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日本オムニチャネル協会は2024年5月23日、定例のセミナーを開催しました。特定のIT領域や製品・サービスの動向を深掘りするセミナーで、今回は「デジタルマーケの今~クッキー規制後のWEB最適、集客、利便性向上を考える~」というテーマで実施しました。
セミナーではWeb技術を駆使し、どのように最適化を図るべきか、集約や利便性をどう捉えどんな仕組みを実装すべきかを中心に、デジタルマーケティングに精通する識者が解説しました。
インティメート・マージャー 代表取締役社長 簗島亮次氏、Sprocket 代表取締役 深田浩嗣氏、visumo 代表取締役社長 井上純氏の3人がゲストとして登壇。さらに、モデレーターに日本オムニチャネル協会 フェロー 兼 サンリオ ブランド管理本部 ファンベースマーケティング部 顧客体験プラットフォーム戦略推進担当 田口渉氏、司会に日本オムニチャネル協会 専務理事 林雅也氏を交え、クッキー規制後のWeb最適化策について議論しました。
まずは日本オムニチャネル協会 フェローの田口渉氏が登壇。デジタルマーケティングの歴史を振り返りながら、クッキー技術の重要性とその変遷を解説しました。
田口氏はクッキーが誕生した経緯について、「1994年に誕生し、インターネットの初期からユーザーを識別するための基本技術として使われてきたのがクッキーだ。ユーザーの利便性向上のために使われ、ログイン状態の維持やショッピングカートの保存といった機能を支え続けてきた。Webの体験向上に寄与してきた」(田口氏)と、クッキーの用途や利点を説明します。
しかし2005年以降、広告業界の行動ターゲティング技術の発展とともに、クッキーはユーザーの行動を追跡する手段として広く使われ始めることになります。「こうした動きが、セキュリティやプライバシーといった懸念を生むようになった。こうした経緯からクッキーを規制する機運が一気に高まった。Appleは2017年にITP(Intelligent Tracking Prevention)を導入し、2018年にはGDPR(General Data Protection Regulation)が施行され、規制が強化されるようになった」(田口氏)といいます。こうした背景から、企業はクッキーに依存しないマーケティング戦略を模索する必要に迫られるようになったといいます。
さらに田口氏は、サードパーティクッキーの制限が広告効果を低下させ、リターゲティングやコンバージョン測定も困難にすると指摘します。「特にファーストパーティクッキーまでもが制限される状況では、顧客の行動を正確に把握するのが難しくなっている。これに対して、企業は顧客との信頼関係を強化し、ファーストパーティデータを活用するCRM戦略を打ち出すのが望ましい」(田口氏)と指摘。クッキー規制後のデジタルマーケティングを今一度見直すべきと訴えました。
次に登壇したのは、インティメート・マージャー 代表取締役社長 簗島亮次氏。インティメート・マージャーが提供するクッキー規制対応のソリューションについて説明しました。
簗島氏は、サードパーティクッキーが広告効果測定やターゲティングにおいて重要な役割を果たしてきたことを指摘。規制強化によってその利用が難しくなりつつある現状を説明しました。
そこで同社では「IM-UID」という、プライバシーを守りながら広告配信を最適化する共通IDソリューションの必要性を提起します。これは、機械学習を活用した新しいIDで、「このIDを活用すれば、リターゲティング広告やオーディエンスターゲティングが可能となる。企業がクッキーに依存しない広告戦略を実現できる手段になり得る」(簗島氏)と、ポストクッキーと位置づく代替手段であると強調しました。
さらに簗島氏は、認知獲得領域での広告効果測定やOTT(Over-The-Top)メディアでの活用事例なども紹介しました。「顧客理解を深めるには、誰が広告を見ているのか、どのような反応を示しているのか正確に把握することが欠かせない。これらを可能にするのが、データ活用とAI技術だ。最新技術に目を向け、どう活用しているのかなどを、事例も参考にしながら模索することが大切である」(簗島氏)と指摘しました。
続いて登壇したSprocket 代表取締役 深田浩嗣氏はオンラインで参加し、顧客体験を高める施策について講演しました。クッキー規制の影響下で顧客体験を最適化させる戦略に踏み込みました。
深田氏は、Sprocketがオンライン上の顧客体験を向上させるソリューションを提供していることに触れつつ、ファーストパーティデータの重要性を強調。「匿名データだけでなく、簡易化された顧客データを活用することで、より深い顧客理解が可能になる。これからは顧客の行動を一元的に把握し、チャネルを横断してデータを集約することの重要性がさらに増す」(深田氏)と考察しました。
では、具体的に顧客心理をどう理解すればよいのか。深田氏は顧客心理を読み解くアプローチとして、「実際の顧客反応を観察し、データから洞察を得るのが望ましい。地道な作業だが、こうした心理や反応を1つずつ読み解くことが大切だ。例えば、ECサイトでカート離脱の原因を探るために、離脱しそうな顧客に直接声をかけてフィードバックを得ることも重要だ」(深田氏)といい、こうしたアプローチにより、企業は顧客の真のニーズや問題点を把握し、適切な対策を講じられるようになると強調しました。
最後に登壇したvisumo 代表取締役社長 井上純氏は、同社が提供するビジュアルマーケティングプラットフォームを紹介。さらに、クッキー規制後の具体的なマーケティング戦略にも触れました。
井上氏はマーケティングの中でも「ビジュアルコンテンツ」の重要性を指摘します。「企業が作成する写真や動画などのクリエイティブコンテンツは、ユーザーに必ずしも確実に届いていない。これが現実だ。ハーバード大学の研究によると、企業が作成するコンテンツの約7割が実際にはユーザーに届いていないという。こうした状況を解決する手段となるのが、当社のビジュアルマーケティングプラットフォームである」(井上氏)と指摘。企業は自らコンテンツを作成するだけではなく、ユーザー作成のコンテンツ(UGC:User-Generated Content)を自社サイトで活用する方法も検討すべきと訴えました。
さらに井上氏は、UGCやインフルエンサーマーケティングの重要性についても言及します。「消費者は企業の公式情報よりも、自分に近しい人々の情報を信頼する傾向がある。UGCを活用すれば、企業は顧客との新しい信頼関係を築くことができる」(井上氏)と述べます。こうした関係を構築する手段となるのがvisumoのプラットフォームで、さまざまなチャネルを通じて顧客との信頼を構築できるようになると指摘しました。
セミナーの後半では、各社が提供するデジタルマーケティング支援ソリューションを詳しく解説するとともに、クッキー規制による影響や企業に求められる体制、検討すべきことなども議論しました。クッキーに依存しないマーケティング戦略の必要性が高まる中で、企業はファーストパーティデータの活用やUGCの効果的な活用を通じて顧客との関係を強化すべきと訴えていました。
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