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VR技術によってバーチャルな世界を見せることで、特定の環境における被験者の活動を観察することが可能だ。被験者が人間なこともあればハエやマウスのような生物の場合もあるが、身体の反応や行動の変化を調べる方法としてVR技術を使うこと自体は珍しくない。
脳波計によって脳の活動を電気的に調べられるようになっていることもその後押しとして働いている。既に脳波によってVRゲームを操作する研究も行われているほどだ。頭にかぶるタイプの装置を使っているのでノイズが入りやすく精度や読み取り速度の問題はあるが、実際に考えるだけでいくつかの動作を行うことに成功している。
UCLAでは、さらに詳しく脳の活動を調べることで記憶障害の研究が行われている。究極の目標は、記憶が作られる仕組みを解明してアルツハイマー病、外傷による脳の損傷やその他の理由で失われてしまった記憶を復元する治療ツールを開発することだ。
VRと脳と言えば脳波によって操作できるVRゲームの研究が行われており、スタートアップ企業のNeurableは2018年に脳波で遊ぶVRアーケードゲームをリリースすることを予定している。ほんの数年前まではSFの世界でしかできなかったことが、来年には一般のユーザでも体験できるものになろうとしているのだ。
既に脳波によってVRゲームを操作することには成功している。しかし、頭にはめるタイプの装置で脳波を読み取ると問題になるのがノイズの存在だ。脳は頭蓋骨の内側にあるため、その活動を正確に計測するのは容易ではない。
Neurableは、事前にユーザの脳波をアルゴリズムに学習させることでノイズを除去し、読み取りの精度と速度を高めている。しかし、神経科学者からはこれ以上の速度を実現するには頭蓋骨の内側にセンサーを埋め込むしかないという意見も出ている。
これまで、VRを使って脳の活動を測定する研究では頭にはめるタイプの測定装置が使われてきた。ノイズの問題はあるものの、簡単に着脱できて被験者の負担になることもないからだ。
しかし、UCLAのNanthia SuthanaはインプラントとVRという二つの最新技術を駆使して記憶の仕組みを探っている。インプラントによって脳の活動を測定することで、外付けの装置では不可能だった高精度での脳スキャンが可能となる。
この研究はこれまでに行われていないため、成功すれば人間の脳が記憶する仕組みを解明してくれるかもしれない。
この研究では、記憶障害のある被験者の脳が記憶を作る様子を観察するためにVR空間で道を覚えてもらう。
まずはVR空間でライトによって被験者を誘導し、次には誘導灯なしでどれくらいルートを覚えているかをテストする。
Suthanaは、被験者に埋め込まれたインプラントから脳の活動記録を回収し、道を覚えるときや思い出すときに脳がどのように活動していたのかを調査する。脳の活動だけでなく、被験者が着用するモーションキャプチャスーツとキャップによって彼の身体の動きを追跡することも可能だ。
ときに家の鍵を置いた場所を忘れる、広い駐車場で車を停めた場所が分からなくなるといったことは誰にでもある。しかし、本当に記憶障害になると日常生活にも大きな影響が出る。
人の顔を覚えたり、記念日を覚えたりすることができなければ人間関係に良くない影響を与え、個人の生活を荒んだものにしてしまう。
脳内でどのように記憶と視覚情報や身体感覚が組み合わされているのかが分かれば、記憶障害の原因を突き止めることができるかもしれない。原因が分かれば、記憶したり、思い出したりする脳の働きを助ける方法を探ることも可能となる。
これまでの方法では、脳波を読み取る精度が低く、記憶を作る・引き出す様子を研究できるほどではなかった。しかし、頭蓋骨の内側から直接脳の活動を読み取ることのできるインプラントを使えばより高い精度で脳の動きを観察することが可能になる。
この研究によって、患者の生活を大きく変えてしまう記憶障害に対処できるようになるかもしれない。
治療目的からも、シンプルに脳の仕組みを解明するという意味でも、今後の発展が期待される脳科学の新しいメソッドとなりそうだ。
参照元サイト名:University Of California
URL:https://www.universityofcalifornia.edu/news/fighting-memory-loss-virtual-reality
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