Galaxy」シリーズを持っていなくとも動作することから、大きく普及するのではないかと思わせるVRヘッドマウントディスプレイだ。
「HTC Vive Focus」は、「HTC VIVE」のHTCと、PCメーカーであるLenovoが共同で開発・販売するヘッドマウントディスプレイで、XRカテゴリーはVR。
プラットフォームはGoogleの手掛ける「Daydream VR」で、PCやスマートフォンなしで独立稼働する。
HTCがPC向けにリリースした「HTC VIVE」が「Oculus Rift」の強力なライバルとなったように、独立稼働型VRヘッドマウントディスプレイ市場においても、「HTC Vive Focus」が「Oculus GO」の前に立ちはだかる格好となった。
「IDEALENS K2」は、IDEALENSが開発したヘッドマウントディスプレイで、XRカテゴリーはVR。
日本での知名度は高くないものの、「IDEALENS K2」の前進となる「IDEALENS K1」は世界初の独立稼働型VRヘッドマウントディスプレイであり、草分け的存在といえる。
プラットフォームは「VR App Store」。
「VRotica」は、Hologramが開発したヘッドマウントディスプレイで、XRカテゴリーはVR。
VRポルノコンテンツ専用として開発されており、PCやスマートフォンなしで独立稼働、専用ストアからポルノコンテンツの購入が行える。
2017年の時点でこれだけの数のVRヘッドマウントディスプレイがリリースされているが、今後各ヘッドマウントディスプレイのバージョンアップ型がリリースされることを考えれば、ますます数が増えていくだろう。
ただ、一般の人が2つも3つも同じようなVRヘッドマウントディスプレイを所有するとは考えにくい。なので早晩、消費者に選ばれないVRヘッドマウントディスプレイが登場し、淘汰が始まるのは間違いない。
個人的には、淘汰の明暗を分けるのは「どれだけ快適にコンテンツを体験できるのか」「どんなコンテンツが体験できるのか」という体験面と、「価格」ではないかと考えている。こうした点からすると、「PSVR」「Oculus GO」が普及していきそうだが…はたしてどうなっていくのだろうか。
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