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にもかかわらず、ボールライトニングは現在でも「仮説上の科学的現象」にとどまっており、その正体ははっきりしていません。
エドモントンのTELUSワールド・オブ・サイエンスに勤務するフランク・フロリアン氏は、今回の映像を「信じられないほど珍しい映像」と評し、「これはボールライトニング、あるいは雷による副次的な発光現象の可能性がある」と分析しています。
フロリアン氏によれば、ボールライトニングは「プラズマ(超高温の電離気体)」が局所的に形成され、球状に閉じ込められることで生じる可能性があるといいます。
雷そのものがプラズマを伴う現象であるため、その際に何らかの条件が重なれば、光の球体が短時間だけ出現することがあると考えられています。
実験室でも、雷に似た条件を人工的に再現し、光る球体を発生させる試みが行われていますが、まだ確定的なメカニズムは明らかにされていません。
過去には、中国の研究チームが2014年に偶然撮影した映像をもとに、「球電光が雷によって蒸発した土壌の微粒子から成る」とする説を発表しました。
しかし一方で、「光が圧縮空気の中に閉じ込められた現象ではないか」という別の仮説もあり、科学界ではいまだ議論が続いています。
今回のカナダでの目撃例が、実際にボールライトニングだったのかどうかは、現時点でははっきりしていません。
ただし、目撃者の証言と映像の一致性、過去の報告との共通点などから見ても、極めて信頼性の高い事例であることは間違いありません。
「怖くはありませんでした。ただ、すごく興味深かったのです」と語るエドさんの言葉は、この現象がいかに日常の枠を超えた“自然の不思議”であるかを物語っています。
科学が進歩した現代でも、まだ解明されていない自然現象は数多く存在します。
今回のような偶然の観測と記録が、新たな科学的発見のきっかけになるかもしれません。
参考文献
‘Ball Lightning’Caught on Film After Storm in Canada
https://www.sciencealert.com/ball-lightning-caught-on-film-after-storm-in-canada
‘Incredible video’ captured during Alberta storm could be rare ball lightning event: scientist
https://globalnews.ca/news/11272805/alberta-storm-lightning-ball-video-july/amp/
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部