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火星の隕石は、地球の大気圏を通過した後に残ったものなので、通常、小さな破片となってしまいます。
しかし、火星の隕石NWA-16788は重さは24.67kgと巨大です。
地球で2番目に重い14.51kgの「Taoudenni 002」よりもはるかに大きいため、多くの人々の注目を集めてきました。
そんなNWA-16788には、内部に衝撃で溶けた痕跡や、マスケリナイト(maskelynite)と呼ばれるガラス質鉱物が含まれており、これらは小惑星が火星に衝突し、その時の火星の一部が地球へ飛んできた証拠だと考えられます。
また、NWA-16788の組成は粗粒の輝石、マスケリナイト、カンラン石で構成される珍しいタイプであり、火星隕石全体のうちわずか5.4%しか存在しない超レア種です。
このような特徴から、オークションに出されたNWA-16788は、「いったいどれだけの値が付くのだろうか」「誰が落札するのだろうか」と注目を浴びてきました。
2025年7月16日、火星隕石NWA-16788は落札されましたが、気になるのはやはりその価格です。
火星隕石NWA-16788は、オークション開始から4時間46分後に529万6000ドル(約7億9000万円)で落札され、落札者は匿名のままとなっています。
200~400万ドルで落札されると推定されていたため、人々の予想を大きく上回った価格になったと言えます。
これほどまでに高値になった背景として、科学的価値はもちろんですが、保存状態の良さやこの隕石の持つ豊かな歴史が高く評価されたと考えられます。
実際、火星から来たとされる隕石の多くは風化や分解が進んでいますが、NWA-16788は「最小限の風化しか受けておらず、比較的新しい部類に属する」と記載されています。
とはいえ、その行き先は不透明。
落札した人の身元は公表されていません。
そのため、この貴重な火星隕石の行方を心配する人もいます。
エディンバラ大学の古生物学者スティーブ・ブルサット氏は、「博物館に収蔵されれば子どもたちや家族が学ぶことができるのに、富豪の金庫に隠されたら残念だ」と述べています。
一方でレスター大学の惑星科学者ジュリア・カートライト氏は、「科学的な関心は残るし、新しい所有者も興味を持つようになるかもしれない」と希望を語ります。
このように、火星隕石NWA-16788は、単なる高額取引の対象というよりも、科学とロマンが詰まった“宇宙からの贈り物”として、大きな注目を集めました。
あなたがもし7億9000万円を持っていたなら、この火星隕石を落札したでしょうか。
参考文献
Sold: Largest Mars Rock Exceeds Auction Expectations
https://www.sciencealert.com/sold-largest-mars-rock-exceeds-auction-expectations
Martian Meteorite — NWA 16788
https://www.sothebys.com/en/buy/auction/2025/natural-history-2/martian-meteorite-nwa-16788
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部