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重要なのは、こうした関連が起床時間(遅起きだから朝食を取らない)といった生活習慣では説明しきれなかったという点です。
分析の結果、朝食を抜く習慣がうつ症状につながるルートのうち、約3分の1(34.2%)は「注意のコントロール力の低下」が介在していたことが判明したのです。
つまり、朝食を抜く人は、集中力が続かず注意が散漫になりやすい傾向があり、それが結果として気分の落ち込みにもつながっている可能性がある、ということです。
では、なぜ朝食の習慣が「注意力」や「気分」と結びついているのでしょうか?
そのヒントは、私たちの脳のエネルギー供給と神経伝達物質の働きにあります。
朝は1日の中で血糖値が最も低く、エネルギーが枯渇している状態です。
ここで朝食を取ることで、脳に必要なグルコース(ブドウ糖)を供給し、注意や思考を保つための回路が正常に働くと考えられています。
これを怠ると、集中力が保てず、イライラしたり、気分が沈みがちになる――。こうした現象は、朝食を抜いた経験がある人なら思い当たるかもしれません。
また、注意力がうまく働かないと、頭の中が雑念であふれ、ネガティブな考えの反復に陥りやすくなることも指摘されています。
こうした「注意の揺らぎ」が、気分障害の引き金になることは、うつ病や不安症の研究でも広く知られています。
つまり、朝食は単なるエネルギー補給だけでなく、“注意の安定”という心の健康にもつながる重要なスイッチだったのです。
この研究は因果関係を直接証明したものではありませんが、「朝食を抜く人は注意のコントロールが弱くなり、うつ傾向も高まる可能性がある」という大きなヒントを私たちに与えてくれました。
心の元気は、実は毎朝の食卓から始まっているのかもしれません。
参考文献
Breakfast habits are associated with depressive symptoms, study finds
https://www.psypost.org/breakfast-habits-are-associated-with-depressive-symptoms-study-finds/
元論文
Breakfast skipping and depressive symptoms in an epidemiological youth sample in Hong Kong: the mediating role of reduced attentional control
https://doi.org/10.3389/fpsyt.2025.1574119
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部