一昔前より世間の著作権意識が向上したとはいえ、「無断転載」や「無断使用」に悩まされる作家は後を絶ちません。

 生き物をモチーフにアクセサリーを製作しているNinaさんもその一人。自身の作品画像が中国の「Temu」という販売サイト内で無断使用されてしまい、「全く関係のないもの」と注意喚起しています。

 「はあ、困った……」と、自身のX(Twitter)にTemuの販売画面のスクリーンショットを投稿したNinaさん。画像にはアマガエルの形をした複数の指輪が掲載されており、赤丸で囲まれたものがNinaさんの作品。Ninaさんの作品は基本、自身のサイトやイベントなどでしか販売しておらず、もちろんTemuには商品を卸していません。完全に画像だけが無断で使用されている状態なのです。

 このため「Temu」サイト内で購入すると写真とはまったく異なる商品が届きます。ちなみに写真の無断使用は他のサイトでも行われており、「SHEIN」というサイトで試しに購入したところ、コピーどころか劣化甚だしい商品が届いたそうです。(下画像、左が本物/右がSHEINから届いたもの)

 また、Ninaさんはすぐに写真を取り下げるようTemuに対し交渉したものの、会話が不能だったといいます。自分ではどうすることもできなかったNinaさんは、「今後は画像無断使用を特定し、権利者に代わって使用料を請求するサービスCOPYTRACKに託してみようと思います」とのことでした。

■ Ninaさん「残念だし、悔しい」

―― 「Temu」のサイト内で作品の写真が無断使用されていることに気づいたのはいつ頃ですか?

 実は2年ほど前から分かっていました。SNSのフォロワーさんから「ここで買ったら、まったく別の物が届いた」というようなことを言われ、把握しているだけでも3~4人が買ってしまっています。

―― フォロワーさんにも被害が……。

 今回の1番の問題は、自分が撮った写真を使われて、それが届くと思っていたらまったく違うものが届いてしまうということ。「Nina」というブランドを知っている人は避けられるかもしれないが、知らない人は買ってしまう。

―― 見つけた時は、どのような気持ちになりましたか?

 やっぱり複雑ですね。一生懸命に時間をかけて作ったものがSNSでバズって多くの人の手に渡ると嬉しい。ただ、その副作用でバズっているところを見た海外のサイトが「じゃあ、この写真を使って適当なものを売っちゃえ」となってしまう……。これは残念だし、悔しいです。

 何よりも自分が撮った写真を見て買った人に「この写真を撮った人、こんなの送ってくるぞ」と思われてしまう。それが凄く残念に思います。

―― ちなみに「Temu」以外にも無断使用されたことはあるのでしょうか?

 めちゃくちゃあります。「Temu」の他にも「SHEIN」というサイトなど、把握しているだけでも20~30回はあると思います。

―― そんなにあるんですね……。今回の投稿に「取り下げるよう交渉をしましたが、会話が不能」だったとありましたが詳しく教えていただけますか?

 「Temu」というサイト内に「Temu」にクレームを入れられるページがあるのですが、メッセージを送ると「意匠登録や特許などを取っている番号を示せ」と言ってくるんです。

 だけど写真の無断使用というものは、そういうものではないので、著作権や特許の番号などは持ちあわせていません。

―― そういう対応をされるんですね。

 「Temu」には写真の無断使用に関する異議申し立てをするところが無いんです。他にもいろいろ連絡をしたらカスタマーサポートのようなところに繋がり、そこに異議申し立てをしたところ、「そういう専門の部署があるからそこからメールを送ります」と言われました。

 その後メールが届き、見てみたら話がかみ合っていないんです。日本語が得意じゃないのか、何が言いたいのか分からない感じのメッセージが送られてきました。イエスかノーで返してくれと言っても意味が分からない返事がくるので、「これはもうダメだ」と思いました。

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 このような経緯があり、Ninaさんは普段はXにネガティブなことを書かないようにしているものの、「自分のように苦しんでいる作家さんがたくさんいる」と思い、この現状を知ってもらうために今回の投稿をしたといいます。

■ 「Temu」に直撃!

 Ninaさんの異議申し立てを「Temu」側が把握しているのでしょうか。「Temu」にメディア受付から今回の件についてメッセージを送ってみました。すると「Temu」の広報代理をしている会社の担当者から連絡が!

 担当者によると、今回の件について「Temu」のスポークスパーソンからコメントをあずかったとのこと。その日本語訳と英語(原文)を送ってくれました。コメントは以下の通り。

ご連絡いただきありがとうございます。

本件については、お問い合わせを受けたのち、直ちに調査を開始し、すでに問題の商品リストを削除いたしました。

Temuはサードパーティの販売事業者が消費者に直接商品を提供するマーケットプレイスです。各リストは独立した販売事業者によって作成・管理されており、私たちは販売事業者に対し、販売予定市場における関連要件や基準を遵守することを義務付けています。

Temuでは権利侵害の報告を受けた際、直ちに各事案を調査し、商品リストや画像の削除から重大な違反の場合にはベンダーアカウントの停止まで、適切な対応を行います。販売事業者は、当社との取引を通じて継続的にプラットフォームからのガイダンスを受けています。その目的は、販売事業者が法的かつコンプライアンスに準拠した事業運営を行えるよう、知的財産権に対する深い敬意を養うためです。

私たちは事業開始以来、知的財産保護を最優先事項としており、ブランドや著作権所有者からのフィードバックに基づき、多額の投資と継続的な改善を行ってきました。昨年9月には、苦情窓口を通常の電子メールから、専用の知的財産保護ポータル(https://www.temu.com/intellectual-property-complaint.html)へ移行しました。
このポータルにより、権利者はより簡単に事案を提出して追跡できるようになりました。

また、私たちはブランド保護センターを強化し、知的財産保護チームの拡充も行っています。現在、99%以上の削除通知を、業界平均よりも大幅に速い2営業日以内に解決しています。これらの強化された知的財産保護対策により、苦情件数は減少しています。

私たちはあらゆるセクターからのご意見を歓迎します。今後も問題を発見された場合は、ご連絡ください。適切に調査し、対応いたします。

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 たしかにコメントの通り、無断で使用された写真は削除されていました。ただし、今回のようなことが起こらないために販売事業者にガイダンスを行っているそうですが、それが守られていないと言わざるを得ません。

 さらにブランド保護センターを強化、知的財産保護チームの拡充をしてすみやかに問題を解決し、苦情件数は減少しているとのことですが、本当なのでしょうか。今後もこのようなことが起こらないことを祈るばかりです。

<記事化協力>
Ninaさん(@ninaendlesseive

(佐藤圭亮)

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 佐藤圭亮 | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2024080103.html
情報提供元: おたくま経済新聞
記事名:「 作品写真を海外ECに無断使用された作家が注意喚起 「異なる商品が届くので買わないで!」