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私たちの身の回りには、「超加工食品」と呼ばれる食品があふれています。
たとえば――
・ホットドッグやソーセージ、ベーコンなどの加工肉
・コーラや清涼飲料、エナジードリンクなどの加糖飲料
・マーガリンやスナック菓子に含まれる人工トランス脂肪酸
これらの食品は「すぐに食べられる」「長持ちする」「味が濃くて美味しい」といった特徴がある一方で、健康に及ぼす影響が懸念され続けてきました。
ワシントン大学が主導した今回の研究では、60件以上の研究データを統合・分析。
新たなメタ解析手法を用いて、加工肉・加糖飲料・トランス脂肪酸と、2型糖尿病、虚血性心疾患(心臓の血流が不足する病気)、大腸がんとの関係が調査されました。
その結果、以下のような驚くべき事実が明らかになったのです。
・加工肉を1日50g(ホットドッグ1本程度)でも食べると、2型糖尿病のリスクが30%増加、大腸がんは26%、心臓病は15%上昇。
・加糖飲料を1日に250g(350ml缶1本未満)飲むと、糖尿病リスクが20%、心臓病リスクが7%上昇。
・トランス脂肪酸を1日の摂取エネルギーの1%だけ摂っても、心疾患のリスクが11%増加。
そして特に注目すべきは、「どれだけ少量でもリスクが明確に増加していた」という点です。
つまり、“たまに食べるくらいなら大丈夫”という考えは、科学的には通用しないと考えられます。
では、なぜこれほど少量の摂取でも体に悪影響を与えるのでしょうか。
一因として挙げられるのが「慢性的な炎症」です。
加工肉や加糖飲料は多分に含まれている化学物質や添加物のせいで、体内で炎症反応を促進しやすく、これが糖尿病や心臓病、がんの進行に関わるとされています。
加工肉には「亜硝酸塩」などの保存料が多く使われています。
これらは胃の中で発がん性物質であるニトロソアミンに変化し、大腸がんのリスクを高めることがわかっています。
さらに加糖飲料は糖分を“飲む”ことで急激に大量のエネルギーが体内に入り、血糖やインスリンの調整に大きな負担をかけます。
その結果、肥満や糖尿病、動脈硬化を引き起こしやすくなるのです。
人工トランス脂肪酸にいたっては、善玉コレステロールを下げ、悪玉コレステロールを増やすことが知られており、動脈硬化や心臓発作の直接的な要因となりえます。
では、私たちは超加工食品の代わりに何を食べればいいのでしょうか?
「完璧な食生活」を目指す必要はありませんが、代わりに専門家が推奨する代替食品は次の通りです。
・新鮮な果物・野菜(抗酸化作用・食物繊維が豊富)
・全粒穀物(白米や白パンより、玄米や全粒パン)
・豆類やナッツ類(植物性たんぱく質と健康脂質を含む)
・発酵乳製品(ヨーグルトなど)(腸内環境の改善に寄与)
これらはすべて、「長寿と健康を支える食材」として、数多くの研究でその効果が裏づけられています。
ホットドッグ1本、ジュース1缶――私たちは「それくらいなら大丈夫」と思いがちです。
でも、今回の研究は少量でも日常的に摂取し続けることが、確実に疾患リスクを高めることを示しました。
しかしながら「食」は、単なる栄養源ではなく、文化や家族、楽しみと結びついた大切な存在であり、超加工食品を一切止める必要はありません。
だからこそ、超加工食品を完全に断つことを目指すのではなく、リスクを知ったうえで“賢く選ぶ”ことが求められているのではないでしょうか。
私たちの健康は、今日の1口から始まっています。
参考文献
Ultra-processed foods linked to higher chronic disease risks, even at low intake
https://medicalxpress.com/news/2025-07-ultra-foods-linked-higher-chronic.html
There is no safe amount of processed meat to eat, according to new research
https://edition.cnn.com/2025/07/02/health/processed-meats-sweet-drinks-disease-wellness
元論文
Health effects associated with consumption of processed meat, sugar-sweetened beverages and trans fatty acids: a Burden of Proof study
https://doi.org/10.1038/s41591-025-03775-8
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部