犬がリンパ腫と診断されたら…愛犬と穏やかに過ごすためのヒントとは【獣医師執筆】
リンパ腫ってどんな病気?
リンパ腫は免疫系のがんで、犬では比較的よく見られる腫瘍のひとつです。さらに、犬のリンパ腫の全体の約85%が「多中心型リンパ腫」と呼ばれるタイプで、リンパ節から始まり、肝臓や脾臓などさまざまな臓器に広がる可能性があります。その他にも、消化管型(胃腸)、縦隔型(胸部)、皮膚型など、発生部位によって分類されます。
人間でいう「中~高悪性度の非ホジキンリンパ腫」に近いタイプが多く、早期の段階では感染症や免疫疾患と間違われやすいため、注意が必要です。
主な症状は以下の通りです。
初期症状
- 首や股のリンパ節の腫れ
- 元気の低下、軽い倦怠感
進行後の症状
- 食欲低下
- 体重減少
- 発熱
- 嘔吐や下痢
- 四肢や顔の腫れ
- 呼吸困難や咳
- 飲み込みにくそうにする(下顎や咽喉のリンパ節の腫れによる) など
症状が進むにつれて全身にさまざまな不調が現れます。「何かいつもと違う」と感じたら、早めの受診がカギとなります。
愛犬に合った治療と生活のバランス
リンパ腫は完治が難しいがんですが、治療によって症状を抑え、生活の質(QOL)を保つことが可能です。
治療として、最も効果が期待できるのが化学療法(抗がん剤治療)です。副作用の心配をする飼い主さんも多いですが、適切なタイミングかつ適切な薬剤選択が実施された場合には深刻な副作用が出ることは非常に少なく、多くの犬が元気に過ごせる期間を延ばすことができます。
通常は少なくとも最初の時期は週1回ほどの通院と定期的な血液検査や画像診断が必要です。平均的な延命期間は8ヶ月〜1年、中には2年以上生存するケースもあります。
ステロイド療法(緩和ケア)
化学療法が難しい場合、ステロイド(プレドニゾロン)による緩和的治療が選ばれることもあります。これは腫瘍の一時的な縮小や症状緩和を主な目的とした治療です。また、化学療法と併用して使用されることも多くあり、こちらも一般的な使用方法です。
治療方針は犬の状態や家庭の事情に合わせて、かかりつけ医や腫瘍専門医と相談しながら決めることが大切です。治療を行う・行わないに関わらず、「その子らしく」生きられる時間を大切にする姿勢が求められます。
自宅でできるケアと穏やかな時間のつくり方
治療中・治療後も、自宅でのケアと環境作りがとても重要です。少しの工夫が、愛犬の安心感や快適さを大きく左右します。
日常の工夫ポイント
- 水と食事は取りやすい高さに設置
- 滑らない床材(マットなど)を敷く
- 段差を避けるために、移動を助けるスロープなどを設置
- 投薬はできるだけ決まった時間にする
健康状態のチェック項目
- 呼吸が浅くないか、早くないか
- 食欲や元気はあるか
- 排尿排便はスムーズか
- 嘔吐下痢咳の有無
終末期ケアの心構え
- 痛みや不快感を早く察知してあげましょう
- 栄養と水分を少しでも取れるように可能な限り配慮します
- 無理せず眠りやすい静かな場所を整備します
- 「いま」を穏やかに過ごす時間を大切にしましょう
また、こちらは誤解がないようにあくまで選択肢の一つとしてご紹介させていただきますが、「ペットホスピス」や「訪問安楽死」「遠隔相談」などのサービスを活用することで、最後の時間をできる限り穏やかに、後悔なく過ごす選択肢もあります。大切なのは、犬と飼い主さん双方が納得して決めることです。
まとめ
リンパ腫は難しい病気ですが、工夫次第で愛犬と豊かに過ごす時間を延ばせます。正しい知識とやさしいケアで、大切なパートナーとの「今」を一緒に大切にしましょう。
■関連記事
・犬が食べていい果物!与える際の注意点や食べてはいけないものも解説
・女の子が『1時間だけ外出』して家に帰ってきたら、5匹の大型犬が…あまりにも尊い『おかえりなさいの光景』が話題「愛されてる」「最高すぎ」
・部屋に設置したカメラを覗いた結果→犬と猫が一緒に…種族を超えた『尊すぎる光景』に9万いいねの反響「天国みたい」「キュン死案件」と悶絶
・家族の中で「犬が一番好きな人」を見極める方法とは?
・庭で全力疾走する『まん丸ボディ』の子犬→想定以上に『疾走感あふれる光景』に1万いいね集まる「違う生き物で草」「フォルムがww」と反響