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とはいえ、完璧だったわけではありません。
11語については「この単語は英語辞書に存在しない可能性があります」と回答し、5語については完全に間違った意味、いわゆる「ハルシネーション」を起こしました。
ハルシネーションとは、簡単に言えば、AI(人工知能)が不確かな情報をあたかも真実のようにでっちあげる現象です。
たとえば「flothery」という言葉を「ふわふわした柔らかさ」と解釈しましたが、本来の意味は「だらしないのに見栄を張っている様子」です。
この結果は、ChatGPTがあくまで確率的な言語モデルであり、常に正解を知っているわけではないことを示しました。
別の実験では、「意味を持たないナンセンスな単語(nonwords)」を使って、ChatGPTの言語感覚を試しました。
たとえば、意味のない英単語風の造語(例:「glerm」「wask」など)について、「どれくらい“英単語っぽく”聞こえるか」を1〜7点で評価させるタスクも実施されました。
これはそのナンワードがどれほど英語らしく聞こえるかを判断させるものであり、その評価を英語話者の人間による評価と比較。
結果、ChatGPTの評価は人間のネイティブスピーカーと高い相関を示し、同時に「その語がブランド名だったら買いたいか」という判断にも類似した傾向を見せています。
またチームは、ChatGPTに新しい概念を表す新語を作らせる実験も行いました。
この新語創作タスクで、ChatGPTはなかなか興味深い仕事をし、多くの場合、ChatGPTは2つの単語を組み合わせるという予測可能な方法で新語を生み出していました。
その結果として以下のような新語が作られています。
・ラウズレイジ(rousrage):目覚ましで起こされたときの怒り
・プライディファイ(prideify):他人の成功を自分の誇りに感じること
・スタンブロップ(stumblop):自分の足につまずくこと
・レクシナイズ(lexinize):ナンセンスな語が意味を持ち始める過程
これらは実在しない言葉ですが、実際の単語の構造や意味の組み合わせを巧みに利用しており、AIの“擬似的な創造性”を垣間見ることができます。
この研究は「意味のない言葉」を使うことで、ChatGPTの内側にある“言語感覚”を探る試みでした。
結果として、ChatGPTは人間と似たようなパターン認識や判断を行う一方で、文脈や常識、文化的なルールにはまだ不完全という限界も明らかになりました。
それでも忘れられた単語を呼び起こしたり、新しい言葉を提案したりする能力は、人間の記憶や発想を補う「言語のパートナー」としての可能性を秘めています。
参考文献
Psycholinguist talks nonsense to ChatGPT to understand how it processes language
https://techxplore.com/news/2025-06-psycholinguist-nonsense-chatgpt-language.html
元論文
Examining Chat GPT with nonwords and machine psycholinguistic techniques
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0325612
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部