海外メディアRoad to VRは、任天堂アメリカのプレジデントの発言を紹介した。



依然VRに慎重な任天堂


同メディアは、海外メディアVarietyが開催したトークイベントにおける任天堂アメリカのプレジデント兼COOであるReggie Fils-Aime氏(トップ画像右側の人物)のVRに関する発言を報じた。


同氏は、任天堂はまだVRに対応する準備を完了していないことを述べたうえで、VRに関して以下にように発言した。


任天堂は、文字通り10年以上にわたりVRに注視していました。


そのうえで言いますが、VRはまだ本当に楽しい体験とはなっていないのです。


また同氏はARに関しても言及し、以下のように述べている。


わが社は、ARに関する経験ならば十分にあります。


ARがもっているポテンシャルは、現在でも十分発揮されています。


以上の発言における「ARに関する経験」は、「ポケモンGO」の成功を指していると思われる。同ゲームを直接的に開発しているのはNiantic社であるが、任天堂はNianticとパートナーシップを結んでいる。


Fils-Aime氏の発言から、任天堂は一貫してVRに関心があるものも一定の距離を保つ姿勢を改めて追認できる。その一方で、ARに関しては積極的とも解釈できる発言があるものも、同社が「ポケモンGO」のほかに新たなARコンテンツを展開するという情報は現時点ではない。


因縁浅はかならぬ任天堂とVRの関係


Fils-Aime氏の発言で言及されたように、任天堂は「VR元年」以前からVRと関わってきた。また、昨今の同社キーパーソンの発言を参照すると、同社が「VR元年」以降もVRのリサーチを続けていることがわかる。


そもそもの始まり「バーチャルボーイ」


任天堂「バーチャルボーイ」本体


任天堂とVRの関係のはじまりは、「VR元年」のはるか以前にさかのぼることができる。


1995年、同社はグラス型VRゲーム機「バーチャルボーイ」をリリースした。今日のVRヘッドセットと形状的な類似を認めることができる同ゲーム機は、立体視によるゲームプレイに対応していた。


しかし、同ゲーム機のグラフィック性能は解像度が384 x 224、またフルカラー表示ではなく32段階のモノクロで表現していた。


以上のようなユーザーを満足させるには不十分なグラフィック性能が影響してか、同ゲーム機は商業的には成功することなく忘れ去られることになった。


任天堂社長の発言



「VR元年」以降の2017年2月、任天堂社長の君島達巳氏は、海外メディアNikkei Asian Reviewに対して、SwitchのVR対応に関して「VRを長時間利用することの問題が解決されれば」と述べた


「VRを長時間利用することの問題」が具体的に何を指しているかは不明だが、VR体験の子供に与える影響ではないかと思われる。


なお、VRヘッドセットの子供に与える影響に関しては、中国の研究機関からVRはむしろ子供の視力を向上させる効果があるという報告があった。


宮本茂氏の発言



「スーパーマリオ」「ゼルダの伝説」を手がけた任天堂の宮本茂氏は、海外メディアTimeのインタビューのなかで、VRに関して以下のように発言した。


オンラインでVRをマルチプレイすることに関しては、多くの問題がすでに解決済みか、解決されつつあります。実際、オンラインVRマルチプレイに関しては、わたしたちもずっと研究していました。


しかし、私がVRを遊んでいるヒトを見るとき、頭を悩ませることがあります。例えば、もし親が(VRヘッドセットを装着して)VRで遊んでいる子供を見たら、きっと心配するだろうと思うのです。


もうひとつ、すべてのVRコンテンツ開発者が挑戦すべき他の問題もあります。それはVRでプレイするのにちょうどいい長さの体験を制作することです。


青沼英二氏の発言



現在の「ゼルダの伝説」シリーズ総合プロデューサーである青沼英二氏は、海外ゲームメディアGameReactorのインタビューに対して、「ゼルダの伝説」とVRの関係を以下のように述べた


私が「ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス」(2006年リリース)を制作した時、すでに一人称視点での「ゼルダの伝説」をテストしていたのです。


テストした結果、私はそうしたゼルダを全く好きになれませんでした。


…私が思うに、リンクは戦っている時も探検している時もプレイヤーにその姿が見いていなければならないのです…ゼルダのVR化は優先事項ではなく、短期的なプロジェクトとしてもありません


しかし、ゼルダシリーズのVRコンテンツ化は、未来においてはドアを閉ざすつもりはありません。


Nintendo Switchの「VRモード」?


最近では、同社の最新ゲーム機Nintendo SwitchをOSソースコード解析した結果、同ゲーム機に「VRモード」が存在していると思わしきソースコードを発見したというツイートが話題となった。



同ゲーム機の「VRモード」に関連すると思わしき箇所は、「IsVrModeEnabled」と「SetVrModeEnabled」というソースコードだ。とくに「SetVrModeEnabled」は(trueかfalseの値をとる)bool値が渡されることで、VR対応するかどうかを判断しているように解釈できる。


以上のように、任天堂はVRに関して無知あるいは否定的などころか、VR参入のタイミングを入念にうかがっているようにも見える。そして、同社がVR市場に参入する時は、「ポケモンGO」と同じかそれ以上の社会現象になったとしても何ら不思議ではないだろう。


任天堂アメリカのプレジデントの発言を紹介したRoad to VRの記事

https://www.roadtovr.com/nintendo-still-not-ready-vr-not-enough-truly-fun-experiences/


上記記事のソースとなったVarietyの記事

http://variety.com/2017/digital/news/nintendo-president-switch-holiday-sales-1202550623/


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情報提供元: VR Inside
記事名:「 任天堂アメリカ・プレジデント発言「VRはまだ本当に楽しい体験とはなっていない」