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人に何かを教えるときには、メールや電話よりも直接会って伝えるのが分かりやすい。「画面の右の方に出てくる、青いボタンを押して、次は…」と言葉で説明するのは大変だし、言われた側も混乱してしまう。
パソコンの操作法を教えるなら、矢印や枠線を書き込んで分かりやすいように加工した画像を使う方法もある。しかし、新しいテレビのリモコンについて教えるときにはその手も使えない。
IoTとAR技術の企業であるPTCは、ARを使って現実の上に書き込みができるアプリケーションを開発していると発表した。このアプリを使えば、離れたところにいる相手とのやり取りが少しスムーズになるかもしれない。
会話だけで伝えるのが難しい内容であっても、ホワイトボードや紙に書き込みを行って、一緒に整理していくと簡単に伝わることがある。物事の流れのような情報を伝えるときには、矢印やちょっとしたイラストを使うのが効果的だ。
一つの会議室に集まっての会議であればホワイトボードを使えば良いし、直接相手と会って会話するならメモ帳の白紙のページを使うこともできる。だが、離れた場所にいる相手に対して書き込みを使ったコミュニケーションを行うのは難しい。
もちろん画像や動画を撮影して相手に送る方法もあるが、書くものを用意して書き込み、それを撮影する手間がかかって直感的ではない。PTCのプロジェクト・チョークアプリケーションはもっと簡単だ。
AR空間に書き込むことを可能にするこのアプリは「AR技術を普及させる上で非常に重要なものになるかもしれない」とPTCのVuforia部門を代表するJay Wrightは語った。
Wrightは今週カリフォルニア州のサンタクララで開催されたARイベント、Augmented World Expoで講演を行っている。
プロジェクト・チョークを使えば、ユーザは目の前の空間に指で直接書き込みができるようになる。ARゴーグルかスマートフォンのARアプリを通して文字を書くことで、同じようにARデバイスかアプリを使っているユーザにだけ見えるメッセージを残せるのだ。
「プロジェクト・チョークは新しいコミュニケーションの形です。離れた場所にいる人と、一緒に居るかのように利用できます」
Wrightは講演でそう発言している。
相手の見ている世界に直接情報を書き込めるプロジェクト・チョークを使えば、複雑な操作を行う相手にやり方を伝えるのも簡単だ。どのスイッチを操作すれば良いのか、抜くべきケーブルはどれかといった指示を分かりやすく伝えることができる。
この書き込み機能はビデオ通話の最中に自由に使用できるため、離れた場所に居る人に対してその場に居るかのように指示を出すことが可能となる。
プロジェクト・チョークは専門家や家族からのガイドを提供することで、一人では難しい仕事に挑戦する人を助けることができる。ベテランの社員が不慣れな社員にアドバイスしたり、離れて暮らす両親に新しい家電製品の使い方をレクチャーしたりといった利用法が考えられている。
このアプリを使えば、製品のカスタマーサポート業務も効率化できそうだ。
電話でのやり取りだけだと、専門のスタッフでも情報不足で顧客の状況が把握しにくい。顧客にとっては指示が複雑で付いていけないこともある。
視界を共有しながら書き込みで指示すれば、出張サービスを利用しなくても多くのトラブルを解決できるだろう。
デベロッパーは、Vuforia SDKを使うことでVuforiaに対応する既存のアプリケーション上でプロジェクト・チョークの機能を利用できる。Vuforiaに対応していれば、iOS、Android、そしてWindowsのアプリで書き込みが可能だ。
さらに、将来はスタンドアロン版のプロジェクト・チョークアプリも配信が予定されている。このアプリはフリーミアムモデルを採用し、個人用とビジネス用のプランが用意される予定だ。
一般のユーザがアプリストアからプロジェクト・チョークアプリを入手できるようになるのは、今年の秋になるという。
2011年にスタートしたVuforiaは35万人以上のデベロッパーとパートナーが利用しており、4万を超えるアプリが存在するプラットフォームとなっている。シンプルに使えるスタンドアロンアプリだけでなく、このアイデアを活かすARアプリを作るデベロッパーが多数登場するだろう。
参照元サイト名:Venture Beat
URL:https://venturebeat.com/2017/05/31/vuforias-project-chalk-lets-people-communicate-in-augmented-reality/
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