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なお分類上はまったく新しい属(genus)にあたることも判明しました。
探検隊の主任昆虫学者レオニダス=ロマノス・ダヴラノグル博士はこう語ります。
「森林の奥深くでこのエビを見つけたとき、私たちは非常に驚きました。彼らの仲間は通常、海辺に生息しているものですから」
しかも、このエビは水中に完全に沈まずとも生存できる可能性があります。
これはサイクロプス山脈の極めて高い湿度と降水量によって、エビが水の中にいなくても呼吸できるように進化したことを示唆しています。
エビは通常、エラを使って水中から酸素を取り込んで呼吸しますが、この新属はおそらく雨や空気中の水分をうまく利用して生存しているのでしょう。
実はこの探検は、エビの発見だけにとどまりませんでした。
1960年代に絶滅したと考えられていた幻の哺乳類「アッテンボローミユビハリモグラ(学名:Zaglossus attenboroughi)」も、同時に再発見されたのです。
設置されたカメラトラップに、その姿が偶然写り込んでいました。
この生き物は、単孔(たんこう)類という分類群に属し、哺乳類でありながら卵を産みます。
その名前は、英国の博物学者であり自然番組で知られるデイヴィッド・アッテンボロー卿に由来しています。
このような数々の発見があった一方で、チームは相次ぐケガや病気にも見舞われました。
ある隊員は腕を2カ所骨折し、別の隊員はマラリアに感染。さらには目にヒルが1日半も張り付いていたメンバーもいました。
それでも彼らは、この危険なサイクロプス山脈を「魔法のような場所」と表現します。
「一部の人はサイクロプス山脈を“緑の地獄”と呼ぶかもしれませんが、私はこの風景を魔法のようだと思います。魅惑的でありながら危険でもあり、まるでトールキンの本から抜け出してきたようです」と、探検のリーダーであるオックスフォード大学のジェームズ・ケンプトン博士は語ります。
「このような環境下では、隊員同士の絆が素晴らしく、皆で士気を高め合っていました。夜には火を囲みながら物語を語り合い、その周囲ではカエルの鳴き声が響いていました」
参考文献
Found at last: bizarre, egg-laying mammal finally rediscovered after 60 years
https://www.ox.ac.uk/news/2023-11-10-found-last-bizarre-egg-laying-mammal-finally-rediscovered-after-60-years
A Shrimp That Lives In A Tree? Indonesia’s Cyclops Mountains Are Home To Some Seriously Strange Wildlife
https://www.iflscience.com/a-shrimp-that-lives-in-a-tree-indonesias-cyclops-mountains-are-home-to-some-seriously-strange-wildlife-80064
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部