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VRヘッドセットを医療用途で利用することを考えている企業は少なくない。VR映像を使って医師が手術のトレーニングをしたり、病気の仕組みをVR映像で患者に説明したりするのもその一例だ。
あるいは、治療自体をVRによって行うこともできる。慢性的な痛みを緩和するためにリラックス状態を誘導するVRコンテンツを使用したり、自動車事故のトラウマを解消するためにVR空間で車を運転したりすることも可能だ。
アイオワ州立大が採用することを発表したSyncThinkのEye-Syncシステムでは、VRヘッドセットによって検査を行える。患者本人は気が付きにくく、周囲の人間が判断するのも難しい脳震盪の兆候をアイトラッキングによって見つけ出すのだ。
この技術は、スポーツ選手や兵士などの利用が想定されている。頭に衝撃が加わることの多い試合中のスポーツ選手が危険な状態ならば交代して適切な治療を受けさせ、怪我を負った後の兵士の回復状態をチェックすることもできるだろう。
VR技術を使ってスポーツ中の脳震盪を見つけられるアプリケーションやスマートヘルメットは、複数のテクノロジー企業が開発を進めている。
その中でも、SyncThinkは第一人者と言えるだろう。昨年の10月には、Eye-Syncに使用するアイトラッキング技術の特許も取得している。
個人差はあるが、疲労や外部の刺激による注意力の低下、脳へのダメージによって通常通りに視線を制御することが難しくなるという。アイトラッキング技術を搭載したVRヘッドセットならば正確にユーザの視線の動きを追跡し、その異常を発見することが可能だ。
正常な場合は上画像の左側のように円を描いて移動する点を目で追うことができるが、異常があれば右側のように乱れた円になってしまう。この違いを人の目で判断するのは難しいが、Eye-Syncならばトラッキングによって見分けることができる。
異常の検出は、1分未満で可能だとされている。
この技術や製品の利用が期待されるのは、スポーツの試合だ。アイオワ州立大学も、大学のスポーツチームのためにこの技術を採用すると発表している。
以前VRInsideでもサッカーの例を紹介しているように、スポーツの試合ではしばしば脳震盪を起こす選手が出る。原因となるのは、サッカーのヘディングや相手選手・ボールとの接触だ。
試合中に脳にダメージを受けたならすぐに治療を受けるべきだが、外から見て脳へのダメージを判断するのは難しい。
トレーナーは瞳孔の反応や注意力の低下を手がかりにする他にない。しかし、試合中に本格的な検査を行うような時間は取れない。短時間の確認だけであれば、兆候を見逃してしまうこともあるだろう。
トレーナーが少し怪しいと感じても、選手自身が試合を続けることを望むかもしれない。見た目に元気そうであれば、本人の要望を受け入れてしまうのではないだろうか。
その点、Eye-Syncは確実だ。
Eye-Syncを使えば1分未満という短時間で脳震盪を見つけ出すことができるので、試合を長時間中断させてしまうことはない。機械による判断なので、試合中で興奮して痛みや不快さを感じていない選手の様子に惑わされることもない。
Eye-Syncが効果的なのは、脳震盪を起こした直後だけではない。その発生を見つけることができるならば、治療が完了したかどうかを判断することも可能だ。
治療を進める中でEye-Syncを使って視線を移動させる能力の検査を行えば、まだ脳の状態が良くないのか、それとも既に回復しているのかをチェックできる。Eye-Syncの検査は短時間で行えることに加えて、安全であることもポイントだ。
頻繁に検査をしても症状が悪化することはないため、定期的に検査することで治療の進行具合を確かめることができる。治療の進行状況に応じてスケジュールを変更し、より効率的に回復させることも可能になるだろう。
スポーツ選手だけでなく、兵士や日常生活で頭を打った人など、様々な患者の治療に活用できるはずだ。
ボールを頭で扱うことがあるサッカーはもちろん、他のスポーツでも転倒や他の選手との接触で頭を打ってしまう事故は起きる。脳震盪を検出するEye-Syncは様々なスポーツのプレイヤーを救う可能性がある。
Eye-Syncはスタンフォード大学の研究者によって開発された。カリフォルニア大学では、既にサッカーに限らず全てのスポーツチームで採用されて900人の選手が利用しているという。
導入の容易さもEye-Syncの優れた点だ。大型で高価なデバイスではないので、プロスポーツチームだけでなく大学の授業や大学対抗戦でも利用できる。あまり裕福でないチームでも、選手の命を守るためにVRヘッドセットを購入するくらいの資金は用意できるだろう。
アイオワ州立大学では、まずスタンフォード大学と同様にサッカーとレスリングでEye-Syncが利用される。その後は、他のスポーツへも利用が拡大されるだろう。
導入されれば、大学の脳震盪予防・管理プログラムの一部として選手を守るために利用される。
参照元サイト名:Digital Trends
URL:https://www.digitaltrends.com/outdoors/concussion-vr-headset-iowa-state/
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