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本ドローンのサイズは全長0.6〜2cmと報告されています。
1cmほどの蚊も存在するため、遠くから見れば「大きめの蚊」と見分けがつかないサイズと言えるでしょう。
形状も本物の蚊に酷似しており、羽ばたくための2枚の羽と細い脚を持ち、あらゆる方向に柔軟に動くように設計されています。
従来のプロペラ式推進ではなく、羽ばたき飛行を採用しており、静音性の高い飛行を可能にしています。
この小型ドローンの内部には電力システム、小型センサー、制御電子機器が詰まっていると言われています。
加えて報告書では、計4枚の羽をもち、スマートフォンによるリモート操作にも対応したバージョンが現在開発中とのこと。
この蚊サイズのドローンについて、NUDTの研究者は、「特に戦場での偵察や特殊任務に適している」と述べています。
では、NUDTの述べる「蚊サイズのドローンによるスパイ活動」はどれほど現実的なのでしょうか。
蚊サイズのドローンが実際の場面でどのように利用できるか考慮してみましょう。
まず考えられるのが、これまで以上に偵察・監視ミッションが容易になるということです。
都市部や建物内部、密林や洞窟など、従来のドローンでは侵入が難しかった場所でも、蚊サイズであれば無理なく入り込むことができます。
また、音も極めて小さいとされ、対象に気付かれずに任務を達成できるはずです。
さらに、仮にこの技術が一般にも転用されれば、救助活動や災害時の捜索活動に大きく貢献できるかもしれません。
崩壊した建物の隙間に入り込んで生存者の小さな声や呼吸の音を拾ったり、微弱な体温を検知したりできれば、まさに「命を救う蚊」となる可能性もあります。
とはいえ、私たちが感じているように、現段階では実用化に向けた課題が多く残されています。
今回の発表を受けて、海外の軍事専門家は「このサイズでは通信・電源・制御の面で実用性には限界がある」とコメントしています。
「ブラックホーネット」などの既存の小型ドローンと比較しても、今回のドローンは実用段階にはまだ至っていないとの冷静な見方も存在します。
NUDTの蚊サイズのドローンにカメラやマイク、センサー、バッテリーを搭載し、スパイ活動で要求される飛行時間を達成できるかも疑問です。
さらに風や空調による飛行への影響など、技術的な制約は決して少なくありません。
また、一般市民の間では「監視社会の加速」や「プライバシーの侵害」への懸念も噴出。
SNS上では「もうどこで誰が見ているかわからない」「部屋にいる蚊がドローンかもしれないなんて怖すぎる」といった声が多く見られました。
今後、こうしたマイクロドローンの利用には国際的なルールや規制が必要になると、多くの専門家が指摘しています。
もしかしたら、これから先、「夏にぷーんと飛んでくる蚊が実はスパイドローンだった」なんてことが本当にあるのかもしれません。
参考文献
Chinese military robotics lab creates mosquito-sized microdrone for covert operations
https://www.scmp.com/news/china/science/article/3315206/chinese-military-robotics-lab-creates-mosquito-sized-microdrone-covert-operations
China’s New Mosquito Drone Could Probably Slip Through Windows and Spy Undetected
https://www.zmescience.com/science/news-science/mosquito-china-drones/
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部